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“デジタルルネサンス~人に優しいデジタル社会”――機械から人へのシフトが起こる(前編)

1999年11月04日 00時00分更新

文● 編集部 井上猛雄

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4日、港区のTEPIAにおいて、(財)機械産業記念事業財団は、国際シンポジウム“デジタルルネサンス~人に優しいデジタル社会”を開催した。このシンポジウムは、同財団が主催する“暮らしのデジタルインパクト展”の1つとして併催したもの。なお、本展示会は来年の3月24日まで開催される。

開催に先立ち、主催者である同財団常務理事の林俊太氏から、「デジタルがもたらす変化は、個人の生活にも大きな変化をもたらす。このシンポジウムの狙いは、人に優しいコンピューターの技術を明らかにするもの」と、あいさつがあった。続いて、来賓の通産省機械情報産業局電気通信課長、岩田悟志氏は、「子供や女性が使えるような使い勝手の良い技術が必要であり、それは家電から生まれる」と、本イベントの意義を述べた。

機械産業記念事業財団常務理事の林俊太氏機械産業記念事業財団常務理事の林俊太氏



通産省機械情報産業局電気通信課長の岩田悟志氏通産省機械情報産業局電気通信課長の岩田悟志氏



はじめの基調講演のテーマは“人に優しい、人とコンピューターの関係の構築に向けて”。スタンフォード大学コンピューターサイエンス学科教授のテリー・ウィノグラッド氏が登壇した。この模様はテレビ会議システムをで、現地とTepia会場を結んで生中継で放映された。

電気的な情報から感情を調べ、コンピューターへフィードバック

テリー・ウィノグラッド氏は、主に“コンピューターとの対話”について研究をしており、人とコンピューターとの対話から、社会の変革について考察している。生活の中にデジタル技術がどう入り込んでくるのか? それに対し、我々はどのように対応していくのか? という方向性を問題点として挙げた。

ウィノグラッド氏は、生活の中に入り込んでくるコンピューター技術の1つとして、人間の活動とコンピューターとを一体化するる“モバイルコンピューティング”と、“ウェアラブルコンピューティング”について説明した。

その1例として、スタンフォード大学のプロジェクト“InteractiveWorkspaces”などを挙げた。壁にあるディスプレーで情報を映し出す“対話型の壁画”によって、人間の作業スペースが広がっていく。スペースをどのように活用していくかが重要になる。オフィスの未来は、1つしかメディアを使っていなかった現状から一変する。

「体のいろいろな部分にセンサーを付け、自然な状況下でコンピューターを使えるようになるでしょう。たとえば、両手を使って操作し、マップ、ペン、マイクなど、いろいろなモードで情報を入力する“マルチモーダルインタラクション”が現われている。センシングのパラメーターには、位置(自分がどこにいるのか)、表情、心拍数など、いろいろな情報を入力し、それらを統合することで、確率性に基づいた予想が行なえるようになる。血圧計、皮膚の電気的な情報から感情を調べ、コンピューターへフィードバックしながら、状況を判断して分析できるような形に変わり、機械中心から人へのシフトが起こる」と、予想した。

スタンフォード大学コンピューターサイエンス学科教授のテリー・ウィノグラッド氏
スタンフォード大学コンピューターサイエンス学科教授のテリー・ウィノグラッド氏



人が1番。人と人の結びつきを考える

もともとのインターフェースは、離れている人を結ぶために作られたもの。インターネットの普及によって、コンピューターへ単にログインすることではなく、“人と人との結びつき”が重要になってきた。かつて、ダグラス・エンゲルバート氏が提唱していた共同作業性である。

最後に、ウィノグラッド氏は“人に優しい、人とコンピューターの関係の構築に向けて”、今後どのようになっていくか、何がなされるべきか? を考えることで視点が変わってくると説明した。

「インターネットについても、文化、社会的観念などによって見方が変わる。世界中が共通の考え方を持っていなければならないということはない。たとえば、イランでは文化が変わってしまうという理由で、インターネットは禁止されている。現在、インターネットは利益主導のものになっているが、教育や高齢者へのアクセスなどは経済性を追求しているわけではない。技術は感情も生み出すが、やはり人を1番に置くべき。現実の世界と仮想の世界を切り分けて考えることが重要」と述べ、講演を終えた。

会場の模様。日本とアメリカの会場を結び、双方向に質疑応答も行なわれた
会場の模様。日本とアメリカの会場を結び、双方向に質疑応答も行なわれた



引き続き、MTVネットワーク・アジア社長のフランク・ブラウン氏が、“デジタルシーンが生活に与える影響について”というテーマで講演を行なった。

インターネットとTVとの収斂(じゅうれん)が起こる時代

ブラウン氏は、「技術の革新は、消費者の需要が大きく影響している。大きな需要によって革新が訪れる。そして、この需要を支えるのは35才以下の年齢層。アジア地域にはこうした需要人口が20億人ほどある。やがて“デジタルルネッサンス”が起こり、すべての産業、業界、家庭にも波及するだろう」と述べた。

MTVネットワーク・アジア社長のフランク・ブラウン氏
MTVネットワーク・アジア社長のフランク・ブラウン氏



こうした変化の中でTV業界はどのように変わってきたのだろうか? この点について、「TV業界における変化は、すべての人々に映像が配信された地上放送の時代から、特定の誰かに対して配信する有線放送の時代になり、さらに現在はインターネットにより細分化されたサービスがたくさん生まれている」と説明。

「サービスは多岐にわたっている。たとえば音楽などの趣味の分野で言えば、特定の音楽ビデオクリップをセレクトしたり、データ放送で情報を集められるようになった。また、インターネットにより自分のラジオ局さえ持てるようになった。レコードストアも新しく変わり始めた。音楽プロバイダーと消費者が直接結ばれ、小売が締め出されている。インターネットでは、圧縮技術が重要となり、MTV世代がインターネット世代になるだろう」と予測した。

“revolution”ではなく“E-volution”

今後の変化と方向性については、「経済の発展にともなって近代的な価値観が現われた。アジアと西欧の若い世代の考えかたが収斂する方向に向かっている。若い世代は、新しい情報と伝統的な価値観の両方を受け付けるようになった。インターネットも同様であり、TVとの収斂が起こる。TVにもインターネットにも電話にも、ファックスにもなり、あらゆる通信手段のツールができるような環境が生み出されるだろう。やがて、それらはすべての年齢層にも使えるものとなる」と述べた。

また一方で、「新しい技術がたくさんの人に使えるようにならないと技術は広がらない。そうなると、消費者の調査――すなわち効率的なマーケティングが必要になってくる。インターネット上での広告は、ここ5年で10~30倍ぐらいになると予測されている。これがどう実現されていくか? というと、皮肉なことにテレビからだろう」と、古いメディアであるテレビがインターネットに与える影響についても示唆した。

最後に氏は、「確実なことは、デジタルルネッサンスでグローバルな社会ができるということ。しかし、これは“進化の過程”であって“革命”ではない。狭い地域だけを限定的に見るのではなく、国際的な視野で将来を見据える必要がある」と締めくくった

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