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日本はECの勝ち組に残り、本当に“おいしい生活”ができるのか?――“ECが築く新しいパラダイム”より(後編) 

2000年03月01日 00時00分更新

文● 狭間太一郎

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23日、東京・青山のTEPIAにおいて開催されたセミナー“ECが築く新しいパラダイム”の続編。本稿では、講演3以降の模様を報告する。

信用(trust mark)と本人認証、電子決済、三つ巴でポータル化を

講演3は、NTTコミュニケーションズ(株)の先端ビジネス開発センター所長、遊佐洋氏による“ECが拓く新しい生活様式――ECは‘おいしい生活’をもたらすか”。氏は糸井重里氏のコピーを用いて、ECの進むべき方向を論じた。

“おいしい生活”という切り口でECを捉えた、NTTコミュニケーションズの先端ビジネス開発センター所長、遊佐洋氏
“おいしい生活”という切り口でECを捉えた、NTTコミュニケーションズの先端ビジネス開発センター所長、遊佐洋氏



まず、実空間(Real)において電子的手段は商取引の一部に過ぎなかったのに対して、サイバー空間(Real)では商取引と手段が融合することで新しいビジネスモデルが生まれていると指摘。またECにおいて、B2B(企業間取り引き)でもB2C(企業消費者間取り引き)でも、一般の取り引き同様、紐帯関係=ポータルへ転化していくことが重要であり、信用(trust mark)と本人認証、電子決済という3つの要素による信頼関係の確立が必要だとした。

“trust mark”については、NTTコミュニケーションズのウェブ認定保証マークシステムを紹介。本人認証についてはサイバー空間成立の根幹であり、SSL*より強力な演算カードを用いる方式が必要であると主張した。また本人認証では、共同センターとカードを併用したシステムを提案した。

*
SSL:Secure Sockets Layer Netscapeが提唱したセキュリティー機能の付加されたHTTPプロトコルのこと。インターネット上でプライバシーや金銭などに関する情報を、安全にやり取りするために考案された

“ECはコミュニティーと一体”という先駆的女性の視点で

電子決済については、スーパーキャッシュの取り組みを紹介。10万円までという上限額の意図について、1万円では“使っては入れる”という操作が繰り返し必要になり、現金の感覚と異なってくるから、と述べた。

またECでは徹底した“顧客利便性”が新しいビジネスモデルを生むとして、サイトへのスムーズな誘導や認知度向上、徹底したサイトナビゲーション、アフターサービスによる積極的な顧客コンタクトなどが必要であるとした。

そして、“サイバー空間消費者の常識化がEC活性の好循環を生む”、“インターネットの取り込みによるライフスタイルの変化は女性から顕在化する”という2つの仮説を披露、一例としてある園芸関係の個人掲示板を取り上げた。その掲示板は3日で500件あまりの書き込みがあり、書き込みの90パーセントは女性、多くは自らガーデニングのホームページを開設していると紹介した。

遊佐氏は“ECは忙しい人間向き”という守旧派の男性的視点でなく、“ECはコミュニティーと一体”という先駆的女性の従来からの視点で捉えるべきだと主張。これからも新しいライフスタイルとビジネスモデルを提案し続けると結んだ。

地域振興券の予算でECは立ち上がる!

講演終了後、野村総合研究所の経営情報コンサルティング部部長、松野豊氏をコーディネーターに、講演者全員によるパネルディスカッションが行なわれた。

野村総合研究所の経営情報コンサルティング部部帳松野豊氏がコーディネーターとなり、講演者全員が参加してパネルディスカッションが行なわれた
野村総合研究所の経営情報コンサルティング部部帳松野豊氏がコーディネーターとなり、講演者全員が参加してパネルディスカッションが行なわれた



まず電子決済の法整備について、青島氏は「ユーザー保護の観点から各国で最低限のものを定め、通貨に裏打ちされた電子マネー法で連携すべき」と述べた。

“ECで成り立つビジネスモデルは”という問いに、高橋氏はリクルートの現状を報告。ウェブ掲載を安い単価にする情報広告モデルと、旅行関係の手数料ビジネスを紹介。求人系は新卒のほぼ100パーセントが利用しているためプラスであり、ほかは赤だった。しかし、『ISIZE』はこの1年間カスタマー満足度を高めること、利益よりNo1サイトになるという位置付けで展開した。

また、松野氏は日本型ECのキーワードとなる“便利”についての見通しについて質問。これに対し、青島氏は京都市の実験で入金に4パーセントのポイントが付加され“使ってトクする”という例を紹介した。電子マネーは“出掛けたらそこで買う”地域型でもかまわない、これからはニーズとシーズに合ったものを、と提案した。

遊佐氏は、日本では技術と企業は心配ないが“国”の問題があると発言。地域振興券の事務経費でECは立ち上がるという根拠として、ICカードは単価数百円、端末は数万円であると述べた。

高橋氏は魅力的なモールが少ない、リアルと比べて圧倒的に安い店がないと指摘、企業も努力すべきという見解を示した。またコストを考えながらの接続環境が解消されれば利用は増加する、これまであまりなかったC2Cが進むのではないかとの見通しを示した。

「ECの勝ち組となるのは?」という究極の質問に対し、高橋氏が「分かりません」と率直に答えてディスカッションは終了したが、日本が勝ち組に残るためには、これまでにも増して積極的な取り組みが必要なのではないかと感じた。

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