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【LinuxWorld Expo/Tokyo 2000 レポート Vol.1】ミラクル・リナックスや米IBMのキーパーソンが基調講演

2000年05月11日 00時00分更新

文● 編集部 桑本美鈴

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(株)IDGジャパンは、国内外のLinux最新事情を紹介する展示会“LinuxWorld Expo/Tokyo 2000”を東京ビッグサイトで5月11日から開催する。


初日の今日は、4月25日に設立を発表したミラクル・リナックス(株)や米IBM社のキーパーソンによる基調講演が行なわれた。

講演に先立ち、挨拶に立ったLinuxWorld Expo/Tokyo 2000のアドバイザリー・ボードチェアマンである宮原徹氏((株)アクアリウムコンピューター代表取締役社長)は、「Linuxは革命である。今回の各メーカーの展示も熱の入ったものとなっている。革命を成し遂げるには市場の流れを予測し先回りしなければならない。そのためにLinuxWorldがある。チャンスは来ている。IT革命を自らの手で成し遂げるために、LinuxWorldで情報収集をしてほしい」と語った
講演に先立ち、挨拶に立ったLinuxWorld Expo/Tokyo 2000のアドバイザリー・ボードチェアマンである宮原徹氏((株)アクアリウムコンピューター代表取締役社長)は、「Linuxは革命である。今回の各メーカーの展示も熱の入ったものとなっている。革命を成し遂げるには市場の流れを予測し先回りしなければならない。そのためにLinuxWorldがある。チャンスは来ている。IT革命を自らの手で成し遂げるために、LinuxWorldで情報収集をしてほしい」と語った



ミラクル・リナックス基調講演「他ディストリビューターとともに市場を広げていく」

午前中に行なわれたミラクル・リナックス(株)の基調講演では、同社代表取締役社長の矢野広一氏をはじめ、同社の吉岡弘隆氏、池田秀一氏が順番に語った。

代表取締役社長の矢野広一氏
代表取締役社長の矢野広一氏



矢野氏は、同社の概要について説明した。「ミラクル・リナックスは6月1日からLinuxの新しいブランドとして事業を開始し、企業向けLinux OSの開発、販売、サポートを行なう。筆頭株主は日本オラクルで、NEC、ターボリナックス ジャパンなどに資本参加をしてもらっている。このようなすでにIT産業で活躍している企業が本気になってLinuxOSを開発するのは初めてのことだ」

「われわれのキーワードは“日本”と“企業”。日本市場に特化したLinuxOSを出す。また、日本の技術力を発揮し、存在感をワールドワイドでアピールしていきたい。Linuxは今後大きな市場になると確信している。それぞれのディストリビューションが強みを持って、ユーザーが製品を選択できるようにしたい。ミラクル・リナックスは、オラクルの強みを持って企業に適合したOSを出していく」
「ミラクル・リナックス1社だけでは、独占という大きな壁をくずし、Linuxというきれいな空気を市場に広げることは難しい。独占という市場の赤信号は、いま緑に変わろうとしている。ミラクル・リナックスのロゴのグリーンカラーは、みんなで進もうという緑だ」と語った。

ミラクル・リナックスのロゴ
ミラクル・リナックスのロゴ



続いて吉岡氏が、Linux開発について講演した。「オープンソースのバザール型ソフトウェア開発方法は、インターネットを利用し、世界中のプログラマーをバーチャルに1つのチームにすることで発達してきた。従来ソフト開発は、1つの企業が人と金を投資して行なってきたが、バザール型のオープンソース開発は、情報を公開して進化させていくというもので、1つの企業が作るOSよりもいいものがでてこないはずはない。情報を公開して共有したほうが、はるかにいいものができるということをLinuxは示している」

吉岡弘隆氏
吉岡弘隆氏



「ミラクル・リナックスは、製品の問題点を公開し、解決案を提案してもらう。亜流のLinuxを作るのではなくLinuxを統合、強化したい。日本は世界でもっとも品質に厳しい市場。また日本には優秀な技術者が多数いるので、そのプログラマーたちを世界にデビューさせたい」

「ミラクル・リナックスが目指すのは、データベースに特化したLinuxであり、ビジネス用途だ。日本市場に特化したサポートも行なう。日本でLinuxの発展に貢献したい。成果は公開する。Linuxは情報が公開されているのでユーザーもベンダーもそれぞれ情報を持っている。よってベンダーはベストの製品を提供しない限り淘汰されることになり、これはユーザーにとって大きなメリットとなるだろう。オープンソースプログラマーを日本で職業として認知させていきたい。開発コミュニティーへの貢献も同時に行なっていく」と語った。

最後に、池田氏が製品について説明した。「IDCの調査によると、'99年度のワールドワイドでのサーバーの出荷数割合は、Linuxが全体の25パーセント、Windows NT Serverが38パーセントであるのに対し、日本ではLinuxは2.7パーセント、Windows NT Serverは79パーセントとなっている。また、IDCによる2003年度の予測は、日本ではLinuxは10パーセントまでしか伸びないという。われわれはこれを40パーセントに高めたい。そのために会社を設立した」

池田秀一氏
池田秀一氏



「われわれは信頼できるLinuxOSを作る。なんとなくWindows NT Serverを使うのではなく、LinuxとWindows NT Serverや2000 Serverとを比較し、よりよいほうを選択して使ってほしい」

「われわれはLinux標準化を推進していく。ユーザーの囲い込みはしない。これまでのLinuxは多くがカーネルハッカー(作成者)のためのものだったが、われわれはカーネルハッカーだけではなく、システム構築者(利用者)のためによりよい品質の信頼感のあるLinuxを提供していく」

「われわれの製品はサーバー用途であり、クライアント用途製品は当面はやらない。他ディストリビューターとは情報を共有しながら一緒に市場を広げていく。Windows NT Server/2000 Serverと同等の容易さで、より信頼性の高い製品を提供する。すぐにできるとは思っていないが、今年の後半には提供できるのではないかと思う」

製品スケジュールについては、「製品系列は、中小規模向けサーバーOS『Miracle Linux Standard Edition』と、大規模向けサーバーOS『Miracle Linux Enterprise Edition』の2つ。製品出荷スケジュールとして、2000年8月にOracle 8iに最適化したLinuxOSのβ版を提供し、同年9月にOracle 8i(R8.1.6)に最適化したLinuxOSを出荷する。2001年には、IA-64対応版とEnterprise Editionを出荷する見込みだ」としている。

米IBM「S/390もLinuxに対応させる」

午後の基調講演では、米IBM社のバイスプレジデントであるDick Sullivan(ディック・サリバン)氏が、e-businessにおけるLinuxの優位性について語った。

米IBM社のDick Sullivan氏
米IBM社のDick Sullivan氏



「Linuxは複数のプラットフォームをサポートする信頼性のあるOSで、効率のより開発環境とシームレスの統合を可能にする。Linuxはe-businessにフィットするだろう。'99年度のLinuxの出荷数は'98年度の2倍であり、出荷本数ではもっとも伸びているOSだ。今夏から秋に出荷されるLinux 2.4カーネルは、8-way SMPに対応するほか、インテルベースのRAMをサポートする。ファイルサイズの上限もなくなり、IBM S/390とIA-64に対応する。IBMは来週にもS/390対応について発表する。さらに、ユーザー数も拡大し、PowerPCにも対応する」

「IBMの主要ハード製品はすべてLinuxが動作するようになっている。S/390も近々対応させる。主要ソフトもLinuxに移殖しつつある。オープンソースは将来の開発環境において重要。コミュニティーに貢献するメンバーになりたい。今後はエンタープライズレベルの製品もLinux対応をしていく」

米Cardera「既存システムとの共存が鍵」

米Caldera Systems社のマーケティング担当バイスプレジデントのBenoy Tamang(ベノイ・タマン)氏は、日本のLinux市場について特別講演を行なった。

米Caldera Systems社のBenoy Tamang氏
米Caldera Systems社のBenoy Tamang氏



「日本市場で、ビジネスとしてLinuxを進化させるためには、既存システムとの共存が必要。Linuxは、インターネットアクセスデバイス、ECサービス、専門分野に特化したサービスに向いている」

「日本はLinuxの普及に適している。健全なコミュニティーが存在し、強力なハードウェアパートナー、ISVパートナーがいる。日本でLinux事業を展開するためにはパートナーが重要な鍵となるだろう」

「日本のLinux市場は、製品指向へ変わってきている。また、Linuxを単なるOSと考えるのではなく、完全なソリューションだとする考えかたが進んでいる。サポートサービスにも注目が移ってきており、会社全体で購入される製品になっていかなければならないだろう。Linuxはローコストコンピューティングを実現する。今後、短期間で市場に受け入れられれば、Linuxは日本において大きな役割を果たすだろう」と語った。

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