(株)バンダイは、人間とのコミュニケーションを図ることを目的とした自立型ロボット『Communication
Robot BN-1』を開発したと発表、本日都内で記者発表会を行なった。
BN-1は、人工知能を持った猫型ペットロボット。飼い主とのコミュニケーションを図ることに重点をおいており、他のペットロボットと比べて、センサーの種類や行動パターン、目の表情パターンが多いという。本体には合計8種類のセンサーを搭載する。
猫型ペットロボット『BN-1』。BN-1はコードネームで、商品化の際は別の名称になる予定。BN-1は、同社開発部署の名前“Bandai Newproperty開発部”の頭文字を取ったもの。外見は猫だが、猫にした理由は特になく、本体の動きを考慮した結果、猫の外見におさまっただけという |
額部分にある“ジェスチャーセンサー”は、飼い主が額の上で手を左右や前後に振ったり回転させたりすると、その動きを認識してBN-1がさまざまな動作取る。目の部分には、赤外線で障害物を認識する“赤外線対物センサー”と、“光フェロモンセンサー”を内蔵している。光フェロモンセンサーは、赤外線信号識別センサーで、IDスイング(後述)からの信号や、他のBN-1からの信号を認識する。耳部分には音に反応する“サウンドセンサー”、背中部分には直接触ると反応する“なでなでセンサー”を装備、なでると喜び、たたくと怒るなどさまざまに反応する。本体内部には、自身の動作を検出する“姿勢センサー”、腕の先(猫の前足の肉球部分)には、障害物の検出や触られたことを認識する“肉球センサー”を内蔵する。あごの部分には、床面を認識する“床面センサー”を内蔵する。
寝ているBN-1の近くで手を叩くと、ゆっくりと起きあがる。額の上で手を動かすと反応し、“お手”“おすわり”といったさまざまな動作パターンを行なう。写真のプロトタイプの起動スイッチは本体の腹の部分にあるが、これは変更する可能性があるという。また、バッテリーがお尻の部分にあるが、「製品版はもっとエレガントにしたい」(同社芳賀氏)という |
両目はLEDディスプレーとなっており、BN-1の感情を、笑ったり泣いたりという目の表情によってディスプレーに表示する。目の表情パターンは50種類用意されている。また、本体にサウンド機能を搭載しており、動作パターンとともに、音コードやメロディーを発して感情を表現する。人間の言葉を発したり、猫の鳴き声のような音を発したりはしない。
歩行は、2本の腕と腰につけた車輪を利用する車輪走行と、腕を交互に動かして進む脚歩行の2種類による“ハイブリッドモバイルメカニズム”を採用している。腕とその先端にある車輪、および腰のひねりを連動させることで、移動のほかでんぐり返しや逆立ちなどさまざまな動作を行なえる。
モーターを、腰と、両腕と本体の間接部分、両腕の先部分の合計5つに装備。車輪走行や脚歩行のほか、腹ばいになった状態での匍匐前進、後退など、さまざまな移動パターンがある。転んでも自分で起き上がり、うまく起き上がったらガッツポーズ、起き上がれなかったら悔しがるなど、感情表現も多彩。猫型なだけあって、猫パンチも得意 |
IDスイングは、ペンダント型の専用リモコンで、光フェロモン(赤外線識別信号)を発信できる。BN-1は、IDスイングを身につけた人を飼い主と認識する。リモコンにはボタンが装備されており、ボタンの押し方によってさまざまな赤外線信号を発信でき、BN-1に命令できる。
IDスイング |
BN-1は、人工知能プログラム(サブサンプションエンジン)内に動作パターンのデータベースを持ち、メモリーの空き容量に新しい動作パターンを書き込むことで成長していく。BN-1がどのような動作パターンや反応をしたかという過程によって、BN-1自体の性格が変化していく。また、赤外線インターフェースやUSBインターフェースの専用コミュニケーションアダプター経由で、BN-1とPCを接続でき、専用ソフトを利用して新しい動作パターンプログラムを作成してBN-1に書き込んだり、専用ホームページから動作パターンをダウンロードしたりできる。専用ソフトでのプログラミング方法は、初心者向けの“ビヘイビアシンセサイザー”と、実際のBN-1プログラムを一般向けにアレンジした“トレイナー”の2種類が用意されている。
CPUには、16bitマイクロプロセッサー×1と8bitマイクロプロセッサー×3を採用。バッテリーはお尻の部分に内蔵している。ニカドバッテリーによる充電式で、連続駆動時間は2時間程度。専用充電器を接続して充電する仕組み。本体サイズは幅150×奥行き220×高さ140mm。重量は780g(バッテリー含む)。
BN-1の発売時期は2000年秋。価格は5万円以下で、インターネット販売のみで提供するという。メインターゲットは特に設けておらず、男女年齢を問わず幅広い層に受け入れられるだろうとしている。
発表会場で、同社代表取締役会長の杉浦幸昌氏は「BN-1は、われわれが長年取り組んできた“ロボット”というテーマの1つの成果。いいものができたと思っている。ロボット技術というもの、産業用の実用品市場だけでなく、テレビアニメなどで活躍するロボットを何とか現実のものにしたいというニーズがあって、開発が行なわれていると思っている。バンダイはロボットを子供たちの身近なおもちゃとして開発、提供していく。夢とアイデアをロボットに組み込み、ユーザーに提供すると同時に、われわれが目指すエンターテインメントを実現したい」と挨拶。
同社代表取締役会長の杉浦幸昌氏 |
続いて同社常務取締役の石上幹雄氏は、「BN-1は、約5年かけて研究、開発してきたロボット。まず、ロボットを動かす研究に始まり、現在は人工知能の研究に進んでいる。動くだけでなく、ロボット自身が考え学び、相手を認識するようにしていく。また、PCと連動してプログラミングも可能にする。本当の意味でコミュニケーションを取れるロボット。友達要素の強いロボットにしたい。今後は、ネットワーク連動を見据えた研究を行なっていきたい」と語った。
同社常務取締役の石上幹雄氏 |
BN-1の開発を担当しているニュープロパティ開発部次長の芳賀義典氏は、「どんな動きをしたら面白いかをまず始めに考え、ロボットを開発した。そのせいで見た目がびっくりするようなデザインになっている。モーターが5個しかないのでコストが安く、バッテリーの持ちもよくなる。友達として遊びに参加できるロボットを作っていきたい。現在、内蔵メモリーの容量をいくらにすれば実用的なものになるかが案件の1つ」と説明した。また、将来的に同社製のキャラクター製品にロボット技術が組み込まれるかどうかについては「十分考えられる。これらの技術は新しい商品に活かしていきたい」としている。
ニュープロパティ開発部次長の芳賀義典氏 |
AIBO |
BN-1 |
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運動機構 |
モーター |
18個コ |
5個コ |
移動方式 |
4足歩行方式 |
ハイブリッド移動方式 |
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アクセサリー |
頭部動作、しっぽ動作 |
なし |
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ヒューマンインターフェース |
しぐさ、目のランプ(2種類)、音声、コマンダー |
しぐさ、目のパターン(50種類)、音声、ID、PC接続 |
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センサー |
カメラ、マイク、対物、接続、姿勢、加速度など |
ジェスチャー、マイク、対物、接触、姿勢、光フェロモンなど |
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コンピューター |
64bitRISCプロセッサ |
16bitワンチッププロセッサ |
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ユーザープログラミング |
動きと音声のみ可能 |
ロボットの反応を含むあらゆる行動を簡単にプログラム可能 |
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発売時期 |
1999年6月 |
2000年秋 |
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価格 |
25万円 |
5万円以下 |
同社が示したソニー『AIBO』との比較表