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【E-ビジネス・ストラテジー・フォーラム Vol.2】iモードはなくなることはないだろうが、いずれNTTドコモもICカードを導入することになる――ブル副社長のパトリック・ベナール氏

2000年03月02日 00時00分更新

文● 月刊アスキー編集部 佐々木俊尚

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コンファレンス“E-ビジネス・ストラテジー・フォーラム”が3月1~2日、東京・恵比寿のウェスティンホテル東京で開かれている。世界41ヵ国でエグゼクティブを対象にしたイベントを行なっている英International Communications for Management Group社(ICM)の主催。加速的に進む電子商取引の現状について、多角的な面からの分析や戦略、戦術が専門家により紹介された。

ICカードからオールインワンカードへ

フランスに本社があり、スマートカードを開発しているブル株式会社副社長、パトリック・ベナール氏は“スマートカード:日本における3GPP携帯電話を通じてEコマースを可能にする”のタイトルで、日本ではまだ普及していないこの新しい認証システムについて詳しく説明した。

日本ではバンクカードやクレジットカードなど、磁気カードが依然圧倒的に主流だが、フランスでは'90年代に入ってICカードの普及が進み、'93年ごろには磁気カードがほぼ姿を消した。現在ではバンクカードのほかに医療記録カードやポイントカード、ペイTV用のマルチメディアカードなどにICカードが利用されており、その副産物としてカードの不正利用も激減したという。

ベナール氏は「ICカードをめぐって、さらなるパラダイムシフトが起きつつある」と話し、今後は(1)Javaカードのように、多目的な目的に使えるマルチパーパスカードが増える(2)電子メールやEビジネスの普及とともに、公開鍵方式を使ったCrypto(暗号)カードが現われる(3)携帯電話に差し込むSIM(Subscriber Identification Module:加入者認証モジュール)カードが普及する――などを挙げた。また、これらの特徴をすべて備えたオールインワンのカードの出現も予想されているという。

このうち、欧州を中心に注目をもっとも集めているのがSIMカード。GSM方式の携帯電話で試用する。クレジットカードサイズだが、ICチップを埋め込んだ部分がミシン目で囲んであり、切手サイズを折り取って携帯電話の小型スロットに挿入できる仕組みになっている。ブル社は昨年春に世界で初めて、このSIMカードを提供したという。ICチップのメモリーは32KBで、32bitのRISCコアを内蔵し、ワイヤレスでサーバーとやり取りして利用者の認証やさまざまなサービスを実現することができる。ベナール氏は「見た目はデジタルカメラで使うようなメモリーカードと似ているが、SIMカードはあくまでCPU。何年か前にサン・マイクロシステムズが作っていたSPARCstationと同じぐらいの能力がある」と説明した。

SIMカードがモバイルのEコマースを加速

また日本で人気の高いNTTドコモのiモードと比較すると、SIMカードを使うことでJavaアプレットをダウンロードするなど、内蔵プログラムをアップデートするのが非常に簡単になっていること、非常に強固な暗号化モジュールが内蔵されていること、カードを入れ替えて仕事用とプライベート用を分けるなど、1台のハードウェアセットで複数の使い分けができること、Javaを使っているので、開発ツールキットが容易に入手できること――などのアドバンテージがあるという。ベナール氏は「現在は32KBで容量が小さいが、近く1MBのICチップも登場するようだ。SIMカードは、モバイルのEコマースを加速させるものになる」と話した。

SIMカードは、W-CDMAの規格を検討している標準化プロジェクト“3DPP(Third Generation Partnership Projects)”でもUSIM(Unified SIM)として標準採用される。ベナール氏は「3DPPによって、日本とヨーロッパのモバイルの標準が統合されることになり、米国に対して有利な立場に立てるようになる」と力説。また現行のiモードについては、「iモードはなくなることはないだろうが、いずれNTTドコモもICカードを導入することになると思う。ICカードは、動かしようのないこれからのトレンドなのです」と結んだ。

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