このページの本文へ

「創造力のある人は会社なんかに入らない」--岐阜ソフトピアジャパンで“ベンチャーセミナー'99”開催

1999年07月09日 00時00分更新

文● Yuko Nexus6

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

7月8日、岐阜県大垣市で次代の起業家を対象とした講演会“ベンチャーセミナー'99”が開催された。会場のソフトピアジャパンセンター自体、起業家を育てるためのインキュベートルーム(企業孵化施設)を擁しており、情報系ベンチャー企業育成に力を入れている。地元はもとより、遠く他府県からの参加者も多数集まった。

会場には140名あまりの受講者が集まった。学生はむしろ少なく、30代から50代までスーツ姿の男性が多い
会場には140名あまりの受講者が集まった。学生はむしろ少なく、30代から50代までスーツ姿の男性が多い



講演者は、デジタルハリウッド学校長の杉山知之氏、東洋経済新報社『ベンチャークラブ』編集長の田北浩章氏、インターメディアプランニング(株)代表取締役の石淵耕一氏という多彩な面々。主催は、(財)ソフトピアジャパン、後援は、岐阜県、岐阜県地域情報化産業懇話会である。

「創造力のある人は会社なんかに入らない」

冒頭、担当者が、会場西隣に建設中のインキュベートビル(仮称)を紹介した。この新館は全国マルチメディア専門研究センターを含む地下1階、地上6階のインテリジェントビルであり、ここに最大100室程度のインキュベートルーム(企業の卵の孵化室)が入る予定。米国では約150か所あるといわれるこの手の起業家(の卵も含む)支援オフィススペースは、日本ではまだ数ヵ所。ソフトピアジャパンでは秋ごから入居者募集を開始する予定だが、完成すれば国内有数の施設となるだろう。ちなみに既存のインキュベートルームともども、入居後3年間は賃料無料で貸与される。

現在建設中のインキュベートビル。LANなどのハード面だけでなく、投融資、企業情報、マーケティング関連データベースやベンチャー同士の情報交流を促進する“バーチャル町内会”といったソフトも充実させる予定
現在建設中のインキュベートビル。LANなどのハード面だけでなく、投融資、企業情報、マーケティング関連データベースやベンチャー同士の情報交流を促進する“バーチャル町内会”といったソフトも充実させる予定



「21世紀にはデジタルの世界で創造力のある人は会社なんかに入らない。インターネットをはじめとするデジタルコミュニケーション手段を活用して好きな場所に住み、自分のやりたい仕事をする。会社や業界といった枠を取り払い、横の繋がりを強めていくことがデジタルのもっている力」――。“2000年に羽ばたく起業家たちへ”をテーマに、デジタルハリウッド学校長、杉山氏の講演が始まった。

デジタルハリウッド学校長、杉山知之氏。会の趣旨に合わせ、ベンチャー企業としてのデジタルハリウッド誕生秘話を語った
デジタルハリウッド学校長、杉山知之氏。会の趣旨に合わせ、ベンチャー企業としてのデジタルハリウッド誕生秘話を語った



全世界から出資をあおぎ設立されたMITメディアラボのベンチャー企業的成り立ちを例にひきつつ、デジタルハリウッドの現在に至るまでを語っていく。事業開始初期の負担を軽くする工夫(日大キャンパス内に間借り)、出資者とのつきあい方、アライアンスの組み方(他専門学校との提携)、事業拡大へ--と具体的な事例とともにその歩みが紹介された。

「この前のベンチャーブームというのは、実はベンチャーキャピタルのブーム」

しかし世の中、サクセスストーリーばかりではない。今回の講演も“ニュービジネススクール‘君が社長だ!’”と威勢のいい副題がついているが、厳しい現状を踏まえた上で今後の方向性を探りに来た参加者がほとんどだろう。

「95年ごろに起こったベンチャーブームというのは、実はベンチャーキャピタル(VC)のブームであって、真の意味でのベンチャー起業ブームなど日本にあったわけではない。そのVCが投資を引き上げていった揚げ句の貸し渋り、そしてベンチャー企業倒産があいついでいる」――。

東洋経済新報社『ベンチャークラブ』編集長、田北浩章氏。大手も含め“危ない企業”の実名&イニシャルトークが噴出する刺激的な講演内容
東洋経済新報社『ベンチャークラブ』編集長、田北浩章氏。大手も含め“危ない企業”の実名&イニシャルトークが噴出する刺激的な講演内容



“不況に勝ち残るベンチャー企業”と題して講演した田北氏は、ハイパーネットをはじめ近年多額の負債を抱えて倒産したベンチャー企業の実例を分析した。ジャーナリストとして多くの経営者を取材した経験から、失敗例、そして盛り上がりを見せているインターネット通販での成功例を挙げ「VCバブルがはじけ、今こそ本物の経営者、偽物の経営者が選別される時。この状況はむしろ歓迎すべき」と強調した。

「インキュベートルームは、孤独な起業家をメンタル面で支えてくれる」

最後に講演した石淵氏は、実際にソフトピアジャパンインキュベートルーム入居企業として体験談を披露。「勤めていた上場企業を辞めた途端、まわりから人がいなくなってしまった」と語る石淵氏。「インキュベートルームは施設も素晴らしいが、孤独な起業家をメンタルな部分で支えてくれる起業家同士の交流があることが最大のメリット」だという。

インターメディアプランニング(株)代表取締役、石淵耕一氏。「技術の新しさだけで勝負できるという考えは甘い」――上場企業での研究職、ATR通信システム研究所への出向を経て独立した自らの経験を語る
インターメディアプランニング(株)代表取締役、石淵耕一氏。「技術の新しさだけで勝負できるという考えは甘い」――上場企業での研究職、ATR通信システム研究所への出向を経て独立した自らの経験を語る



東京でなくてもいい。地方でもコスト安を利用し、自治体が充実した起業家支援をしてくれるなら十分成功の可能性がある--これこそベンチャーの夢の最たるもので、岐阜や大垣はその点で大変有力な土地柄なはずだが、やはり地元の参加者からは「岐阜で情報産業を起こすのは不利では?」、「どうやって東京との繋がりを強化していくかで悩んでいる」といった声が寄せられた。個々の成功例はともかく、自治体支援の元にある地方のベンチャービジネス自体が、現在はまだ“孵化器”の中にあるということだろうか。

講演終了後は講師もまじえた交流会も開催された
講演終了後は講師もまじえた交流会も開催された

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

最新記事

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン