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日本レコード協会、著作権とデジタル技術に関する声明を採択

1999年10月12日 00時00分更新

文● 編集部 鹿毛正之

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(社)日本レコード協会(RIAJ)は7日、東京・銀座の銀座東武ホテルにおいて、“アジア/太平洋地域著作権・新技術フォーラム”を開催。同フォーラムにおいて、3つの声明が採択されたと発表した。

発表された声明は次の3つ。

1.我々は、世界中の人々の音楽文化に接する機会を増大させる新しいデジタル技術の開発を歓迎する。

2.我々は、デジタル技術の発展に見合った、音楽関係者の権益維持・拡大がアジア/太平洋地域、更に世界レベルで推進されることを望む。

3.我々は、デジタル技術の発展と音楽関係者の権益保護が相互に調和を保ちながら推進されるよう、技術分野と音楽分野の良好な関係がいっそう促進されることを望む。

フォーラム終了後に開催された記者会見において、国際レコード産業連盟(IFPI)会長兼CEOのジェイソン・バーマン氏は、「新しいデジタル技術の出現に対し、著作権保護をどういった形で対応させるかが重要だ」と語った。さらに、著作権保護について、「レコード会社やデジタル機器メーカーだけではなく、電話会社やインターネットプロバイダーといった新しいプレーヤーが増えている」と指摘。その上で、「SDMIは、プレーヤーが増えている現状にも対応できる技術」だとし、SDMIの普及に力を注ぐ姿勢を見せた。

国際レコード産業連盟の会長兼CEOを務めるジェイソン・バーマン氏
国際レコード産業連盟の会長兼CEOを務めるジェイソン・バーマン氏



また、著作権保護の徹底については、「SDMIの採用のみならず、WIPO著作権条約への批准も重要な要素」だとアピールした。だが同時に、批准の進み具合は非常に遅々としており、各国が米国の出方を伺っている状態だという指摘も行なった。

SDMI:レコード会社やデジタル機器メーカー100社あまりが加盟する、デジタル音楽の著作権保護団体。今年の7月には、携帯型音楽プレーヤーに関する公式仕様がSDMIにより策定されており、この仕様自体をSDMIと呼ぶことも多い。SDMIの仕様に対応したプレーヤーは、今年の年末にも出荷される模様。

WIPO(ワイポ)著作権条約:世界知的所有権機関(WIPO)が'96年12月に採択した条約。内容としては、インターネットなどを利用した著作物の送信に関する権利保護について定めている。WIPOは国連が設置する専門機関のひとつで、著作権に関する2大条約の1つであるベルヌ条約の事務局も兼ねている。

米国レコード協会(RIAA)の国際部で副部長を務めるニール・ターケウィッツ氏は、「レコード業界に対しては、新しい技術の到来を恐れているという認識がされているようだ」と前置きした上で、「実際にはその逆で、業界は常に技術の発展に対して積極的だった」と語り、デジタル技術の発展やネットワークの普及に対して特に反発感はないとする姿勢をアピールした。

米国レコード協会国際部の副部長を務めるニール・ターケウィッツ氏
米国レコード協会国際部の副部長を務めるニール・ターケウィッツ氏



また、インターネットの普及に関しては、「いまや市場を国境で縛ることは難しくなっており、“国内市場”という概念自体が曖昧になってきている」と指摘。「レコード業界としても、国内に向けた視点でものを語ることはできなくなっている」と、市場のボーダーレス化を容認する発言を行なった。

音楽著作権を語る上で避けて通れないMP3の問題については、RIAAではMP3ファイルの流通経路を追跡する部署を設けているという。現在、これらの追跡は人手を費やして行なっているため、自動的にMP3ファイルを追跡するようなソフトの開発を、レコード業界に対して求めていきたいとのことだ。

また、SDMIに対応したプレーヤーには違法MP3ファイルをダウンロードすることができない。そのため、今後SDMI対応プレーヤーが普及していけば、著作権の問題をクリアーしていない違法MP3ファイルは減っていくとする見方をバーマン氏は示した。

また、RIAJ会長の池口頌夫氏は、非SDMIプレーヤーについて、販売価格に著作権補償料を上乗せする“デジタル補償機器”に加える可能性について言及した。SDMIの仕様は主に携帯型のプレーヤーを対象としているため、据え置き型の機器に対しては補償金の形で対応するものと考えられる。

日本レコード協会会長の池口頌夫氏
日本レコード協会会長の池口頌夫氏



今回のフォーラムは、音楽の流通形態が100年以上続いてきたパッケージ主体のビジネスから、デジタル配信というノンパッケージビジネスに移行しようとする過渡期に開催された。フォーラムでは、“日本の音楽が外国から日本に違法配信された場合の扱い”など、従来ありえなかったタイプの問題提起もあり、活発な意見交換が行なわれた。

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