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【INTERVIEW】近い将来、ビジネスモデル特許は有名無実化する!?――スタンフォード大学教授、ピーター・C・ウィルトン博士に訊く

2000年06月27日 00時00分更新

文● 野々下裕子

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4年前から本格的なネットビジネスセミナーを開催している大阪のアイビー・グローバル研究所が、今回も2日間に渡る連続セミナーを行なった。講師のピーター・C・ウィルトン博士は、カリフォルニア大学バークレー校ならびにスタンフォード大学教授で、米国内にあるビジネススクール各校で教授を務めるほか、オラクル、サンマイクロシステムズなどのコンサルテイングなどもしている実力派の人物である。インターネットビジネスのリサーチのため、世界中を飛び回っているというウィルトン博士に、ここ数年におけるネットビジネスの変化や、今後の展開について話を訊いた。

世界を舞台に活躍するシリコンバレーの名物ITコンサルタントのピーター・C・ウィルトン博士。肩書きはカリフォルニア大学バークレー校ならびにスタンフォード大学教授だが、米国内にあるビジネススクール各校でも教授を務めている
世界を舞台に活躍するシリコンバレーの名物ITコンサルタントのピーター・C・ウィルトン博士。肩書きはカリフォルニア大学バークレー校ならびにスタンフォード大学教授だが、米国内にあるビジネススクール各校でも教授を務めている



ネットビジネスでは、アジア圏やヨーロッパ圏の台頭も

――ウィルトン博士は年の半分以上、世界中を飛び回っていると聞いたのですが

「世界中を飛び回っている理由は、各国のネットビジネスの状況を知り、今後、どのような対応をしていけばよいかといったアドバイスをすることです。先日はフランスに行ってましたし、このセミナーが終わったら今度はオーストラリアへ行く予定です。その他にも企業へのコンサルティングもしていますから、本当に忙しい。住まいはサンフランシスコなんですが、仕事でほとんど帰っていません」

――やはり世界中でネットビジネスの必要性が高まっているということでしょうか?

「そのとおりです。特にヨーロッパでは、これからインターネットブームのようなものがやってくるでしょう。さらにアジアもすごい勢いでネットビジネスが成長してきています。ネットビジネスは国境を越えて拡がっていくものだけに、これからの動きが注目されるところですね」

――博士がいま1番注目している国は?

「それはやはりアメリカです。どこよりも最先端を行ってますし、新しい技術や事例が次々と生まれてくる。そのアメリカを世界中がお手本にしているのが今の状況ですね。他にあげるとすれば、北欧あたりが携帯電話を使ったユニークな動きをし始めている。フィンランドでは携帯電話をサイフ代わりにするといった実験も始まっています。地域性やインフラの状況も影響あるでしょうが、携帯電話やモバイルを使ったサービスは、これからどんどん伸びてくると思います」

――携帯電話といえば日本での普及率の高さはご存知ですか?

「はい、都会に行くとそれこそみんな携帯電話を持っていて、しかも情報端末としてこれほどまでに使いこなしているのはすごいことだと思います。携帯電話を使った新しいサービスは当然これからも増えるでしょうし、それが既存のサービス市場を一気に変えるぐらいの力も持っていると思います。日本人は技術の応用がうまいので、どんな新しいことが起こるのか楽しみですね。実は私はそうした新しいビジネスを始めたいという企業へのアドバイスもしているんですが(笑)」

――4年ぐらい前から日本で今回のようなネットビジネス関連のセミナーを開催されていますが、最初の頃と比べて日本はどう変わりましたか?

「最初はネットビジネスやITと言ってもピンとくる方が少なく、また、情報共有が中心だったのが、ここ2、3年は参加するみなさんがそれぞれ独自のネットビジネスのアイデアを持ち寄って、より具体的な話ができるようになってきました。アメリカもそうですが、ネットビジネスのスピードは驚くぐらい早くなっています」

――日米の格差もなくなってきていると?

「もちろん差はありますが、必死になって追いつかなければならいほどの差ではなくなってきていると思います。といっても、ネットの世界はほんとうに進化が早いですから、あっという間に他の国に追い越される可能性もありますけどね」

カリフォルニアスタイルで行なったセミナーの模様。講師をぐるっと取り囲み、質問があればその場で受付けるというインタラクティブな形
カリフォルニアスタイルで行なったセミナーの模様。講師をぐるっと取り囲み、質問があればその場で受付けるというインタラクティブな形



ビジネスモデル特許はナンセンスという風潮

――日本では言葉の問題があって、それがネットビジネスの壁にもなっているような気がするのですが

「そんなことはありません。今や翻訳ソフトもたくさんあるし、インターネットの技術が進んでくればそうした言語の問題よりはむしろ、ビジネスに対する姿勢のようなものが問題になってきます。文化や商慣習のちがいはあることは認識していますが、それによって自ら壁をつくってしまわないことです。先日行ってきたフランスでも、最初はミニテル一色で、言語もフランス語が中心でしたが、ここ数年で通信環境のグローバル化が一気に進み、インターネットへとシフトしつつあります。環境が変化して言葉の違いが問題になれば、対応策もすぐに登場するでしょう。今からネットビジネスをスタートする人たちは最初から市場が世界ですから、グローバルモデルでもユニークなものになるはず。アメリカものんびりとしていられませんよ」

――そのアメリカではいまビジネスモデル特許が話題になっていて、後から参入する他の国が不利になるとも言われているのですが、それは事実なんでしょうか?

「実は日本でこれほどビジネスモデル特許が話題になっていることに驚いています。アメリカでは日本が騒ぐほど話題にはしていませんし、むしろ、ビジネスモデル特許のようなものはIT市場全体の成長を妨げるもの、ナンセンスなものと考えられつつあります。私自身もそう遠くないうちに有名無実化するとも思っています。本当の問題は特許ではなく、市場にあまりにもモノマネが反乱していることではないでしょうか。ネットビジネスでは個性が求められるのに、アイデアが横並びだし、何よりも顧客をないがしろにしている。インターネットでは顧客の顔が直接見えないので、利便だけ提供すればいいというワナに陥りがちなのですが、本来は幅広い顧客ニーズにも合わせられ、より満足を提供できる武器がITなのです」

――ITを使えばラクになるのはまちがい、だと

「ITによって顧客情報を得るコストが安くなるという話ばかり耳にしますが、場合によっては従来の手法よりも莫大なコストがかかる場合もあります。そうした事実を発表しないから、失敗の連鎖が生まれるのです。ネットビジネスに同じセオリーは通用しません。10会社があれば10のやり方が必要になる。自分のビジネスで一体何が提供できるのかを真剣に考えて、顧客に提供できる企業だけが勝利できるんです」

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