日本オラクル(株)は25日、Linuxに特化した事業会社を設立すると発表し、都内で発表会を開いた。同社が筆頭株主として子会社を設立するのは初めて。新会社では、サーバー用Linuxディストリビューションの開発、販売とサポートを専門に行なう。出資企業には日本電気(株)やターボリナックスジャパン(株)も名を連ねた。データベース市場トップのオラクル製ソフトに最適化したディストリビューションを投入することで、国内サーバーOS市場におけるLinuxのシェアを拡大を図る。
都内で開かれた発表会 |
新会社の名称は“ミラクル・リナックス株式会社”で、5月中に都内に設立され、6月1日から業務を開始する予定。設立時の資本金は4億円。日本オラクルが55%に当たる2億2000万円を引き受け、日本電気とターボリナックスジャパンが14%ずつ、ベンチャー支援の(株)サンブリッジが4%、(株)オービックビジネスコンサルタント(OBC)が3%を出資する。社長には日本オラクルでLinux事業を手掛けてきた、同社パートナー事業本部ビジネス開発部シニアマネージャーの矢野広一氏が就任する。社員は約20人でスタートし、日本オラクルとNEC、ターボリナックスジャパンらのソフト開発者らで構成される。
新会社の主事業は、サーバー用Linuxディストリビューションの開発と販売、サポート業務。『Turbo
Linux』をベースに、日本オラクルのRDBMS(Relational Data Base Management
System)『Oracle8i』に最適化した『Miracl Linux』を開発する。まず第一弾として2000年9月、中堅企業のデータベースサーバーをターゲットにした『Miracle
Linux Standard Edition』を出荷。さらに2001年3月に米インテルの64bit CPU“Itanium”対応版を投入、同年6月には『Miracle
Linux Enterprise Edition』を発売。Turbo Linuxの技術を活かしてクラスタリングも可能な、基幹業務向けの製品となる。
製品は間接販売がメイン。NECは同社のPCサーバー『Expresso 5800』にMiracle
Linuxをバンドルして発売するほか、Oracle8iと組み合わせた企業向けシステムのSIサービスなども手掛ける。OBCは同社の中堅企業向けERP(Enterprise
Resource Plannning)パッケージ『奉行新ERPシリーズ』とのバンドル販売を展開する。新会社は当面、中堅企業をターゲットとしていることから、ERPソフトに日本オラクルの『Oracle
Applications』を採用せず、中堅企業向けに実績が高いOBC製品を選択した。
ターボリナックスジャパンは技術者を提供する一方、市場においては新会社の製品と競合することになる。だが同社社長の小島國照氏は「ディストリビューションのバラエティーが増えれば、それだけマーケットも広がる」としており、Linux市場の拡大が最終的にはターボに対しても利益をもたらすと判断した。
ハイテク専門調査会社の米IDCによると、'99年のサーバーOS市場は米マイクロソフトのWindows
NTが80%と圧倒的なシェアを占め、Linux勢は3%と少数。だが2003年にはWindows
NT/2000が76%にまでシェアを落とす一方。Linuxが10%にまでアップすると予測している。新会社ではこの予測を大幅に上回る40%をLinux全体のシェア目標に掲げた。初年度の売上目標はライセンス販売、サポートの合計で2億2000万円。設立3年目の黒字転換を見込み、4年目には合計23億7000万円の売上を目指す。
日本オラクル社長の佐野力氏(左)と、新会社の社長に就任する同社パートナー事業本部ビジネス開発部シニアマネージャーの矢野広一氏 |
発表会で、日本オラクル社長の佐野力氏は、「企業でLinuxが採用されるには、しっかりとサポートする組織が必要になると考えた。日本でもう一度、オラクルが起こしたミラクルを実現したい」と新会社設立の意気込みを語った。
新会社の社長に就任する矢野広一氏は、「新会社は、オラクルが進めてきたLinux事業の第1フェーズの集大成。日本企業が安心して使えるOSを提供していきたい」などとと述べた。
左から、NECソリューションズマーケティング統括本部統括本部長の井崎博行氏、ターボリナックスジャパン社長の小島國照氏、サンブリッジ社長のアレン・マイナー氏、OBC社長の和田成史氏 |