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【ビジネスシヨウ2000 OAKSAKA Vol.4】“本当のIT革命”に向けて日本が進むべき指針とは?――ビジネスシヨウ記念講演より

2000年06月21日 00時00分更新

文● 正月孝広 masa@catwalk.ne.jp

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大阪・南港のインテックス大阪で“ビジネスシヨウ 2000 OSAKA”が開催された。開催初日の14日には“IT革命と日本経済発展の指針”と題し、慶應義塾大学総合政策学部教授、経済学博士、竹中平蔵氏の記念講演が開催された。本稿ではこの記念講演の模様を報告する。

インテックス大阪、国際会議ホール。当日は定員を越す人々が集い、会場は満席となった
インテックス大阪、国際会議ホール。当日は定員を越す人々が集い、会場は満席となった



和歌山県出身の竹中氏は、'98年8月24日に発足した経済戦略会議のメンバーとして活躍した。また最近は佐藤雅彦氏との共著『経済ってそういうことだったのか会議』がランキングのトップをキープするなど、日本経済学の注目のひとり。

経済革命はまだ前哨戦。これから“本当の革命”がやってくる

講演はまず、これまでの日本経済を見た場合、その変化は体感できないようなものだったとの竹中氏の分析から始まった。いきなり熱いお湯に浸かると、とても熱いと感じるが、ぬるま湯からしだいに温度をあげていった場合、いきなり熱いと感じることはない。そんな少しずつ変化する“せめぎあい”という流れの中に、今の日本は置かれているのである。

日本経済はよくなるか? という問いかけに対し、今の日本を分析すると、2つの力がみてとれるという。1つは、常に世界と競争しており、苦しいながらも前に進んでいるという力。もう1つは、今の状態に満足しており、今後も維持しようという力。その2つの力がせめぎ合っているのが今の日本だという。

せめぎ合いは数字にも現われている。'99年の第1四半期から2000年の第1四半期までのGDP年率を見てみると、+6.+4.-4.-6.+10%と乱高下し、まるでジェットコースターのような激しさを見せている。

どちらの力がいい悪いという、単純な見方をするのではなく、どちらも尊重しあうことは大切だという。しかし世界は既に革命という流れの中に包み込まれているので、前者の成功事例を早く、たくさん日本で出してくるのが、今後の経済を良くしていくための大きなポイントとなると語った。

では、今後はどうか? 世界経済は革命の中にあり、そして日本はその真っ只中にあるという。

一頃ささやかれた“ネットバブル”。これは本当にあったという。しかしこれはミクロで見た場合、山は過ぎたかもしれないが、マクロで見た場合、まだ始まりに過ぎないのである。世界のパソコン業界の市場は600兆円。それに対し、世界のインターネット業界の市場はわずか100兆円。これから本当に革命の時がやってくる。

その革命の時に大切な指針を、ノキアというメーカーの事例をもとに示した。'92年当時、携帯電話事業に参入したノキアのビジョンは、'99年には世界で4000万台くらいの普及が見込めるというものだった。しかし、現実には'99年の段階では日本だけで、4000万台という数字は軽く越えていたのである。

この話の中での大切な事は2つある。まず方向性が正しいこと。これからの世界的なスタイルとして携帯が普及していくという方向性である。そしてスピードと柔軟性があること。ノキアのビジョンよりも非常に早いスピードで世界が動いたわけだが、そのスピードに振り落とされない体力と、柔軟に対応できる決断力が重要だとした。

慶應義塾大学総合政策学部教授、経済学博士、竹中平蔵氏
慶應義塾大学総合政策学部教授、経済学博士、竹中平蔵氏



“IT革命”で変わる価値観とライフスタイル。世代を越えた対応が必要

では、これまでによく使われてきた言葉、“革命”とはなにか。社会的構造が根本的に変化し、価値観やライフスタイルが一新することであるという。16世紀イギリスで始まった産業革命。それまので手工業から機械工業へとかわり、その器である会社は継続していくことを前提とするというように、市民の価値観は変わった。そして、会社に行って帰ってくるというライフスタイルも構築された。

いま言われている“IT革命”。この革命で再び価値観やライフスタイルが大きく変わろうとしている。この基幹技術はデジタルだが、そのデジタルとは情報を数字に置き換えることであるという。そのことによって記録や伝達において革新的な変化が起こった。そして社会的には物質に限らず、あらゆるトランザクションコスト(流通コスト)が限りなくゼロに近づくという形で現われる。

そうなった場合の具体例を示した。メーカー系企業の場合これまでは、マーケティングなどによる消費者の動向をとらえ、見込み大量生産という形をとってきたが、今後は企業と消費者が直接つながり、多品種受注生産という方向に変わっていく。現にウェブを使い直接ユーザーから受注を受けている企業はいくらでも見られるようになっている。

最後に2000年の現在と比較してとても類似点の多い1920年代の事例を紹介した。現在IT関連のベンチャービジネスが非常に多く起業している状況だが、1920年代は日本でトヨタ、日産、松下、日立、東芝など有数のメーカーが起業した時代でもある。現在ブロードバンドが話題になるように、ネットワークインフラが整備されつつある状況だが、1920年代は銀座線の開通をはじめ、山手線、大阪地下鉄と物流インフラが整備された時代でもある。

当時は、日本社会全体として、世代に関係なしに、“どん欲に”もっと砕いて言えば“無節操に”、技術や知識を吸収しようとしていた時代である。

しかし、現在はITを凄まじいチャンスと認識して吸収しようとしているのは若い世代だけのようにも感じるという。また残念な事例として、管理職の方が「これからはITの時代だ! だから全力で取り組まないといけない! しかし、私は歳だから若い人たちでやってくれ」という話をよく耳にするともいう。

ITに関連した日本経済発展は、この管理職の世代の人々が、自らITに立ち向かう姿勢というのも打ち出していけるかどうかが、複雑な要素の中の大きなキーワードのひとつになるとして講演を締めくくった。

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