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洛北の名刹がデジタルギャラリーに。“Go'99展覧会”開催

1999年11月01日 00時00分更新

文● Yuko Nexus6

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京都西加茂、あでやかに紅葉を始めた山々を背にした静かな禅寺、霊源寺で大阪のデジタルスクール『GO Digital School』の展覧会が開かれている。お寺&デジタルという、いかにも京都らしいイベントだが、ユニークなのは今年4月に開校したばかりのこのスクールが霊源寺内にある『透静庵――Gallery 0(ギャラリー・レイ)』を母体にしている点である。

寛文11年(1671)後水尾法皇の勅願により開かれた清涼山霊源寺。幕末に岩倉具視が潜伏していた寺としても知られる。庭園、仏殿も由緒深く、寺宝も多い禅寺である寛文11年(1671)後水尾法皇の勅願により開かれた清涼山霊源寺。幕末に岩倉具視が潜伏していた寺としても知られる。庭園、仏殿も由緒深く、寺宝も多い禅寺である



“現代の枯山水”――国内外の建築界から絶賛された透静庵

透静庵は建築家、山口隆氏の設計により'98年6月に完成。もともと老朽化が進んでいた庫裏が、阪神大震災にあって損傷も激しくなり解体された。その跡地に建設されたのが“現代の枯山水”として国内外の建築界から絶賛される透静庵なのである。本堂、書院に囲まれ、玉砂利の庭に埋め込まれた斬新なガラスの箱は、日本の伝統的な建築空間と対峙しながら見事な調和を見せている。この建物が今回の展覧会からデジタル美術館『Gallery 0』として活用されることになったのである。



 白玉砂利の美しい庭に現われた“現代の枯山水”透静庵。地上部分に出た透明なガラス天井は庭木の緑や紅葉を映し、あたかも池水のようなたたずまいを見せている
白玉砂利の美しい庭に現われた“現代の枯山水”透静庵。地上部分に出た透明なガラス天井は庭木の緑や紅葉を映し、あたかも池水のようなたたずまいを見せている



 地下への階段を下り、透静庵の内部へ。白壁とガラスで構成された静謐な空間。ここがGallery 0として作品展示場、パフォーマンス会場として活用されている 地下への階段を下り、透静庵の内部へ。白壁とガラスで構成された静謐な空間。ここがGallery 0として作品展示場、パフォーマンス会場として活用されている



“何もない空間”が無限の想像力を生み出す

展覧会初日の夕刻より行なわれた山口氏のレクチャーでは、設計者自ら透静庵の成り立ちを語った。山口氏は、バーチャルリアリティー、メディアアーキテクトといったデジタル化による現代社会の高度情報化、情報の氾濫といった世相に触れた後、“情報を極力少なくした日本の庭園――枯山水”に話題を転じた。

「この寺の庭を見てもお分かりのように、玉砂利と石といったごく限られたものしかありません。しかし情報を限れば限るほど逆に人間のイマジネーションは刺激されるのです。禅宗の僧侶が枯山水に臨んで瞑想、修業したように“何もない空間”が無限の想像力を生み出す……私はそんな枯山水を立体的に作りだしたいと思って設計したわけです」

 京都在住の建築家、山口隆氏。日没後、暮れゆく本堂内にビデオ映像を流しつつ、レクチャーを行なった 京都在住の建築家、山口隆氏。日没後、暮れゆく本堂内にビデオ映像を流しつつ、レクチャーを行なった



ビデオインスタレーションやVJパフォーマンスも

レクチャー後に行なわれた山口氏のビデオインスタレーションは、中庭の枯山水をスクリーンとして抽象的なデジタル映像を映し出すというもの。CGはごくシンプルなものだが、その映像が玉砂利に投影されることで無限の表情を生む。さらに縁側や本堂内を移動しながら視点を変えて中庭を見ると、単純な光の明滅にまた新しい表情が発見できる。空間と一体化し、少ない情報から無限の表現が可能になるという好例で、建築家としての氏の力量をうかがわせるインスタレーションであった。



 山口氏のビデオインスタレーション。枯山水に映写されたデジタルイメージは、さらにビデオカメラで捉えられ、本堂の床の間にも角度を変えて映写される
山口氏のビデオインスタレーション。枯山水に映写されたデジタルイメージは、さらにビデオカメラで捉えられ、本堂の床の間にも角度を変えて映写される



さらにGallery 0内ではGO Digital Schoolの卒業生作品、若手VJによるパフォーマンスも行なわれた。こちらは転じて膨大なデジタル情報をコンピューター制御した作品で、山口氏のインスタレーションとは対照的だったといえるだろう。



 Gallery 0のシンプルな壁面をスクリーンとして、学生のCG作品上映、VJによるパフォーマンスも行なわれた。VJユニット、常岡慎一郎氏+奈良間慎氏は9月にオープンした関西最大のVJクラブバー『アンダーラウンジ』のコア作家であり、GO Digital Schoolの講師も務めている
Gallery 0のシンプルな壁面をスクリーンとして、学生のCG作品上映、VJによるパフォーマンスも行なわれた。VJユニット、常岡慎一郎氏+奈良間慎氏は9月にオープンした関西最大のVJクラブバー『アンダーラウンジ』のコア作家であり、GO Digital Schoolの講師も務めている



巷に3DCGやWebデザインのクリエーターを育てるデジタル系専門学校は数多い。その中で、GO Digital Schoolのように大阪-京都と地理的に離れてはいるが、Gallery 0のような独特の空間を発表の場としてあらかじめ持っているスクールは極めて少ない。霊源寺は通常一般公開をしていない寺院である。それがデジタルアートをきっかけにして広く一般に開かれるのは貴重な機会である。そして何よりも日本の伝統美の極を発表の場として学んだ学生たちがどんなクリエイターとして育っていくのか。今後の動向に注目したい。

  • Gallery 0
  • 【GO'99展覧会】11月7日(日)まで15:00~20:30入場料:500円会場:清涼山霊源皇寺透静庵Gallery 0(京都市北区西加茂北今原町41)【イベントスケジュール】“Go Digital School展覧会”:会期中常時展示常岡慎一郎+奈良間慎VJパフォーマンス:11/3、6、7夕刻より風袋宏幸“スペースグラフィックス”:11/6、7夕刻より山口隆“枯山水+Digital Garden”:11/3夕刻より【問い合わせ】Gallery 0tel:075-491-7975

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