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『アート・オン・ザ・ネット 1999』――複製技術時代の芸術展 ネットで美術鑑賞はいかが?

1999年11月17日 00時00分更新

文● 小倉一平

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インターネット上のアート作品を以前から積極的に扱ってきたことで知られる町田市立国際版画美術館(MCMOGATK)で、11月より“アート・オン・ザ・ネット”展が開催されている。展覧会は今回で5回目を迎える。25ヵ国から寄せられた100点余りの応募作品の中から選ばれた、18点の受賞作品/優秀作品がネット上に展示されている。

審査員はインゴ・ギュンター氏(メディアアーティスト)、オルガ・シシュコ氏(批評家、キュレーター)、粉川哲夫氏(メディア批評家)、鈴木志郎康氏(詩人、映像作家)、バーニー・ローウェル氏(VR界の草分け的存在)の5人。各氏の受賞作品に対する講評もネット上で公開されている。

最高賞として大賞が設けられていたのだが、残念なことに該当作なしとの結果に終わった。以下、1つひとつの作品について紹介していく。

銀賞受賞★David Crawford氏の作品★

Macromedia Flashを効果的に用いたインタラクティブムービー作品。

道路標識の人間のサインや、'80年代のテレビゲームを彷彿とさせるアイコンといったものをモチーフにしたムービーが、マウスの操作に従い展開していく。モダンで簡素なデザインと、コミカルさ、かわいらしさ、遊び心が同居している。言い換えれば、洗練されていながら、親しみやすさも併せ持った作品である。

(C)David Crawford
(C)David Crawford


http://www.lightofspeed.com/bots.html

銅賞受賞★Arcangel Constantini氏の作品★

JavaScriptを用いた、これまたインタラクティブムービー作品。

渋味のある色調でデザインされたサイトとは裏腹に、スクリプトの方は非常に軽快な動作を見せた。高速にスクロールする画像、次々と開き動きまくるウインドーに圧倒された。皆が同じプラットフォームに立ってしまう感じのあるウェブの現状を、切り開いて行かんばかりの、勢いのある作品に仕上がっている。

(C)Arcangel Constantini(C)Arcangel Constantini


http://art.by.arena.ne.jp/mcmogatk/1999/constantini/mua.htm

銅賞受賞★Dan McCormack氏の作品“BODYSCAN”★

前出のモダンで無機的な2作品とは対照的な肉体派作品。

ガラスに押し付けられた裸身を写した写真を回覧していく、デジタルフォトギャラリーといでも言おうか。手法は極めてオーソドックスであり、それだけに、さすがに写真そのものの品質は高く、美しい。作家の、皮膚や肉の質感へのこだわりが感じられると同時に、押し付けられ変形した肉から表出するイメージが、生と死の境目を揺らぐさまが面白い。ウェブ上での表現という観点からするとやや説得力に欠けるが、見ごたえはあった。

(C)Dan McCormack(C)Dan McCormack


http://art.by.arena.ne.jp/mcmogatk/1999/mccormack/DanMcC.html

このほかに優秀作品として15作品が選出されていた。その中から面白かったものを以下に取り上げる。

★Funny Garbage氏の作品★

http://www.willing-to-try.com/

円と線が揺れ動き交錯しあうシンプルなMacromedia ShockWaveアニメーションで幕を開ける。逆にそのシンプルさゆえに様々な形に見える。そんな形遊びがあり、その後は文字遊びが始まる。子どもも大人も楽しめる作品であった。

★Keisuke Chiba氏の作品★

http://art.by.arena.ne.jp/mcmogatk/1999/k_chiba/index.htm

Macromedia ShockWaveを使った作品。ムービー上に隠された仕掛けを探り出していくタイプの作品で、非常に洗練された明るい色調のグラフィックスが印象的で、それがマウスを握る手にも独特の操作感を与えているようであった。

★Neil Zusman氏の作品★

http://www.turbulence.org/Works/mouse.dance/index1.html

まず登場人物の躍るねずみ男のユーモラスなイメージに魅了された。手に持ったマウスと画像の一体感が心地よく感じられるような、レスポンスの良さを持った作品であった。

展覧会を見終えて1つ気になったことは、大賞該当作なしということだ。ネット上での表現行為は過渡期にあるだけなのか、飽和しているのか、いずれにしても時間が結果を出すだろう。しかし、こうして作品に触れている現在、確かに何かが欠けているような、力強さがないような、ジレンマを感じることは否めない。表現するために必要とされてきた技術が進歩し、今度は逆に新たな表現を生み出しうるのだろうか。

この展覧会は2000年3月31日まで開催されている。気軽に見に行けるのがネットのいいところ。あなたも一度アクセスしみては?

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