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【INTERVIEW】「なんといってもITプロフェッショナルが必要」--富士通ラーニングメディア研修事業部長の池田稔氏に聞く

2000年02月29日 00時00分更新

文● 編集部 高島茂男

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2月15日、(株)富士通ラーニングメディア研修事業部長の池田稔氏と、研修事業部第1研修部プロジェクト課長の青山昌裕氏に、東京・蒲田の同社にて、IT分野で求められる資格や能力について、話をうかがった。

--富士通ラーニングメディアについて教えてください

池田「富士通ラーニングメディア(以下FLM)は、研修サービスの専門会社として、'94年に富士通(株)から分社、独立した会社です。研修サービスと、ドキュメントサービス、翻訳サービスを3本柱としています。現在、従業員数が約450名、'99年度の売上見込みが約150億円。売上のうち、約65パーセントが研修サービスとなっています」

FLM研修事業部長の池田稔氏FLM研修事業部長の池田稔氏



「FLMには、3つのキーワードがあります。まず、“オープン”であること。オープンシステムとかオープンマインドとかいろいろな意味があります。次に、“グローバル”。これは、常にグローバルな視野でアクティビティーを考えようということです。3つ目が“デジタルメディア”。今の世の中、すべてデジタル化されています。ドキュメンテーションなどもすべてデジタル化。マルチメディアのさまざまなものも含めて、デジタルと言えます」

「グローバルということでは、世界規模で、教育・研修サービスの情報交換とビジネス連携のコンソーシアムを形成しており、それを“KnowledgePool(ナレッジプール)”と呼んでいます」

全ての社員、全ての部門でIT知識が必要

--今、IT(Information Technology:情報技術)の重要性が言われていますが?

「今、アメリカを中心に世界中で言われているのは、“eビジネス”。これは、インターネットを使って、いろいろなビジネスを興そうというものです。すべての企業が、IT武装していかなければいけない。その表現がeビジネスという言葉になっているわけです。これまでもITと無関係だったという企業はあまりないわけですが、これが急激に拡大しています。ITなしに企業の戦略を語れないという時代ですね」

「経営者や情報システム部門は当然のことながら、今まで企業の中ではあまりITとは直接関わってこなかった利用者、エンドユーザーといった人たちも含めて、今ITが必要になっている状況です。例えば、企業の中の企画担当や営業といった人たちもITを前提としていろいろなことを考えないと置いていかれてしまいます。すなわち、企業では、全ての社員、全ての部門でIT知識が必要だと言えます」

--ではITを使ったり、利用したりする時に、必要となる能力や資格とはどのようなものでしょうか?

「ITをビジネスの中でどう活用していくかというときに必要なのは、まずITプロフェッショナルです。情報システムを専門に担当する人は、プロフェッショナルであることが要求されます。プロフェッショナルになるためのいろいろなトレーニングを受ける。そして資格を持つことで仕事がやりやすくなるし、スキルも上がる。プロフェッショナルでは、資格を持つことが1つの目標になっています」

「次に利用する立場はどうかと言いますと、大きく2つありまして、マネジメントする人と実際に使う人があります。マネジメントは、システムを管理する立場の人、情報を管理する人などですね。利用者の立場では、マイクロソフト(株)のMOUS(マイクロソフトオフィスユーザースペシャリスト)などの利用者側の資格が、前提になってきています」

--ベンダーの資格をターゲットにしたコースはどのようなコースを用意していますか?

青山「マイクロソフトで言いますと、認定技術者。Microsoft CTEC(Microsoft Certified Technical Education Center)で実施しているMicrosoft University(MSU)と呼ばれている講座があります。サン・マイクロシステムズ(株)だと、Java言語系の講座ですね。Javaプログラミング1、同2などの講座が一番多く受講されています」

FLM研修事業部第1研修部プロジェクト課長の青山昌裕氏FLM研修事業部第1研修部プロジェクト課長の青山昌裕氏



ベンダーを限定した知識ではなく、幅広い知識が求められる分野も

池田「IT関連の資格が流行といえば、流行ですね。資格という意味で言いますと、今まではベンダー寄りの資格が中心でした。実は去年あたりから、ベンダー寄りではなく、利用者からみて必要な能力はを認定するマルチベンダー型の資格を検討しており、今ちょうど立ち上げ時期なのですが、CIW(Certified Internet Webmaster)というのがあります」

「これは、インターネット構築のいろいろな局面で必要な技術を習得した人を対象して、例えば、1番下位にはファウンデーションレベル、これは1番基礎的で、広く、浅くの世界。その上にウェブサーバーを構築するための技術資格。それからウェブアプリケーションは、インターネット上で動かすコンテンツ、ホームページのデザインや開発などを含めて、いわゆるアプリケーションレベルでの技術。それからネットワーキングは、インターネットを中心とするネットワーク技術を専門に身につける。その中にセキュリティーやファイヤーウォールなども含まれます。最上位にEC、エレクトロニックコマースがあります。これはeビジネスの推進ということで、インターネットを前提にビジネスを考える、一種のコンサルタントの資格です」

「これは技術で言いますと、特定のベンダーだけに依存しません。ですから、ウェブサーバーの構築を考える人は、状況やそのほかのことを加味した上で、Windows NTがいいのか、UNIXがいいのかということも含めて考える、ということです。広い知識が要求されます。こういった資格が最近だんだんと出てきた。逆に言うと、マルチベンダーシステムが前提になってきたとも言えます。もう個別の技術では追いつかないということだと思います」

--企業が求めるのは幅広い知識を持った人になってきたということですか?

池田「そうなってきたということですね。特にeビジネス、いわゆるIT技術を活用してビジネス化しようとすると、個別の技術資格だけでは間に合わないということですね。CIWの資格は、現在準備中で、今年の6月頃からの提供を考えています。それが1つの変化ですね。eビジネスという観点からみても、どうしてもインターネットについて広く知っていないと。NTだけをよく知っているというのでは十分ではありません」

「今までは、どちらかというとベンダー寄りだったのですが。個別のベンダーに基づくのが縦方向の個別技術だとすると、ウェブマスターはベンダー横断的な横糸になります」

教育研修は、先を読んでやっていかなければいけない

--OSで言いますと、最近Linuxに注目が集まっていますが、FLMではどのようなコースがありますか?

青山「Linuxは、導入と運用管理関連のコースの受講が1番多いですね。最終的にインターネットサーバーを立ち上げることを目的としている方が多く、最終的にはそこへ進まれます」

「受講されている方は、多分今までUNIXをほとんど使ったことがない方も多いです。ある程度UNIXをわかった方がLinuxをやられるのかなと思って、我々も(講座を)提供していましたが、完全にそういうわけでもなく、たぶんWindows NTは使ってたのかなという感じです」

「我々は、集客の状況を見ていると、その製品の売れ行きが大体わかるんです。やはり売れてる製品は、集客力もいいですし、問い合わせも多いです。Linuxの申し込みはけっこうよかったんですよ。ただ、本当に使ってるかというと、受講された方々の様子を見ていると、ちょっと試しにどんなものか見てみよう、受けてみましたって感じですね。だから、実際に戻ってすぐ使いたいというわけではなく、検討してみようという感じですね」

池田「Linuxの動きで言いますと、今年になって富士通がLinuxを提供すると宣言しまして、米カルデラ・システムズ社と提携し、本格的に対応するということを決めました。他のベンダーもこういった動きをすると思いますので、これから本格化するのかなという感じですね」

--最近、日本の省庁のウェブサイトが攻撃されたり、アメリカでも大手ドットコム企業のウェブサイトが攻撃されたりしていますが、セキュリティー分野はどうですか?

青山「Windows NTやLinuxのシステム不正アクセス対策などがあります。FLMは、急にやり始めたわけではなく、セキュリティーは重要だと思っていて、講座もかなりの数を用意しています」

「教育研修というのは、早めに仕込み、先を読んで、やっていかないとダメなんです。そういう意味では元々、セキュリティー関係というのは力を入れている分野なのです。インターネットが騒がれだしてからずっとです。今でもかなりの講座数があるほうなのですが、今後さらにもう一段レベルを上げた上級講座の用意を検討しています」

--生涯能力開発給付金制度や、教育訓練給付金制度の活用状況はいかがでしょうか?

青山「けっこう利用されています。FLMは、半期で約3万名の受講者がいらっしゃるのですが、そのうち約4000名が利用されています。IT関連のトレーニングには受講料が高いものもありますので、どんどん活用してください」

研修だけで終わらないサービスを提供

--今後、こういったコースを作ろうとか、力を入れていこうという分野はありますか?

池田「今年から大きくPRを始めたものに“i-Learning(アイ・ラーニング)”というものがあります。元々、教室で行なっているのは、独自にいろいろ開発したものを講習会として提供する“研修実施”。それが基本で、その前にお客さまのニーズに合わせて、“研修計画”を作成し、“研修開発”して、実施するというサイクルがありました」

「今回、“スキル評価”と“業務支援”をそれに加えました。なぜかと言いますと、今、いろいろな企業がeビジネスの立ち上げ、あるいは検討や企画で悩んでいらっしゃる。そのときに、まず問題になるのは、それを担当する人がいるのかという話なのです。そうすると、どうしても、今の時点では少ないのですね。だとしたら、育成しないといけない。あるいは社内で知ってる人がいたら、その人を使う。いろいろな方法はありますが、今は、全社的にITスキルがどうなのかという点をチェックしなければいけない。そこが人材育成の始点かと思います」

「そういったニーズは、ここ2、3年で急に大きくなっています。テストではないのですが、スキルのチェックシートというのを書いてもらいます。これは全てウェブ上で実施します。それを元に、この人はどういうスキルがあるのかを5段階で診断します。その結果をデータベースにして、だれがどんな分野に強いというのがある程度わかる状態にします。その上で、企業として、今後どういう方向で行くのか、戦略方針を立てます。そうすると、今後どういうスキルを強化しないといけないかがわかるわけです。それを元にどういう人材育成をしていけばよいのか、研修計画を立てます。場合によってはコースを開発する。そして実施する」

「一応、トレーニングという意味でこれで完結するわけですが、ITを本格的に活用しようとすると、どうしても実際の業務で使えないといけないわけです。“勉強した”だけで終わってはいけない。業務に実際に使うときにどうすればいいのか、というところまで支援する必要がでてきた。業務を実際に遂行するために必要なものを用意するというような部分が、業務支援に含まれます。こうしたことを前面に出して、5つのサービスを提供するわけです」

「スタート地点は小さくてもよいのです。まず、スキル評価をして、プランニングして、研修開発、実施、業務支援と1回転する。これは、1回りして終わるものではないのです。スパイラル的にだんだんと上昇しないといけないんですね。だから、半年とか1年ごとに見直しをしながら、継続していくことで、全体的に向上していくという仕組みになっています」

「IT技術を重視している企業は、当然のこととして、元々実行しています。ただ、まだこういうところまでは気が付いていない企業もけっこう多いのも事実です。今年から本格的に提供を始めたのですが、20社近くの企業で採用されています。ただ最初は(イメージが)わからないので、何百人という会社で一斉に実施するというのは難しく、まず例えば50人でトライしてみようという段階なんですけど。それがよければ、全社的に広げるといった感じですね」

--具体的にどういった企業が採用されたのでしょうか?

池田「今のところ、1番多いのはソフトベンダーです。やはり、システム開発や設計、ITそのものをビジネスにしている会社がまず多いんです。それから、一般の企業の中の、システム部門というところですね。現在、どちらかというと、FLMが提供しているのはITプロフェッショナルのスキル診断が前提なのですが、今後それを、これからスキルを強化しようという初心者レベルのものや、利用者用のメニューを広げていきます。営業要員向けに、営業スキルの診断というのもあります」

--サイクルの全てがインターネットで行なえるということですね?

池田「現時点では全てがインターネットでできるというわけではありませんが。それぞれ(のサービス)がインターネットでできるようになっています。例えば、この中のオンラインラーニングはまだ10パーセント程度です。今後、全体をインターネットで提供できるように準備しています」

--最後に、一言お願いします

池田「これからは、なんといってもITプロフェッショナルが非常に重要です。全体的に不足していると思うのですが、特に不足しているのは、ネットワーク技術者。それに、システム全体が複雑化してくるとプロジェクトマネジャーが必要です。ITのプロはニーズが高いので、ぜひトライしてもらいたいと思います」

--ありがとうございました

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