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【CeBIT 2000レポート Vol.15】期待高まるWAPとGPRS、本命はIMT-2000――携帯電話サービスに期待を込める欧州

2000年03月06日 00時00分更新

文● 編集部 小林伸也

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“CeBIT 2000”では、日本や欧州の携帯電話メーカーが話題の中心となった。欧州でも携帯電話の普及率は高まっており、携帯電話とインターネットの融合を目指して“WAP”を利用したサービスが本格化、高速パケット通信方式“GPRS”のスタートも間近となっている。そして本命は次世代の移動体通信方式である“IMT-2000”。欧州と日本で採用される“W-CDMA”方式の端末も多数出品された。

CeBIT会場内で移動体通信関連の企業を集めたホールで目に付いたのはWAP(Wireless Access Protcol)の3文字。携帯端末用の通信プロトコルとしてスウェーデンのエリクソン社や米モトローラ社、フィンランドのノキア社らが中心になって策定し、転送速度が遅くても効率良くデータ通信が行なえるように配慮されている。

日本では、携帯電話を利用したインターネットサービスであるiモードが400万人を超える加入者を獲得しているが、欧州ではこれからが本番。WAPでは独自の言語“WML”を使ってコンテンツが記述されるため、HTMLのサブセットを使用するiモードと異なり、コンテンツ制作に若干の手間が必要だが、欧州ではWAPこそ新世代のモバイル通信をリードするものとして非常に大きな期待を抱いている。

ソニー(株)が出展したWAP対応端末。ソニーは米マイクロソフトと提携し、自社の携帯電話にマイクロソフトの『Mobile Explorer』を搭載すると発表した。同ソフトはウェブブラウザーなどから構成される“モバイルスイート”
ソニー(株)が出展したWAP対応端末。ソニーは米マイクロソフトと提携し、自社の携帯電話にマイクロソフトの『Mobile Explorer』を搭載すると発表した。同ソフトはウェブブラウザーなどから構成される“モバイルスイート”



ドイツ銀行はWAPを利用して携帯電話によるバンキングをデモ、各社も対応端末を発表。ヨーロッパでは携帯端末による電子商取引(EC)を、あえて“m-commerce”(モバイル商取引)と呼び、単なるECとは違ったオリジナリティを出そうとしている。

ノキアはドイツ銀行と提携してオンラインバンキングをデモ。m-commerceの文字が見える
ノキアはドイツ銀行と提携してオンラインバンキングをデモ。m-commerceの文字が見える



独シーメンス社は、自社のWAP対応端末で“Yahoo!”のサービスが受けられるとPR 独シーメンス社は、自社のWAP対応端末で“Yahoo!”のサービスが受けられるとPR



WAPと組み合わせてモバイルインターネットの起爆剤に、と期待されているのが“GPRS(General Packet Radio Services)”だ。これ欧州などの移動体通信の標準プロトコル“GSM(Global System for Mobile Communications)”を拡張したパケット通信方式で、標準で56kbps、最高で115kbpsまでのデータ通信が可能になる。

エリクソンが発表した、携帯電話をMP3プレーヤーにするアタッチメント。GPRSで広帯域化が実現すれば、音楽配信なども活発になる
エリクソンが発表した、携帯電話をMP3プレーヤーにするアタッチメント。GPRSで広帯域化が実現すれば、音楽配信なども活発になる



すでにIMT-2000が動き始めているにもかかわらず、欧州はGPRSに期待を込めている。GPRSがGSMの延長線上にあるため、GSM網を活かして少ない設備投資額で広帯域化が図れるからだ。IMT-2000が第3世代の移動体通信、“3G(3rd Generation)”と呼ばれるのに対し、GPRSは“2.5G”。あくまで中継ぎの扱いではあるが、m-commerceのインフラとして注目を浴びている。ノキアは年内にもGPRSサービスを開始するとされ、モトローラは近くGPRS端末を発売すると発表。カシオ計算機(株)は、同社のPDA『Cassiopeia』にGSM対応の通信機能を搭載した試作品を出品、将来はGPRSに対応させるという。

エリクソンはデジタルカメラアタッチメントも発表。撮影した画像をその場からインターネットでサーバーに転送、別のパソコンで閲覧できた
エリクソンはデジタルカメラアタッチメントも発表。撮影した画像をその場からインターネットでサーバーに転送、別のパソコンで閲覧できた



しかし会場を歩いてみると、実際にはGPRSの展示は少なかった。やはり本命は3GのW-CDMA。欧州も3Gをめぐって通信会社の再編が進んでおり、2月には英Vodaphone Airtouch社がドイツの重工業・通信大手のMannesmann社を激しい争奪戦の末に買収。Vodaphone社が手放すイギリスの携帯電話サービス会社Orange社を日本のNTT移動通信網(株)(NTTドコモ)がうかがう。もっとも成長が期待されるモバイル分野での覇者を目指し、欧州の通信業界は完全な“戦国時代”に突入している。日本でも3Gの莫大な設備投資費をめぐって大合併劇が引き起こされている。通信業界だけにとどまらず、IT業界全体が“モバイル&インターネット”になだれ込んでいる――CeBITではそんな印象が強かった。

来年3月に3Gサービスが開始される日本のメーカーは、CCD内蔵の“テレビ電話”などを参考出品。各メーカーは「サービス開始時期に合わせて開発を進めている」とコメントしており、来年には多彩な次世代端末が話題を集めるだろう。

松下電器産業(株)/松下通信工業(株)が参考出品したW-CDMA対応のテレビ電話。CCDカメラを搭載し、画像はW-CDMA標準のMPEG-4で伝送する。電池の持ちは「数時間」という。同様の製品は日本電気(株)も出品していた 松下電器産業(株)/松下通信工業(株)が参考出品したW-CDMA対応のテレビ電話。CCDカメラを搭載し、画像はW-CDMA標準のMPEG-4で伝送する。電池の持ちは「数時間」という。同様の製品は日本電気(株)も出品していた



松下電器産業/松下通信工業が展示していたW-CDMAの基地局 松下電器産業/松下通信工業が展示していたW-CDMAの基地局



三菱電機(株)のブースに置かれていた基板。これはローム(株)のテスト用ボードで、“着メロ”用LSIの実験に使われた。16音を同時発音できるほか、なんとGeneral MIDI(GM)に対応し、128音色が用意されている。インターネットで流通するGMファイルをダウンロードして、着メロとして鳴らすことができるわけだ
三菱電機(株)のブースに置かれていた基板。これはローム(株)のテスト用ボードで、“着メロ”用LSIの実験に使われた。16音を同時発音できるほか、なんとGeneral MIDI(GM)に対応し、128音色が用意されている。インターネットで流通するGMファイルをダウンロードして、着メロとして鳴らすことができるわけだ

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