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【Robot-ism 1950-2000 Vol.6】『P3』、『AIBO』、『テムザックIV』。最先端ロボット登場のきっかけを探る――ロボット展示より

2000年03月02日 00時00分更新

文● いちかわみほ

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2日まで東京・赤坂の草月会館で開催されていた、ロボットとアートの関係を探る企画展“Robot-ism 1950-2000”。“鉄腕アトム”から“ターンAガンダム”までロボットアニメの系譜の紹介や、『AIBO』など最先端ロボット技術に関する展示などが行なわれた。

会場1階にある“Robot-ism Park”コーナーでは、最先端ロボットが紹介され、来場者の人気を集めていた。本稿では、展示コーナーから、ホンダの2足歩行ロボット『P3』、ソニーの『AIBO』、『テムザックIV』についてピックアップし、その誕生の背景を探る。

ホンダロボット型ロボット『P3』――本田技研工業

実用化はされていないが、テレビCMでも放映されたホンダのヒューマノイド型ロボット『P3』。“知能”と“移動”をキーワードに、研究がスタートしたのは14年も前の'86年のこと。人間の助け手であり、人間のできないことを実現するために開発を始めたが、特殊用途向けではなく、家庭など日常生活での利用をメーンに考えている。

ヒューマノイド型ロボット『P3』。なめらかな2足歩行が一番の特徴
ヒューマノイド型ロボット『P3』。なめらかな2足歩行が一番の特徴



『P3』の前身『P1』、『P2』や『P3』が一貫して2足歩行ロボットとして開発されているのは、家庭での家具のある部屋での移動や、階段の昇り降りを考慮したためである。

なぜ、ホンダがロボットの開発に取り組んだのか。それは、近い将来、クルマメーカーとして、移動手段にもロボットを利用しようと考えているためである。決してクルマ自体がなくなるというわけではないが、悪条件下での移動など、その適用範囲は幅広い。

ヒューマノイドロボットシリーズの研究はすぐに実用に結びつくものではなく、基礎技術の一環として研究されている。この研究成果は、重心制御や滑らかな動き、知覚センシングなど各種の基礎技術を向上するために役立っている。

プロトタイプ1(P1)が誕生したのは'94年10月。これは歩くという下半身の機能は充実していたが、上半身は単に付けただけとも言えるようなアンバランスなロボットだった。プロトタイプ2(P2)は'95年11月に完成した。『P1』の歩行技術をさらに向上させ、上半身にある腕を活用した台車押し作業や、ボルト締め作業が可能になった。

そしてP3の登場は'97年9月5日のこと。身長は160cm、バッテリーを搭載した体重は130kg。自立歩行が可能で、転倒しないように自らバランスを保てる。平らな地面の歩行だけでなく、傾斜面や階段での移動にも対応する。また歩行だけでなく、遠隔制御により腕を使ったナット回しや、床に落ちたものを拾ったり、ドアを開けて通り抜けたりといったこともできるようになった。

確実に進化しているヒューマノイドロボットシリーズ。この技術が実用化される日が待ち遠しい。

エンターテインメントロボット『AIBO(ERS-110)』――ソニー

ソニーの『AIBO』は今回展示された製品の中で唯一、家庭での愛玩向けに開発されたロボットである。これが発表されたのは'99年の5月11日。6月1日には、サイト上で限定3000台(国内)の予約受付を開始したが、わずか20分で完売したというニュースは記憶に新しい。
(http://www.ascii.co.jp/ascii24/call.cgi?file=issue/1999/0601/topi03.html)


その時に販売された『AIBO(ERS-110)』は、シルバーを基調としたメタリックな外見が特徴で、幅156mm×奥行274mm×高さ266mmという小型サイズだった。1台25万円という価格ながら世界的に人気を博し、ビルゲイツなどの各界著名人も手に入れたと話題をまいた。一部オークションサイトでは最高120万円の値が付いたということからも、当時の盛り上がりがよく分かる。

進化するエンターテインメントロボット『AIBO』
進化するエンターテインメントロボット『AIBO』



『AIBO』登場の背景には、'98年6月10日に発表されたエンターテインメントロボット用のアーキテクチャー“OPEN-R”があった。“OPEN-R”はハードウェアとソフトウェアのモジュールで成り立つ。“OPEN-R”機器は“モジュールを追加することにより、さまざまな動きが可能になる。

『AIBO』は、“OPEN-R”アーキテクチャーを搭載した初めてのロボットとして登場した。“OPEN-R”アーキテクチャーにより、“進化”が可能となったロボットである。第2弾の『AIBO(ERS-111)』は『AIBO(ERS-110)』の外形仕様を変更したものが、次に発売される『AIBO』は新しい機能(=モジュールの追加、変更)を持っていると予測される。家庭用愛玩ロボットという枠組みの中で、AIBOがどのように進化するか注目したい。

『テムザックIV』――テムザック

『P3』とは対照的に下半身の機能を絞り、上半身の機能に注力したのが『テムザックIV』である。PHSを使って遠隔操作できる点が大きなポイントになっている。“Robot-ism 1950-2000”展示会場ではほんの数メートルの距離で操作していたが、理論上は数千km以上の遠隔操作も可能だという。

介護分野に応用にも期待できる『テムザックIV』介護分野に応用にも期待できる『テムザックIV』



『テムザックIV』は、イスなどに取り付けられた遠隔装置で制御する。遠隔装置には両手の指の動きを調整する2つのジョイスティックと、腕、ヘッド、足を操作するための各コントローラー、ロボット頭部に装着したCCDカメラで映像を確認できる液晶カラーディスプレーが搭載されている。イスに座り、ディスプレーを見ながらテムザックIVを操作する。本体の高さは約120cm、重さは約100kg。駆動系は2足歩行ではなく、安定性を重視した車輪となっている。

『テムザックIV』が生まれた背景は、危険作業や重労働において人間の代わりを果たすロボットを実用化するという目的があった。テムザックの親会社、(株)テムスは福岡県にあるベンチャー企業で、ワンタッチ着脱式ベルトコンベアーの開発で有名な会社。このベルトコンベアーの開発をしながら、テムザックシリーズも研究したという。

遠隔操作が取り入れられたのは『テムザックIII』になってからである。開発費は1500万円。低価格の秘訣はほとんどのパーツを既製品でまかなったこと。演算装置として2台の日立製ノートパソコンを使用していた。そしてパーツを再検討し、製品として完成度を高めたのが『テムザックIV』である。

用途としては原子力発電所や災害現場などを想定しているが、実用への道が一番近いと思われるのは介護の分野だろう。病人の様子を見ながら介護現場でさまざまな応用ができるため、専用ロボットとしてのプロモーションも積極的に展開している。

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