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【第2回乗鞍高原会議 Vol.3】東京の新しい地域コミュニティー“荒川コミュニテーネットワーク”――吉村伸氏の基調講演より

1999年11月02日 00時00分更新

文● 編集部 井上猛雄

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27日と28日の両日、長野県南安曇郡の安曇村観光協会において催された“第2回乗鞍高原会。安曇村は、地域イントラネットの足まわりに日本で初めて無線LANを導入、地域コミュニティーの新しいモデルとして大きな成果をあげ注目を浴びている。本稿では目玉の基調講演について報告する。

基調講演は、メディアエクスチェンジ(株)の吉村伸氏が登壇した。吉村氏は、日本初のプロバイダーIIJにおいて、創世記からプロバイダー事業に関わり、その後メディアエクスチェンジの代表取締役社長に就任した。現在は、東京の地域型ネットワークプロジェクト『荒川コミュニテーネットワーク』を推進している。“地域コミュニティーにおけるインターネット”と題する講演では、この新しいコミュニテーネットワークの概要などについて説明した。

光ファイバーとCATVの2本立てで、荒川流域にコミュニティーを

「官民主導のプロジェクトは、すでに各地で行なわれているが、東京でも3年ほど前から大掛かりなプロジェクト“荒川コミュニティーネット”を推進することになった。2市7区がまたがる河口までの両岸を折り返した60kmの範囲は、光ファイバーの敷設がほとんど終わっている。本来のインフラの目的は、例えば川の状況を監視したり、情報を各支援地域に流布する防災にある。荒川流域にはCATVもあるので、これらを結んで、CATVとインターネットの2本立てによるコミュニティーネットを作ろうとしている」と説明した。

吉村氏は“なぜ、荒川なのか? ”を説明するために、2本のビデオを上映した。1本目は荒川の堤防が決壊したことを想定したシミュレーションで、東京大水害の様子を描いていた。荒川がどのような川であるかが、よく分かるビデオで、現実問題として大げさな内容でないだけに背筋が寒くなった。くしくも当日の安曇村は激しい嵐にみまわれた。堤防決壊のビデオを上映している最中に、会場が停電になるというアクシデントがあり、あまりのタイミングの良さ? に参加者から驚きの笑い声があがった。

2本目は『荒川コミュニティーネット』の概要についてのビデオ。荒川を“情報の流れる河”へと変え、新しい情報ネットワークによって、魅力的な住みやすい生活圏にしようというもの。荒川コミュニティーネットは'98年に発足した。具体的な今後の推進内容については、“防災・福祉”、“環境学習”、“市民サービス”、“産業振興”、“情報通信インフラの構築”、“荒川下流域LAN”などがある。

メディアエクスチェンジ(株)代表取締役の吉村伸氏
メディアエクスチェンジ(株)代表取締役の吉村伸氏



インターネットの普及により、商用的な利用へのモチベーションが高まる

吉村氏は、地域型ネットワークの増加に関する、最近の傾向について言及した。

「7、8年前までのネットワークの目的は、アップリンクの回線をシェアして、安いコストでコネクティビィティーを得られるようにすることだった。この種の構想は1回つぶれると、そのまま消えてしまうケースが多かった。なぜならば商用ネットワークでも十分に安くできるようなネットワークが提供され始めたので、単にコネクティビティーの問題だけではなくなってしまい、存在意義がなくなってしまったからだ」

「ところが、ここに来て再び地域型のネットワークが増えてきている。インターネットが誰の目で見てもはっきり普及したことが分かるようになると、それを使って、より商業的な運用をしようという動きが出てきた。明確なモチベーションのもとに集まってたプロジェクトが、昔の地域ネットワークとは別の形として登場した」

より大きなコミュニティー作りのために。自治体や事業者を巻き込む

安曇村の場合は、最初から商用目的で集まったコミュニティーで後者に属する。そうなると、エンドユーザーに向けて、どうやって情報を効率的に発信できるかが重要になってくる。

「このようなコミュニティーをより大きなものにするためには、それを維持するモチベーションがないと続かない。最初は何となく、みんなで集まって始めてみたが、だんだん尻つぼみになり何をやっているのか分からないといったケースが少なくない。“危機意識の共有”がないと、離れていく心をつなぎ止められない」と、コミュニティーをつなぎと止める心構えに触れた。

「現実的な問題として、自治体からの支援も必要。みんなで集まってネットワークをやるにしても、やはりお金は掛かる。たとえば、荒川には既に光ファイバーが敷設されているが、ファイバーを引き出し、さらにインフラを進めるためには、またお金が掛かってしまう。政府から補助金が出ているが、自治体が受け皿にならないと補助金はもらえない。より大きなコミュニティーに拡大していくには、行政、自治体の関与が必要不可欠であり、自治体やいろいろな事業者を巻き込む必要がある」

次に重要となるのがコンテンツである。誰もが平等に普遍的に必要な情報は、行政の市民サービスに関わるもの。また、教育という問題もある。このようなことが、インフラの中できちんと運用されていくためにも、やはり行政や自治体の関与が必要になる。

後半のパネルディスカッションでは、吉村氏の講演の話題がネタになった
後半のパネルディスカッションでは、吉村氏の講演の話題がネタになった



新しい技術を取り込み、地域ネットワークを安価に作くる

吉村氏は、このような時代になったときに、どのようなネットワークが必要なのか? という側面から話を進めた。

「初期のインターネットは、“フラットで対等なネットワーク”という考え方だった。誰でも双方向に接続できるようにするために、ネットワークをどんどん大きくしていった。だが、それだけではうまくいかなかった。現在では、個人ユーザーがインターネットを使うためには、ダイヤルアップによる接続が一般的。これは常時接続をしていないという点で、もともとインターネットの概念になかったもの。ネットワークに接続してきたときに、リクエストがあったらダイナミックにIPアドレスを割り振るというやり方だった。当時、プロバイダーが管理を省くためには、これが1番い良い方法だった」

「その後、Windows95が出て、ダイヤルアップは標準的な接続手段になった。これで起こった1番大きな変化は、IPアドレスが固定されていないこと。これまでのインターネットでは、アドレスはいつも同じ組織が使っているという前提があった。アドレスを見てサービスを提供するか、しないかを区別していたが、IPアドレス固定という前提条件が崩れてきたため、ウェブのサービスは、ユーザーを個々に認証するか、cookieなどでクライアントが使っているアプリケーションを把握する必要が出てきた」

「また、最近目だっている変化として、アドレスが動くだけでなくて、アドレスを途中で書き換えるテクノロジー、いわゆる“NAT”や“IPマスカレード”も増えてきた。さらに、同じコンテンツをバックボーンに何度も流すのは非効率なので、キャッシュしてコピーしたものを見せるという方法も一般的になった。そのようなテクノロジーがインターネットを普及させるために有益だと認識されるようになった結果、現在のネットワークは、発信情報用と、エンドユーザー用、企業内ネットワーク用にはっきりと分化した。これからネットワークを構築していく上では、このような新しい技術を活用して、いかに最適な運用していくか、またミッションオリエンテッドな地域のネットワークをいかに安価に作っていくかが必要になってくるだろう」と述べ、地域ネットワークを作っていく上での問題点と話題を提供をして、講演を締めくくった。

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