このページの本文へ

『ISIZE』が軌道に乗った理由――“ECが築く新しいパラダイム”より(前編) 

2000年03月01日 00時00分更新

文● 狭間太一郎

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

23日、東京・青山のTEPIAにおいて“ECが築く新しいパラダイム”と題するセミナーが開催された。これは第12回展示“暮しのデジタルインパクト展~変わる21世紀の日本~”の併催イベントで、第2回セミナーとなるもの。本稿では、講演2までの模様を報告する。

(財)機械産業記念事業財団の常務理事である林俊太氏が主催者として挨拶
(財)機械産業記念事業財団の常務理事である林俊太氏が主催者として挨拶



新たなフェーズを迎えるECOM。その役割と活動

講演1は、電子商取引実証推進協議会(ECOM)の主席研究員である青島幹郎氏による、“ECと電子決済の今後の動向”。青島氏はまず、ECOMの役割と活動について報告した。

電子商取引実証推進協議会(ECOM)の主席研究員、青島幹郎氏
電子商取引実証推進協議会(ECOM)の主席研究員、青島幹郎氏



ECOMは、EC実現のための基盤整備、ECの実ビジネス化に向けた具体的方策の検討、安全なEC環境の整備を目的とした機関。さまざまなガイドラインや標準約款などを策定している。またインターネットでEC情報やECOM成果の公開しており、累計1000万ページビューを記録している。

ECOMでは3月15日よりフェーズ2の最終成果発表会を開催する。4月以降は企業間電子商取引推進機構(JECALS)とECOM、産業情報化推進センター(CII)がいったん解散、その後、統合されて電子商取引推進協議会(ECOM)になると説明。

クレジットカードによる犯罪被害は急増

続いて青島氏は日本のカード決済システムについて解説した。現在、磁気カードベースのオンラインシステムが中心であり、クレジットカードは'98年度の発行枚数が約2億2000万枚(取扱高は約17兆円)、キャッシュカード発行枚数が約3億5000万枚(郵貯6300万枚を含む)、CDATM設置台数が約14万2000台、カードオンライン端末が130万台である。

また日本のクレジットカードによる犯罪被害、特に偽造については、'97年が12億円、'98年が26億円と急増している状況を提示、'99年は「3~4倍ではないか」と予想した。カードについては法整備の不備も指摘し、改正への動きを示唆した。

ICカードシステムについては、接触型、非接触型の実験動向などを説明し、今後の利用分野ごとの普及を予測。また普及のためには、1台ですべてのカードを扱える端末共同利用システムの開発や、システムの運用、整備、基準を確立すること、管理機構の創設が必要であると提案した。

欧米の動向としては、米政府のカード取引きの推移、スマートカード導入といった、電子政府の実現と管理コストの節減への取り組みなどが紹介された。

『MixJuice』はリクルート型情報誌ビジネスモデルと親和性が高かったが……

講演2では、(株)リクルートでISIZE局の局長を務める高橋理人氏が“ビジネスのパラダイムを変化させるEC――ISIZEが提案するEC”と題して、現在までの取り組みを報告した。リクルートは幅広い分野をカバーし、年間1億冊レベルの情報誌出版事業を展開。既に広告や販促費によるビジネスモデルを確立している。

リクルートISIZE局の局長、高橋理人氏
リクルートISIZE局の局長、高橋理人氏



インターネットへの取り組みでは、'95年3月に『MixJuice』という名称で実験サイトを開始。'95年7月に電子メディア事業部が発足し、情報誌と違う伝達メディアによるビジネスを検討した。FAXやパソコン通信などを研究した結果、'95年12月にコンテンツビジネスをインターネットに集中することを決定し、『MixJuice』の商用化が始まったと説明した。

商用化スタート期には、ユーザーを限定できる求人系では情報誌とは別展開とし、ユーザーを特定できない販促系では情報誌とセットにした。そして、'96年から'97年で、ほとんどの情報誌をネット上に展開した。『MixJuice』は新規ユーザーが多かったため、市販誌への影響はなかったとのこと。ウェブはリクルート型情報誌ビジネスモデルとは親和性が高い。しかし、ネットオリジナルの情報を扱うサービスでは困難があったとした。

『MixJuice』には、情報誌機能と対比してウェブの価値をどこまで上げるかといった課題があった。紙メディアのブランドを踏襲したインターフェースが不揃いだったという理由から、ブランド資産や、ユーザーの価値と資産を形成できなかったと解説した。

“領域ごとのNo1サービス実現”に取り組んだ『ISIZE』

続いて、高橋氏は'97年7月のコンセプトワーク開始から、'99年1月の新サイト『ISIZE』オープンまでの経緯を説明。

『ISIZE』における“領域ごとのNo1サービス実現”のための取り組みとして、行動プロセスのカバレッジ拡大=One Stop化、パーソナライズ(My ISIZE)、ユーザーニーズを汲み上げる仕組み、サイト評価指標の策定と実践などを挙げた。

『My ISIZE』のようなサービスをするとページビューは減るが、そのぶん価値を生み出せると説明。またサイト評価指標は、利益やページビュー、ユーザー数では測れないとして、30項目くらいの指標による総合評価をしながら課題を発見していると語った。

さらにネット型組織体制への変更として、情報誌の事業部からメディアにとらわれない領域の事業部へ、コアとなるIT系人材を生かす横断的な組織を設計する、といった取り組みを紹介した。

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン