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【東京国際ブックフェア2000 Vol.3】13のコンテンツを公開――“マルチメディアコンテンツ市場環境整備事業”成果発表会が開催

2000年04月24日 00時00分更新

文● 千葉英寿

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世界25ヵ国から500社が一堂に会する日本最大の本の見本市“東京国際ブックフェア 2000”が東京ビッグサイトにおいて開催された。一般公開日の22日、23日までの4日間にわたり、本に関する情報、書籍やCD-ROMなどが紹介された。また、洋書を割引で手に入れたり、サイン会や対談会などさまざまなイベントも行なわれた。
 
会場は、“東京国際ブックフェア”をはじめ9つのフェアで構成されている。本稿では、その中の“電子出版・マルチメディアフェア”会場で催された、(財)マルチメディアコンテンツ振興協会による“マルチメディアコンテンツ市場環境整備事業”成果発表会の模様を報告する。

“マルチメディアコンテンツ市場環境整備事業”成果発表会。“電子出版・マルチメディアフェア”会場の一角に特別スペースが設けられた
“マルチメディアコンテンツ市場環境整備事業”成果発表会。“電子出版・マルチメディアフェア”会場の一角に特別スペースが設けられた



マルチメディアの支援事業として定着

“マルチメディアコンテンツ市場環境整備事業”成果発表会は、優れた才能に恵まれながら、資金不足などの理由によりコンテンツ制作の機会に恵まれない中小企業などを支援し、その成果を広く一般に公開する場である。正式には、“平成11年度予算マルチメディアコンテンツ市場環境整備事業”と呼ばれているもの。通商産業省が策定して、情報処理振興事業協会(IPA)に出資、さらに(財)マルチメディアコンテンツ振興協会(MMCA)が、IPAより受託する形で昨年度に引き続き実施されている支援事業だ。

本事業については、全国9地域(札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、高松、福岡、那覇)で公募説明会を実施した。'99年5月24日から6月28日まで公募が行なわれ、全国各地から341件の申請が寄せられた。全国から寄せられた申請内容は、医療・福祉関連、文化・伝統芸能、教育、旅行・観光など様々な分野にわたっている。デザインや地図、美術などのパッケージ系コンテンツに限らず、インターネットを利用したコンテンツ配信もある。また、エンターテインメント性のあるコンテンツとして、子供向け教材から一般を対象にした趣味の世界まで、幅広い分野におけるマルチメディアコンテンツの提案がみられた。

採択コンテンツは13件に

提案に対して審査委員会を設置し、優れた13件が採択された。会場では、採択された各コンテンツの開発企業がブースを出展するとともに、会場内に設置されたステージにおいてプレゼンテーションも行なわれた。以下に採択されたコンテンツを紹介する。

『マンダラ・コスモロジー――アジアの叡智と至高の美の世界』

チベット仏教の優れた宗教美術であり、今はほとんど行なわれる機会がなくなってしまった、5色の砂で細密に創り上げる砂マンダラと制作過程。新しいメディアとテクノロジーとの融合により、その再現過程をコンテンツにしたもの。繊細かつ慎重に制作過程を伝えるために、真上より撮影をして、砂マンダラ全体を俯瞰(ふかん)できるようにした。撮影にはプロフェッショナルデジタルカメラ『NIKON T1』が使われた。また、動画による情報も提供される。すでに欧州で催された“マルチメディア・フェア”のプレショウにおいて高い評判を集めており、販売が待たれる作品。

(有)アカンパニー・カンパニーが企画編集し、マルチメディア制作を(株)プロペラアートワークス、販売を(株)デジタローグが行なう。日本語・英語バイリンガルのハイブリッドCD-ROMで提供される。販売は8月に予定しており、価格は未定。

会場内では各コンテンツごとにプレゼンテーションが行なわれた。『マンダラ・コスモロジー』は、デジタローグの江波直美氏(右)が解説
会場内では各コンテンツごとにプレゼンテーションが行なわれた。『マンダラ・コスモロジー』は、デジタローグの江波直美氏(右)が解説



音声認識システム採用『フライトシミュレーション・システム』

本格的フライトシミュレーターソフトのメーカーであるアクアシステム同社は、独自の航空力学技術を駆使した高性能フライトシミュレーターに、音声認識システムによる対話の要素を採り入れた。このシステムは、ユーザーがパイロットの指示に従ってチェックリストを読み上げたり、管制官とのやりとりができるなど、よりインタラクティブ性とエンターテインメント性を高めたリアルフライトシミュレーションである。

動作環境は、Windows 2000、Windows 98+Direct X 7.0以降。企画制作は、(株)アクアシステムで、同社がパソコンショップなどを通じて販売する。価格は7800円(予価)。

カクテル・シミュレーター『カクテル・アーティスト』

600種類以上のカクテルデータベースとツールデータベースを基にしている。混ぜる酒、リキュール、ジュースなどの種類や量、グラスや調理法といったさまざまな要素を自由に組み合わせ、味覚、アルコール濃度、形、色、化学変化を何度でもシミュレーションできるユニークなコンテンツ。企画制作は(株)アストロール。ムックとして書店などにも置くが、インターネットを通じても販売する予定。価格は9800円(スタンダード版/予価)で、CD-ROMで提供。

ときを忘れるペーパークラフト『80時間世界一周』

大人から子供まで、構造、作成手順、完成作品などを時系列で楽しみながら手軽に参加できる仮想3.5次元ペーパークラフト。豊かで潤いのある創造力を掘り起こすコンテンツ。ペーパークラフト作家の杉井清二氏の企画監修により、(株)アドホックが制作する。販売価格は3500円(予価)。

伝統織物のデザインや制作行程を学ぶ『唐織工房2000』

経、緯(たて、よこ)の糸の交差上にデザインを表現する、人類最古のデジタルメディアである織物。この伝統織物のデザインや制作行程を学ぶマルチメディア教育ソフト『唐織Museum』と、織物のネットワークでの受発注や、織物のでき上がり具合を確認できるツール『Virtual-Textile』から構成する。

Adobe IllustratorやAdobe Photoshopをベースに、新しいテキスタイルデザイン手法を実践している京都の老舗織物屋、伊藤平商店による企画。マルチメディア制作には東芝デジタルフロンティアがあたる。販売などについては未定。

会場には各コンテンツのブースが設けられ、各企業担当者が説明をしていた
会場には各コンテンツのブースが設けられ、各企業担当者が説明をしていた



国際交流のためのシティ・ウェブジン『REALTOKYO』

国内と国外の双方に向けた、日英完全バイリンガルの世界発信/受信型のシティ・ウェブジン『REALTOKYO』世界の話題のニュース、映画、演劇、音楽、アートなど、首都圏で開催される各種文化イベントを精選し、紹介。カルチャーに関心の高い都市生活者のための都市型カルチャーウェブマガジンを制作する。企画制作運営は(有)小崎哲哉事務所。発行人は芹沢高志氏、編集人は小崎哲哉、アートディレクターは小阪淳氏、チーフプログラマーは島田卓也氏(GKテック)。

『鎌倉大仏=レンジセンサーと3次元CGが解き明かす大仏の謎=』

鎌倉大仏という巨大な文化財建造物を3次元CGを駆使して復元するDVDコンテンツ。高精度のレンジセンサー(多数のレーザーパルスが物体に反射して戻ってくる時間から距離を算出して、対象物の3次元形状を1万分の1の精度で自動的にデータ化する装置)を使って3次元スキャニングをする。計測協力には東京大学生産技術研究所池内研究室があたり、制作は(株)キャドセンターが行なう。

『バーチャルリアリティーによる歴史合戦の再現――関ヶ原の戦い』

慶長5年(1600年)、天下分け目の合戦、関ヶ原の戦いの21時間を“距離感の追体験”、“密集の描写”、“天候・気候の再現”、“時間経過の実感”などを通し、史実により近く再現したコンテンツ。動作環境はWindows 95/98、Direct X 5.0以上、QuickTime 4.0。制作は教育産業(株)

『江戸――大正昭和が現代の東京に甦る江戸東京デジタルマップ辞典』

明治初期実測図、現代実測図を基図に、中川恵司氏が数年の歳月をかけて完成させた『復元江戸情報地図』と『現代地図』を同ポジションにマルチ化し、約2200点もの江戸情報を収録したコンテンツ。江戸幕府の資料に基づいて完成された歪みのない江戸地図を利用している。現在から溯る150年の東京地図と、各時代、地域に関連する絵画、写真、解説文により、歴史のつながりを瞬時に確認できる『デジタルマップ辞典』を実現。企画制作は(有)菁映社。12月に発売を予定している。

江戸東京デジタルマップのブース。中には制作内容について、助言する熱心な来場者までいた江戸東京デジタルマップのブース。中には制作内容について、助言する熱心な来場者までいた



『日本デザインの青春時代――TDS20年の歩みから』

クリエーターたちが自主的に運営するデザインギャラリー 『東京デザイナーズ・スペース(TDS)』の'76年から'95年の20年の歩みを、写真、グラフィックス、イラスト、ファッション、音楽、照明、テキスタイルなどで総覧するコンテンツ。CD-ROMから関連ウェブサイトへのアクセスもできる。制作はDNAメディア(株)

デジタル大工『城』を創る――3D城郭データライブラリー

人気も高く、幅広い分野で活用が見込まれる3次元城郭データライブラリー。広島城全貌の仮想的復元CGなど、観て楽しい著作権フリーの3D城郭モデル素材集である。監修は広島大学の三浦正幸教授(文学部)。制作には建築会社の広島ホーム建設(株)があたっている。動作環境には、Windows NT 4.0、3D STUDIO MAXが必要。

万国博覧会150年を鳥瞰する市民レベルの映像学習システム

2005年の国際博覧会を迎えるにあたって、万国博覧会150年に関する貴重な研究情報をデーターベース化し、市民レベルでも利用できるようにしたマルチメディアコンテンツ。企画は(財)2005年日本国際博覧会協会、制作販売は(株)ボイジャー上製本形式+DVD-ROM/CD-ROM形式で、書店やパソコンショップで販売する。価格は4500円(予価)。

『望月昭伸の小笠原クジラワールド』

  '99年3月、小笠原の海で行方不明となった、海外でも評価の高い水中写真家、望月昭伸氏。望月氏はクジラ撮影の日本の第一人者であり、水中写真家としても30年近いキャリアを持っていた。彼が遺した、小笠原の海とクジラたちの美しい写真と映像を、美しい音楽とともにまとめたDVDコンテンツ。DVD-VIDEO&DVD-ROM(ハイブリット版)で、6月下旬より発売する予定。問い合わせは鉄人倶楽部(株)。

幅広いテーマ、CD-ROMからウェブ、DVDまでの多用な表現メディア

以上の13件が今年度の採択されたコンテンツである。内容は、趣味性、ゲーム性の高いものから、芸術性、学術性の高いものまでと非常に幅広い。誰にでも楽しめそうなものから、大変マニアックなものまで、いずれも多種多様な指向性を持っており、個性豊かな作品群と言えるだろう。また、ウェブサイトそのもののコンテンツやウェブサイトとの連動を考慮したCD-ROM、より膨大なデータを収録できるDVDへの対応など、収録媒体も広がってきている。今後、実際に商品として販売されたり、自由に利用できる時がくるのが楽しみだ。
 
なお、各コンテンツの詳しい中身は、成果集ホームページ“コンテンツビッグバン”
で紹介される予定。

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