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【京都合宿セミナー Vol.3】eBayの副社長が名うての論客たちと白熱戦――“情報革命の衝撃:台頭する21世紀型ベンチャーとNPO”パネルディスカッションより

1999年12月13日 00時00分更新

文● 野々下裕子 

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NPO研究フォーラム、関西ベンチャービジネス研究会、日本サスティナブルコミュニティセンターという3つの団体の共催により、京都の本願寺で開かれた合宿セミナー“情報革命の衝撃:台頭する21世紀型ベンチャーとNPO”。本稿では、3日、京都を舞台に開催された第1部の模様を引き続き報告する。

ベンチャービジネスの事情報告のあと、7名のパネリストを迎えてのパネルディスカッションが行なわれた。

パネルディスカッションのパネリストの面々
パネルディスカッションのパネリストの面々



パネルディスカッションの進行を務めるのは実行委員長の新川教授
パネルディスカッションの進行を務めるのは実行委員長の新川教授



eBayは、ファシリエイターとしてオークションシステムを貸して成功

まず、最初にシリコンバレー在住でeBay副社長の大橋進氏が、eBayの事業紹介とこれからの展開を紹介した。

eBay副社長の大橋氏からはeBayの紹介ビデオや来年の1月にスタートする日本語版サイトなどが紹介された
eBay副社長の大橋氏からはeBayの紹介ビデオや来年の1月にスタートする日本語版サイトなどが紹介された



eBayはご存知のとおり世界最大級のオークションサイトである。オークションサイトは以前からあった。しかし、大橋氏はeBayと他のオークションサイトを比べ、「対象を個人に拡げ、ファシリエイターとしてオークションシステムを貸すという方法を最初に成し遂げたことが、eBayの成功につながった」と分析。しかもeBayにはアマゾンコムのように、物理的な限界もない。

さらに、「eBayを支えているのはeBayを使って成功した人々なのです。人々の時間の使い方とモノの買い方が変わり、そこから新たな市場が生まれました。eBayはインターネットだからこそ生まれた特殊な市場で、こうしたビジネスはこれからも登場してくるだろう」と予測。

日本でも似たようなサイトが数多く登場しているが、いよいよeBayが来年の1月中旬から日本語サイト“eBay.co.jp”をスタートさせる。これが、日本にもさらにeビジネスの可能性が拡がるのか、注目されるところだ。

アントレプレナー自身が主役となり、注目されるマイクロビジネスが本来のベンチャー

続いて、通産省サービス産業課課長の加藤敏春氏が、“創業の条件、マイクロビジネスの時代”というタイトルで、マイクロビジネスのあり方を紹介するとともに、最近のベンチャー論の盛り上がりについて、厳しくコメントした。

通産省の加藤敏晴氏からは、マイクロビジネスをはじめエコマネーの紹介もあった通産省の加藤敏晴氏からは、マイクロビジネスをはじめエコマネーの紹介もあった



自らも第3次ベンチャーブームと言われる現状の火付け役であるだけに、その危うさを感じはじめているという。日本では、ベンチャーという企業形式にばかりこだわり、経営品質よりも目先の利益ばかりが評価される。「アントレプレナー自身が主役となり、注目されるマイクロビジネスこそが本来のベンチャーであり、新しい市場を生み出すのだ」と加藤氏は語る。

アメリカでは、大企業でもアントレプレナーを主役としたマイクロビジネ化が進んでいる。その中でも健康、安全、教育、環境、文化という5つのパラダイムが注目されているという。また、成功を評価する新しいシステムも必要であるとし、加藤氏はその例として、エコマネーのような新しい貨幣価値なども提案した。

「一方で本来の意味でのNPOの創業が始まっている。つまり、もともと街という形のカンパニーが生まれ、それが協会=アソシエーツになり、州=ステーツへと発展したのが政治の仕組みである。NPOと企業は遠い関係のようにあるが、本来はNPOこそが創業の源にあるのです」。

コラボレーションには分配のルールが必要。NPOでも働いたものに報酬

こうした加藤氏の話を受けて、慶應義塾大学大学院の國領二郎助教授は“NPOとnon-NPOとのコラボレーション”と題して講話。

慶應大学大学院の國領二郎助教授はNPOをテーマにしつつ、日本のネットワークインフラにまで厳しいコメントを寄せていた慶應大学大学院の國領二郎助教授はNPOをテーマにしつつ、日本のネットワークインフラにまで厳しいコメントを寄せていた



「モノを中心としたビジネスの形は19世紀から変化していなかったが、最近になってようやくモノ経済とはまったく異質な情報経済が生まれてきた。情報経済はシェアできて、なおかつ相手に渡しても減らない。意味のあるマッチングがさらに大きな価値を生み出すこともある。それを支えているのがネットワークであり、単独でできないことを協働していくことが大切だ」と國領氏は語る。

「ただし、コラボレーションには分配のルールが必要だし、モノだけでも情報だけでも人は生きていけない。会社の上場は利潤ばかりを追い求めているように錯覚するが、社会的にも公共な立場になるという意味なのである。また、そうした会社のビジョンが社会にも影響を与え、この企業の商品なら買う=出資するという共生感覚が生まれ、事業の成功にもつながるのだ」

「その際、創業者はリスクを負うのでそれに対する報酬は受けてもいい。それはNPOでも同じで、働いたものに報酬が支払われるのは当然である。日本では、どうしてもNPOやボランティアに対し、無報酬でなければいけないという観念があるようだが、それでは本当の意味での社会貢献はできない」

このような社会の認識が変わらなければならない時期にあって、むしろ懸念されるのは、インターネットバブルによるキャピタリストの暴走であると國領氏は言う。「一晩でミリオネアーが生まれるのはやはり異常だし、その反動は必ずやってくる。株式制度の見直しはとても大切なように感じる」

本来は企業もNPOも社会貢献するという立場は同じ。それをどういうバランスをとって、どういう形で還元していくかという話は、今回のテーマである21世紀型ベンチャーとNPOにもつながり、パネルディスカッションも後半になるほど、どんどん話が盛り上っていった。

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