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文部省、通産省、郵政省、自治省が集結!! パソコンによる2005年の教育現場を考える――“21世紀への情報教育”(前編)より

2000年03月22日 00時00分更新

文● 狭間太一郎

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15日、(社)日本教育工業振興会主催の第16回情報教育政策セミナー“21世紀への情報教育”が開催された。このセミナーは、バーチャルエージェンシーにおける教育の情報化プロジェクト参加省庁の政策担当責任者を迎え、“4省連携・教育改革パネルディスカッション”という副題で行なわれたもの。本稿では各パネリストによる政策の説明があった第1部の模様を報告する。

開会の挨拶を行なう日本教育工業振興会の会長、宮島龍興氏 開会の挨拶を行なう日本教育工業振興会の会長、宮島龍興氏



5年後、すべての教室にあるコンピューターは高速なインターネットでつながる

始めに、パネルディスカッションのコーディネーターを務めるメディア教育開発センターの所長、坂本昴氏が“教育の情報化は世界の政策”と題して、各国の情報教育への取り組みを紹介した。

メディア教育開発センター所長、坂本昴氏メディア教育開発センター所長、坂本昴氏



米国では'96年の技術活用能力向上策で、すべての生徒が技術活用能力を持つことを、英国では'96年の全国学習格子において、すべての学校を無料でスーパーハイウェイに接続すること、すべての子供がITを使いこなす能力を卒業時までに身に付ける、といった目標を報告。またフランス政府の行動計画で、6つの優先課題の第一に教育が挙げられたことや、EUでのインフラ整備などの取り組みを紹介。韓国での教育における情報技術の活用“ビジョン2000”も説明した。

最後に日本におけるバーチャルエージェンシーの取り組みを紹介。2005年までに達成を目指す“すべての教室にコンピューター、すべての教室からインターネット、すべての学校から高速インターネット”という目標などを説明した。坂本氏は教育の情報化プロジェクトについて「“変わる”のではなく変えなければならない、変えたい」と述べた。

現状では教師のニーズに適合していない学校教育用コンテンツ

続いて、文部省の生涯学習局学習情報課長、岡本薫氏が“バーチャルエージェンシー‘教育の情報化プロジェクト’について”の説明をした。

文部省の生涯学習局学習情報課長、岡本薫氏文部省の生涯学習局学習情報課長、岡本薫氏



岡本氏はプロジェクトについて、コンピューターの使い方を教える、コンピューターを使っていく、教師の整備、という3点は旧プロジェクトであるとした。今後の施策の特徴は「すべての授業にコンピューターを道具として使うことである」と説明。そのために2005年度末までにコンピューター教室のほか、すべての教室にパソコン2台と明るい状態で使用できるプロジェクターを整備する、と述べた。

またコンピューターについては、「使うのに決まっているのだから、教員の意識改革は不要」であると述べた。そして必要となる学校教育用コンテンツについて、現状では教師のニーズに適合していない、時間的なコストに見合わないと分析。日本では学習指導要領とそれに沿った教科書があるので、例えば教科書の目次に合わせて素材を用意、またそれぞれに複数の項目を用意するくらいでなければ利用されない、とした。

コンテンツを中心に開発予算を組む

“通商産業省における情報教育推進政策”については、通商産業省の機械情報産業局情報処理振興課長補佐、萩原嵩弘氏が報告した。

通商産業省の機械情報産業局情報処理振興課長補佐、萩原嵩弘氏通商産業省の機械情報産業局情報処理振興課長補佐、萩原嵩弘氏



萩原氏は、“100校プロジェクト”や“新100校プロジェクト”、教育の情報化推進事業といった取り組みを紹介。また2000年度予算で教育情報ナショナルセンターの整備を行なうことを報告。通商産業省では14億5000万円の予算でコンテンツ作成ツール開発などを、また2次補正予算8億円で教育用画像素材の開発を行なうことを説明した。そして現在、学習素材で特に不足しているものとして、日本を紹介するコンテンツを挙げた。

また学習技術の情報化について、ISOでの標準化が進められている状況や、先進学習基盤協議会の設立を説明。今後の情報教育については、教育自体が情報通信に飲まれないよう通常以上のレベルのものを、と提言した。

1050校を1.5Mbps相当の回線で接続、'99年9月に運用を開始

次に郵政省の電気通信局電気通信事業部高度通信網振興課長、田中謙治氏が、“21世紀に向けた情報教育関係施策の概要”について説明した。

郵政省の電気通信局電気通信事業部高度通信網振興課長、田中謙治氏 郵政省の電気通信局電気通信事業部高度通信網振興課長、田中謙治氏



日本において障害となるアクセス費用については、接続料金では大手プロバイダーを中心に一般向けの半額程度の料金を、通信料金ではNTTが学校向けに100時間相当まで8500円の定額料金制を導入していることを紹介した。

'98年度第3次補正予算300億円で“学校における複合アクセス網活用型インターネットに関する研究開発”を実施、全国約4万校の小中高等学校などのうち1050校を1.5Mbps相当の回線で接続、'99年9月に運用を開始していると報告。三鷹市に中央ネットワークセンターを、30の地域に地域ネットワークセンターを置いていること、回線についてはCATV、xDSL、無線、光回線、衛星通信での接続が行なわれていることを説明した。

また'99年度第2次補正予算約184億円で“学校における新たな高速アクセス網回線活用型インターネットに関する研究開発”を実施、新たに600校を選定して動画像を自由に扱える環境の研究を行なうと報告。中央ネットワークセンターに動画像教材を置き、ネット配信をすることを説明した。

2000年度、教育用コンピューターの整備に1755億円

最後に自治省の財政局調整室課長補佐、稲岡伸哉氏は“‘教育の情報化’と地方財政”について説明。

自治省の財政局調整室課長補佐、稲岡伸哉氏自治省の財政局調整室課長補佐、稲岡伸哉氏



2005年度を目標に、すべての公立小中高等学校などからインターネットにアクセスでき、すべての学級のあらゆる授業において、教員と生徒がコンピューターを活用できる環境を整備できるよう、予算を計上することを報告した。2000年度、教育用コンピューターの整備に1755億円、学校インターネット接続に40億円、情報処理技術者による技術指導や研修を実施するための情報処理技術者委託事業に19億円、計1814億円を計上すると述べた。

また'99年度の実績が87万台、2005年度は235万台であると予測した。

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