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【立教大学社会学部設立40周年記念国際シンポジウム】vol.1 多文化化の下におけるグローバルスタンダードの行方

1999年07月16日 00時00分更新

文● WebHut 高柳寛樹

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グローバル化が進む中で、国際合弁企業が最も必要としているのは“信頼”

7月8日から3日間に渡って開催された、立教大学社会学部設立40周年記念国際シンポジウム。9日午後の分科会では、東北大学助教授の若林直樹氏が“欧州における日本企業の信頼関係形成:国際合弁企業にみられる品質改善への取り組みと欧州経営環境との対応”をテーマに講演した。

本講演の中心テーマは、グローバリゼーションの中で国籍の異なる企業同士がビジネスをする際に、何が重要な要素となり得るのか--だった。特に、日本とヨーロッパ(イギリス、イタリア)の合弁企業に関する具体的なフィールドワークの経験に基づいて、議論がなされた。

若林氏によれば、グローバル化が進む中で、国際合弁企業が最も必要としているのは“信頼”である。特に日本型の信頼は“goodwill trust(親善的友好的信頼)”であり、これは異なる文化間の“社会的交換”によって発達するものであるという。ここでの“社会的交換”とは、情報交換や文化的知識の交換など、さまざまな社会における交換行為のことをいう。

“goodwill trust”とマネジメント――ヨーロッパと日本の違い
 
しかし、若林氏が指摘するには、日本型の信頼が“社会的交換”を前提にする“goodwill trust”であるのに対し、ヨーロッパ型の信頼は“契約”に基づく考え方がスタンダードである。日本型信頼との整合性でいえば、“goodwill trust”はヨーロッパにおいて、個人同士の信頼関係にのみ、それが適応されるに留まるとする。したがって両者の企業間における“信頼”に対する格差がまず最初の問題点となるのである。

次に問題になるのは、国際合弁マネジメントに対する考え方の違いである。たとえば目的達成1つを取ってみても、ヨーロッパのマネージャーが、目的達成は3年から5年という短期間になされるべきだと考えるのに対して、日本のマネージャーは長期的なタームで試みる。

特に、日本的マネジメントの特徴であるTQM(トータルクォリティーマネージメント=品質管理)が、長期的な前提に基づいて行なわれることなどを具体的な焦点として挙げた。また人事的側面からも、ヨーロッパ側の担当者が6年ほどで入れ替わることを考えると、日本的マネジメントでは担当者の実績になりにくいことを指摘した。

したがって、日本のマネージャーが注意すべき点は、(1)パートナーの協力が長期的であるのかを確認すること、(2)そして担当者の任期という面に着目すれば、その協力体制が組織的であるかを確認すること--の2点となる。
 
さらに根本的な問題として、“語学”に代表されるような、日本の中間管理職のコミュニケーション能力の低さや、情報収集能力の低さなどを挙げた。特に後者では、日本のビジネスマンが海外において電車やバスに乗ったり、歩いて通勤したりすることが少なく、大半が車による通勤であることが問題だという。よりフットワークを生かすことが“社会的交換”の向上をもたらすと指摘した。
 

“cross-cultural(通分的文化=的)”研究は必要不可欠

このようにまず、ヨーロッパと日本企業との間にずれが生じることを指摘した。その上で、ヨーロッパ型(契約ベース)のメリットは、契約条項による監視が容易であることであること、デメリットの1つは、契約ベースであるがゆえに発展的学習プロセスに不向きであることなどを挙げた。

これらを踏まえた上での今後の課題として、まず、双方の信頼の考え方をより客観的に捉えて戦略的に実践の場に生かすことを挙げた。また、同時に学問領域として“cross-cultural(通分的文化=的)”研究が必要不可欠であるとした。

会場からは「(国際合弁マネジメントにおいて)コミュニケーションが非常に重要な役目を果たすが、現実問題として関係性を作るのは非常に難しいのではないか」などの指摘があり、積極的に意見が交わされた。

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