KDD(株)と米クアルコム、および(株)クニリサーチインターナショナルの3社は、電子メールソフト『Eudora』を利用したネット広告配信事業について、業務提携の覚書を交わしたと発表した。
“新インターネット電子広告媒体”と呼ぶ今回のネット広告配信は、5月中旬にも配布を開始する『Eudora
Pro 4.3-J』のウインドー上に、広告画面を表示するというもの。ユーザーがメールの送受信を行なう際、“Eudora
ADServer”と呼ばれる広告配信サーバーからHTTP形式で広告画像が配信され、Eudora上に表示されるという仕組みだ。
広告画像にはリンク機能を付加し、ネット上のバナー広告と同様の効果を発揮する。一度ダウンロードした広告はオフライン状態でも表示されるほか、パソコンの電源を落とした場合でも、次回起動時に再表示される。ひとつの広告は最低でも75秒以上連続表示されるほか、ネットに接続しているあいだは、更新も行なわれる。
米クアルコムでは、米国市場において'99年12月から試験配信を開始、この2月から本格的に業務を開始し、1日あたり200万の広告を配信しているという。日本ではEudora
Pro 4.3-Jのβ版配布とともに広告配信を開始し、6月に予定される製品版の配付に合わせ、正式スタートを開始する。
KDDは、広告配信に関するネットワーク、データセンターなどの提供を行なう。また、広告営業活動の支援も行なっていく予定だ。クニリサーチでは、Eudora
Pro 4.3の日本語化を推進する。同社ではパッケージ版として発売しているVer4.2については販売を継続し、Ver4.3への無料アップデートを行なうとしている。
Ver4.3では3つのバージョンをラインナップ
今回のネット広告を開始するにあたり、Eudora Ver4.3は“アドモード”“ペイドモード”“ライトモード”という3種類のバージョンを持つことになる。3バージョンは基本的に同じモジュールを利用しており、インストールの際にユーザーがモードを選択することが可能だ。ベースとなるアドモードはネット広告が表示されるタイプで、インターネットなどを通じて無料配付されるというもの。ペイドモードは、アドモードユーザーが代金支払いを行なうことで、広告が表示されなくなるようにしたもの。現行のパッケージ版ユーザーがVer.4.3にアップデートした際は、このペイドモードを利用することになる。ライトモードは、無料で配付され、なおかつ広告も表示されないというもの。他の2つのバージョンがEudoraの持つ機能をすべて備えているのに対し、ライトモードではいくつかの機能が制限されている。
都内で行なわれた記者会見において、KDDの執行役員を務める池田佳和氏は、今回のネット広告配信について「まったく新しいメディアになりうる」と説明。KDDとして、配信システムを全面的にバックアップする姿勢を示した。今後は、KDDが運営するISPのNEWWEBにおいて、Eudoraの無料ダウンロードサービスを開始する予定だ。
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KDDの池田佳和氏、「従来は電子メールの5行広告などがネット広告だった。今回の新広告システムは新しい波になるだろう」 |
米クアルコムのジェフ・ベルク氏は、「Eudoraのビジネスモデルを変えていくのが、Ver4.3の狙い」だと説明。Ver4.2からの機能拡張に際しては、独自の技術を持つ企業の買収なども行なったという。今後は「グループウェアのような展開を図る」としており、今年末には具体的な形で紹介できると語った。
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米クアルコムのジェフ・ベルク氏。「Eudoraは2000万人のユーザーを誇る」と、マス媒体としての可能性をアピール |
クニリサーチの代表取締役を務める出口巌氏は、「全世界におけるEudoraの販売数のなかで、半分以上を日本で発売しており、120万ユーザーに達する」と語り、Eudoraが広告配信のプラットフォームとして十分なユーザー数を持っていることをアピールした。
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クニリサーチの出口巌社長、「ワイヤレス・モバイル、インターネットという3つのキーワードを軸に展開していく」 |
今回の広告配信では、広告収入の見こみや3社における収益の分配などについては、いずれも発表の段階にはないとしている。広告代金に関しては、米国では電子メールのテキスト広告と同等か若干高めなのに対し、日本では同等以下にしたい(出口氏)という。
