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“ギガビットネットワーク・シンポジウム'99”--ギガビットクラスネットワークで未来はこう変わる

1999年11月26日 00時00分更新

文● 編集部 佐々木千之/高島茂男

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通信・放送機構(TAO:Telecommunication Advancement Organization of Japan)主催の“ギガビットネットワーク・シンポジウム'99”が26日、東京・麻布の郵政省飯倉分館において開催された。

東京大学工学部教授・東京大学情報基盤センター長の齋藤忠夫氏による“21世紀に向けた次世代超高速ネットワークについて”と題した基調講演と、東京大学大学院工学系研究科の青山友紀教授が司会するパネルディスカッションが行なわれた。

同機構は、情報通信分野の研究開発や通信・放送事業に関する各種支援などを行なう郵政省の認可法人。このシンポジウムの主役である“研究開発用ギガビットネットワーク(JGN:Japan Gigabit Network)”は、次世代ネットワークやそれに関連するアプリケーション技術などの研究開発するための施設と、ギガビット/秒クラスの超高速光通信網を、平成11年('99年)4月から平成15年(2003年)までの間、官・学・民に無償で開放している。

今回、その施設があるつくば、けいはんな、北九州の3つの情報通信研究支援センターと大阪大学の4ヵ所と飯倉分館が高速のデジタル回線で結ばれ、デジタルビデオでリアルタイムに映像配信が行なわれた。

冒頭、挨拶に立った郵政統括政務次官の小坂憲次氏は、「(情報通信産業は)21世紀のわが国のリーディング産業である」と情報通信産業への期待を述べた。また、ギガビットネットワークの発展には、産・学・官の一体となった取り組みが必要であるという認識を示した。

郵政統括政務次官の小坂憲次氏
郵政統括政務次官の小坂憲次氏



基調講演を行なった東京大学工学部教授・東京大学情報基盤センター長の齋藤忠夫氏は、アメリカと日本のネットワークインフラに対する取り組みの違いについてふれ、「アメリカは政府の強いイニシアチブの元、社会経済が自らを改革した。日本の国家の戦略ははなはだ頼りない」と不満を漏らした。

また、「すべての小学校にインターネットを!」と公約して選挙に当選できる国ではないとも述べ、「(アメリカのように)強い国家プロジェクトにするには、まず国民を教育し、知らせることが必要である」と語った。

東京大学情報基盤センター長の齋藤忠夫氏
東京大学情報基盤センター長の齋藤忠夫氏



ネットワークの将来については、「(JGNで行なわれているネットワークの研究は)21世紀に日本が発展していくための基幹となる技術である」、「(こういったネットワークが普及することで)日本が繁栄しみんなが幸せになるということを理解してもらいながら、研究を進めていきたい」と述べた。

また、この30年間のトランジスターやコンピューターなどのコストパフォーマンスの改善具合を例にあげ、「ほかをみて、3桁(10の3乗)とか進歩してもおかしくない。」と明るい展望も示し、ネットワークの進歩が我々全体の幸せに結び付くと締め括った。

次に、“ギガビットネットワークの可能性を探る”と題するパネルディスカッションが、東京大学大学院工学系研究科の青山友紀教授を司会に行なわれた。

東京大学大学院工学系研究科の青山友紀教授
東京大学大学院工学系研究科の青山友紀教授



パネラーには、坂本龍一氏のオペラ“LIFE”の実験にも参加した東京大学情報基盤センターの江崎浩助教授、東京からの遠隔授業実験を行なった大阪大学の下條真司教授、遠隔医療研究の香川医科大学医学部情報ネットワーク管理室副室長の真鍋芳樹氏の3氏が大学の研究者として参加した。

左から江崎氏、中川氏、真鍋氏、林野氏
左から江崎氏、中川氏、真鍋氏、林野氏



また、自治体から山梨県企画県民局情報政策課長の林野旻氏、企業からは大日本印刷(株)C&I総合企画開発本部技術主幹の久保田靖夫氏、官からは郵政省通信総合研究所第1研究チームリーダーの中川晋一氏が参加した。

順に、それぞれ各氏がJGNを利用しながら行なっている研究について、スライドを使い解説が行なわれた。そこから、次世代ネットワークには、その太い帯域を利用して、遠隔地から授業や診察を行なったり、デジタルビデオの配信、すなわち動画の伝送が期待されていることがわかった。

また、いろいろな地域に開放してほしいという要望についてTAOは、いまある所の施設をまず活用してほしい旨を説明し、国の補正予算額次第で新たな地域について検討すると述べた。

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