日本ヒューレット・パッカード(株)は、自動両面印刷機能を搭載し、A4の用紙に最大2400dpiでの写真画質印刷が可能な、インクジェットプリンター新製品『HP
DeskJet 970Cxi』を発表した。価格は5万7800円。同時に従来機種『HP
DeskJet 880C/895Cxi』の後継機種で価格を抑えた『HP DeskJet 815C』を発表した。価格は3万4800円。両機種とも10月1日に発売される。
発表会の模様
日本HPの甲谷勝人代表取締役会長 |
東京・千代田区のホテルで行なわれた記者発表で挨拶した、代表取締役会長の甲谷勝人氏は、同社のコンシューマー向けインクジェットプリンター事業について「前年同期比で台数ベース80パーセント増、売り上げベースでは倍増している」と好調に推移していることをアピールした後、今回のDeskJet
970Cxiについて「(従来製品への)日本のユーザーやメディアからの指摘を重視し、欠点はすべてクリアした」とし、「先頭グループに対する追撃体制は整った」と、新製品に対する自信を見せた。
続いて日本のインクジェットプリンター市場について、「HPは日本のマーケットに対するアテンションを強化している」「世界マーケットでは現在トップシェアだが、日本で成功すれば世界でのポジションをさらに強化できる」と述べ、世界で唯一トップシェアが取れていない日本市場へ、今後さらに注力していくことを明らかにした。
コンシューマ事業統括本部小仲浩一郎本部長。「2機種で初年度40万台の販売を見込む」 |
次にマーケティングについて、同社コンシューマ事業統括本部本部長の小仲浩一郎氏が説明した。従来製品に対するユーザーやメディアの評価で多かったとされる、“普通紙でのカラー印刷はきれいだが、写真専用紙での画質がもうひとつ”という点について、「日本のマーケットは、競業メーカーのうまいマーケティングもあって、特化しており、専用紙での印刷品質が最重要視される」と、日本市場の世界市場との違いについて述べた。
その上で「(バランスの取れた性能という意味で)プリンターに何が必要かを理解しているユーザーを対象としていたが、これを初心者側に広げることにした」という。そして、今回のDeskJet
970Cxiは「どの点をとってもパーフェクトな製品だとユーザーに思ってもらえると期待している」今後は「日本での現在のシェア3位を、2位グループに引き上げる」と述べた。
HP DeskJet 970Cxiの機能
HP DeskJet 970Cx |
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DeskJet 970Cxiは、従来製品の長所である“速さ”、“普通紙でのカラー印刷品質のよさ”、“静かな印字音”、“前面給排紙”をさらにブラッシュアップするとともに、ユーザー/メディアからの指摘である“ハイライト部での粒状感”、“インク残量表示”、“細かなカラー設定”について徹底的に改善したという。
印字品質については、1滴が5pl(ピコリットル)(従来は10pl)という超微粒子インク、2400dpi×1200dpiの印字精度、中間調を表現する際に粒状性を低減する新方式カラー誤差拡散の採用、ディスプレー上の色を印刷で再現する際により正確に再現できる“CIECAM97s”カラースペースの採用などにより、従来機種を大幅に上回る品質を実現した。
印刷での1ドットは複数のインク滴の重ねうちにより表現されるが、1ドットあたり29滴(従来は16滴)になり、単色で表現可能な階調が29階調(2400dpiモード)/17階調(ベストモード)(従来は13階調)になった。また、印刷元の画像解像度が低い場合はギザギザ感を抑えつつ解像度を増やし、解像度が高い場合は粒状性のあるイメージのノイズを低減させつつ輪郭をはっきりさせクリアな印刷を可能にする“SmartFocus”技術を搭載した。この画像処理はPentium
IIIプロセッサーのSIMD命令に対応しており、20パーセントの高速化が図られたとしている。
印刷スピードについては、インクカートリッジのノズル数が従来の192から408(CMY各色136)に増え、インク滴射出周波数も12kHzから18kHzに高速化されたことで、1秒間に最大730万滴のインクを打てる。これにより、A4モノクロ印刷で1分間に12枚、A4カラー印刷で1分間に10枚の印刷が可能になった。
使い勝手については、プリントキャンセルボタンが搭載された。これは、このボタンを押すことで、印刷中のプリントを直ちに中止し、プリンター内およびパソコン内のスプールデータを削除するというもの。カラー印刷においては従来、途中で印刷をキャンセルすると、実際に印字が停止するまでに数10秒から数分の時間がかかっていた。コンシューマー向けインクジェットプリンターとして初めての機能という自動両面印刷機能については、プリンター本体の後ろにつけられた両面印刷ユニットによって実現されている。両面印字時には表面を印字した後、少し動作を止め、インクが乾くのを待って裏面の印字を開始する仕組み。
インク残量表示については、プリンター本体のカバーを開けた際のインクカートリッジの停止位置によりおよその残量表示が可能なほか、プリンタードライバーの“予想インク残量”タブでも知ることができる。インク残量の検知は、インク滴のカウントなどにより正確に行なわれるとしている。大量のプリントをする際に、必要と予想されるインク量を計算し、足りない場合には印刷開始前に警告を出す機能も備えている。また、インクカートリッジ交換時に必要なカートリッジの軸調節についても、プリンターに用意されている光学センサーにより、自動的に行なわれる。さらに、シャーシの構造についても見直しを行ない、振動特性を向上させた結果、印刷音があまり耳障りでない低い音になったほか、ヘッドと紙の間隔がより正確に一定に保たれることで、印字品質も向上したという。
インターフェースは、パラレルとUSBの両方を採用しているが、印刷速度はUSBを使用したときのほうが高速で、今後はUSBをメインのインターフェースとしていくという。最後に紙については、DeskJet
970Cxiに適した、写真プリントに近い厚さを持ち、光沢感のある写真のような感触と仕上がり感になる3種類の『HP
プレミアムプラスフォト用紙』と、両面印刷に対応した『HP
ブローシャ&フライヤ用紙』が用意される。これらの専用紙には、耐光性をたかめる添加剤が含まれており、DeskJet
970Cxiとの組み合わせで3年間の耐光性能を持つという。
HP DeskJet 815C |
DeskJet 970CxiとDeskJet 815Cの主な仕様を下に示す。
製品名 | DeskJet 970Cxi | DeskJet 815C |
最高印刷品質 | 2400dpi×1200dpi | 600dpi×600dpi(1200dpi×1200dpi相当) |
最大印刷速度(A4モノクロ) | 毎分10枚 | 毎分7.5枚 |
最大印刷速度(A4カラー/テキスト混在) | 毎分10枚 | 毎分5枚 |
対応する用紙サイズ | A4、B5、US No.10封筒(104.7×241.3mm)、DL封筒(220×110mm)、C6封筒(114×162mm)、ハガキ、フリーサイズ(幅77~216mm、長さ77~356mm) | |
給紙トレー容量(普通紙) | 150枚 | 100枚 |
インターフェース | パラレル/USB | |
サイズ | 幅440×奥行き430×高さ196mm | 幅446×奥行き355×高さ185mm |
重さ | 6.65kg | 5.5kg |
対応OS | Windows 3.1/95/98、Windows NT4.0、MacOS8.1以降(USB標準搭載のMacintosh) |