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【福冨通信特約】ヘディ・ラマールの死--ヌード女優と無線技術

2000年01月21日 00時00分更新

文● 福冨忠和

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女優のヘディ・ラマールの死去に際して、ライターの福冨忠和氏が自分のメールマガジンに掲載した内容を、著者の許諾を得て、転載する。用字用語は本文のまま(敬称略)。

ヘディ・ラマールの訃報

女優のヘディ・ラマールの訃報が新聞に載っていました。

ヘディ・ラマールについては、インターネットアスキー「ネットワークの狭間で」、朝日新聞「デジタルワールド」、週刊アスキー「でじ式」に、時期を前後して書いたので、読んだ方もいるかと思いますが、デジタル関係者としては、映画では世界最初の全裸ヌードを披露した「肉体派女優」の死ということで済ますわけにはいかないと考えています。

ヘディ・キースラーの名でチェコ映画「エクスタシー(邦題・春の調べ)」に出演して有名となったこの人は、その後オーストリアの軍事産業家、フリッツ・マンデルと結婚。アルプスの巨大な屋敷に住みながら、実際は夫の仕事に関与し、機関銃のメカニズムなどの開発にも関係しています。夫がナチスに協力しはじめたあたりで離婚し、米国へ亡命(彼女の実家はオーストリアのユダヤ系銀行家)。ハリウッド女優として「サムソンとデリラ」などに出演します。

同じ時期に、20年代にエルンスト・ブロッホに師事した米国人作曲家ジョージ・アンセルもパリから帰国し、映画業界のパーティで2人は出会います。アンセル(またはアンタイル)は、パリの芸術運動の中で、バレーメカニークという未来派のようなテクノロジーを組み合わせた舞踊と音楽のスタイルを創始した人です。

この2人はパーティで出会い、2人をヨーロッパから追い出したドイツに報復することで、意気投合したようです。ラマールから出たといわれている「盗聴できない無線技術」を開発することになります。この技術は篤志的に開発されたこと、また軍事技術であったことから、実際にどれだけ利用されたかはわかりません。

ラマールは当時最先端のチェコの実験的映画に登場したような女優ですから、肉体派というより個性派と読んだほうがいいような人だったと思いますが、ハリウッドでは、汚れ役ばかりでした。60歳すぎくらいに出たテレビ映画以降、映画には出ていないようです。その後、万引き事件によって、新聞をにぎわしたことがありました。

ところで、1997年、EFF(電子フロンティア財団)は、このラマールと故人となっていたアンセルにフロンティアアワードを授与しています。彼らの開発した『スペクトラム拡散無線』技術の、長らく曖昧なままとなっていた特許権が彼らにあることが認められたことや、NSFがコロラドで、この技術を使ったインターネット接続実験を行って成功したことなども背景にあります。現在、携帯電話などで、CDMAという名で呼ばれている技術は、このスペクトラム拡散方式の一つです。

このアワード授賞式にもラマールは出席していませんが、健在であることだけは確認されていました。

ラマールには伝記が一冊あるようですが、本人の希望により絶版になっているそうです。アンセルの自著がこの開発の件にわずかに触れています。

今日の朝日新聞の訃報欄は、こう伝えています。

「19日、米フロリダ州キャッスルベリーの自宅で死亡していたのが見つかった。地元保安官事務所によると、一人暮らしで、病死と見られる。86歳。」

訃報の文末にはこうあります。「 「カスバの恋」「サムソンとデリラ」などで、ハリウッドの肉体派女優として人気を集めた。」

合掌。

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