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SEYBOLD Seminers Tokyo/Publishing 99 Vol.3】遠隔地出力のフォーマットはどうなる?

1999年11月12日 00時00分更新

文● 山木大志

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デジタル送稿の問題点


9日から幕張メッセで開催されている“SEYBOLD Seminers Tokyo/Publishing 99”のカンファレンスから“デジタル入稿の本命”をお伝えする。タイトルからは少し分かりにくいが、要するに遠隔地への印刷データの入稿方式をテーマとしたものだ。

現在の一般的な印刷工程では、印刷データをDTP処理し、そのデータを製版処理、印刷ができる場所に移送する。従来は、こうしたフロントエンドでの作業は版下やアナログ写真など、モノを伴うために一般的な運送手段を使うしかなかった。しかし、現在では多くのデータがデジタル化しており、また、インターネットの普及によって通信により移送することも可能になっている。

とはいえ、まさに“可能になっている”だけであって、現実には遠隔地への移送の大部分は、MOなどの可搬型メディアによって行なわれている。これはプリプレスデータが巨大であること、プリプレス関係企業の通信インフラが、一般的にはかなり貧弱であるためだ。

しかし、通信インフラもここ1、2年の間に急速に整備されつつあり、より大きな問題点として浮上してきたのが入稿用のフォーマットである。これには2つの側面がある。1つは、入稿先での安定した出力をいかに実現するかであり、それが入稿方法/フォーマットの問題である。もう1つは、遠隔地の色校正紙がない状態でどのように制作者側の期待する色を確認するか、つまりカラーマネジメントの問題である。“デジタル入稿の本命”では、この2つについてそれぞれ具体例を紹介した。

新聞広告にラスターデータを利用

フォーマットの問題に関しては、電通テックの小野裕二氏がレポートした。電通テックは、広告代理店、電通の関連企業で、映像、印刷などの制作を主な業務とする企業である。同社では、最近、新聞社との間で電子送稿を試みている。

電通テックの小野氏。ADF(Advertising Distribution Format)を推進している
電通テックの小野氏。ADF(Advertising Distribution Format)を推進している



新聞、雑誌の広告欄への入稿は、現在でもアナログ版下、フィルムが主流である。これは、出稿社(広告主)と媒体社(新聞社、雑誌社)、双方に事情がある。出稿者は自分たちの要求が最大限に満たされることを希望する。ときとして出力エラーや色の変化などを伴う、デジタル工程を避けたいのである。新聞社などは、入稿されたデータが間違いなく出力されることを望む。出力エラーが制作の遅滞を招くのはいずれの媒体でも同様だが、日刊で発行する新聞社にとっては、ことにそれが深刻である。

このため現在の工程では、広告代理店は媒体ごとに広告データを作らなければならない。媒体ごとに版サイズなどの印刷条件が異なるからである。「これをデジタル化できれば、広告代理店側の制作上の負担は大きく軽減する」(小野氏)。デジタル化のためには、広告代理店側と新聞社側で制作システムを同一にすることが必要だが、「新聞社側はこれに積極的ではない」(同氏)。

そのため電通テックが、今回の試行で使っているのは『ADF(Advertising Distribution Format)』というフォーマットである。これは、ファイルフォーマットはDTPなどで使われるEPSであるが、中身はすべてラスター(ビットマップ)データである。ラスターデータは、デジタル制作工程では、いずれのシステムでも最終出力直前の形式であり、出力エラーが最も起こりにくい。

電通テックでは、フォーマットを定めるとともに、遠隔地でのデータのやり取りをするための環境整備も開発している。『AD Scheduler』は、制作の進行を管理するソフトで、ウェブ上で制作側、出稿側が同じ内容を確認できる。『AD Check』はPDF上で校正するためのツールである。さらに校正データはAD Serverというウェブサーバーに置かれ、関係者が随時閲覧できるようになっている。

CTP遠隔地出力のために

もう1つの事例は、最近MdNから刊行された雑誌『effects』の制作に関して、同社の猪股裕一氏がレポートしたものである。『effects』は、全ページをCTP(Computer to Plate)で出力していることで話題になっている。


MdNの猪股氏。雑誌『effects』は業界で初めてフルCTPで出力

『effects』の制作は、MdNが東京市谷、デザインが東京渋谷、印刷が岐阜市と分散している。現状では、『QuarkXPress』などの入稿データは、MOなどで物理的に搬送している。緊急の場合のみ、FTP転送を利用する。「ネットワーク転送を基本としたいのだが、関係する会社に十分な環境がない」(猪股氏)ということで、現状は物理的な搬送に頼らざるを得ないようだ。

校正、色見本に関しては、MdN内のカラー調整されたA-Color(カラープリンター)での出力を利用しており、これを出力先の岐阜に送って、印刷の色を調整している。この方法で現状では「特にトラブルは起こっていない」(猪股氏)とのことだ。しかし、より厳密なカラーマネージメントを行うべく、「各種のプリンターで出力実験を行い、遠隔地校正を試みている」(同氏)という。

遠隔地での印刷は、大幅なコスト削減が望める場合にのみ、部分的に行なわれてきたに過ぎない。しかし、ネットワークや校正手段の多様化、出力の安定化などの技術的に進歩が、より利用しやすい方法となってきた。これまで顧客の多い大都市とその周辺にしか立地できなかったことによって、既存の大手印刷会社はそのメリットを得てきた。しかし、どこで刷ってもコストはほとんど同じ、ということになれば、大手印刷会社による独占的な状態も危ういものとなってきたと言える。

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