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【東京エアロスペース Vol.1】日本最大の航空宇宙展が開催--省庁主導の技術開発を展示

2000年03月23日 00時00分更新

文● 編集部 鹿毛正之

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航空宇宙産業の展示会である“東京エアロスペース2000”が、22日からの5日間、東京・お台場の東京ビッグサイトで開催されている。主催は(社)日本航空宇宙工業会で、一般公開は25日と26日の2日間となっている。25ヵ国から280社以上の企業が出展しており、航空機メーカーやエンジンメーカーをはじめ、部品メーカーや商社などがブースを並べている。

東京ビッグサイトで開催中の“東京エアロスペース2000”
東京ビッグサイトで開催中の“東京エアロスペース2000”



会場の一画に設けられた特別展示のスペースでは、宇宙開発事業団(NASDA)をはじめとする各省庁が、現行の研究成果を展示していた。

飛行船を利用して高速インターネットを実現

科学技術庁と郵政省が研究開発を行なう“成層圏プラットフォーム”は、高度2万mの成層圏に全長250mの飛行船を浮かべることで、“空飛ぶ情報ネットワーク”を構築するものだ。

成層圏プラットフォームで利用される飛行船の模型、上面は太陽電池パネルで覆われており、サイズは全長250m/重さ30t
成層圏プラットフォームで利用される飛行船の模型、上面は太陽電池パネルで覆われており、サイズは全長250m/重さ30t



主な目的は、通信・放送ミッションと地球観測ミッションの2つ。通信・放送ミッションでは飛行船の底部にアンテナを備え付け、電波の中継基地(プラットフォーム)として利用する。飛行船同士でも電波の中継を行ない、携帯端末、高速インターネット通信、デジタル放送、ビデオ・オン・デマンドといった用途における利用が想定されている。

飛行船を利用する利点としては、人工衛星利用に比べて伝送距離が短いこと、プラットフォーム(飛行船)が自由に移動可能であること、未利用の周波数帯を利用可能であることの3点が挙げられている。

ひとつの飛行船でサービスを提供可能な地域は、最大で半径100kmほど。もっともこの場合では飛行船を見上げる仰角が20度程度と浅くなってしまうため、仰角が45度以上になる半径20kmまでが、実用的なサービス提供範囲になるという。

東京上空2万mに浮かべた飛行船からは、房総半島の先端までを見通せる
東京上空2万mに浮かべた飛行船からは、房総半島の先端までを見通せる



飛行船の電源は、雲がないという成層圏の特徴を生かし、太陽電池から自家供給される。一度打ち上げた飛行船は2~3年は連続利用できるとのことで、一定期間ごとの保守を行なうことで、最大で10年程度の耐用年数を実現するという。

今後は全長150mの飛行船を利用し、2003年度まで実験を積み重ねていく予定。実用化はその後となるが、飛行船による実験が不調に終わった場合には、無人飛行機を利用した実験などを検討する可能性もあるという。

GPSで空港内の高精度管制を実現

運輸省の電子航法研究所では、空港内を走行する飛行機や車両の位置を監視する“空港面ADSシステム”の研究を進めている。

仙台空港をモデルにした空港面ADSシステムのデモ。3台のマスター局で空港全体をカバーしている
仙台空港をモデルにした空港面ADSシステムのデモ。3台のマスター局で空港全体をカバーしている



空港内には各種のサービス車両が走行しており、現状では空港管制官が目視で管制を行なっている。同システムは管制官の負担を軽減するとともに、各車両にカーナビのような端末を装備したり、車両を運行する企業に表示端末を設置することを可能にするという。

システムはWindowsベースで開発されており、会場ではWindows 98を搭載したPentium-166MHzマシンにてデモを実施していた。現在の仕様では最大300台まで同時に管制することが可能で、位置データは1秒ごとに更新される。通信には2.4GHz帯スペクトラル拡散無線を利用しており、各車両の現在位置を1m程度の高精度で計測する。

マップ上の走行車両をクリックすることで、車両の詳しいデータをポップアップ表示させることが可能だ
マップ上の走行車両をクリックすることで、車両の詳しいデータをポップアップ表示させることが可能だ



2001年には新千歳空港において、除雪車50台あまりを対象にした実地評価を1年に渡って実施する予定。その後、成田空港への導入を予定している。

等高線を解析した50m単位の標高データ

国土地理院では、日本全国の標高データをリアルタイムで表示するシステムを展示していた。これは、フリーウェアの地図表示ソフトである『カシミール3D』を使用したもの。標高データは、国土地理院が発行する縮尺2万5000分の1の地図をデータ化し、等高線を解析することで求められている。

カシミール3Dで、地図データを3D表示するデモ
カシミール3Dで、地図データを3D表示するデモ



このデータは“数値地図”と呼ばれるもので、地図販売店などを通してCD-ROMの形で販売されている。価格は1枚あたり7500円で、50m単位のデータではCD-ROM3枚に、250m単位のデータではCD-ROM1枚に収まるという。

マウスポインターが当たっている場所の緯度/経度/標高が、リアルタイムで表示されているのがわかる
マウスポインターが当たっている場所の緯度/経度/標高が、リアルタイムで表示されているのがわかる



データの更新については、2万5000分の1程度の地図ではほとんど変化が生じないため、毎年ではなく数年おきに行なっているとのこと。また、地震や火山噴火の予知などに利用されているGPS連続観測システムの“GEONET”では、24時間体制で観測を行ない、基線解析を行なっているという。

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