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【INTERVIEW】日本語版『Clarion AutoPC』発売はいつ?----クラリオンの開発陣に直撃

1999年02月18日 00時00分更新

文● 報道局 白神貴司/取材協力・監修:(株)テクメディア 大谷泰弘

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 米国で'98年12月に発売され、国内でも反響を呼んだクラリオン(株)の車載パソコン『Clarion AutoPC』。今回は、同製品の開発に携わったクラリオンの皆川昭一(みながわ・しょういち)技術企画部長に、開発コンセプトやシステム、日本語化への取り組みについて聞いた。


オプションで道路情報や電子メール

Clarion AutoPC本体。表示されているのはメニュー選択の画面
Clarion AutoPC本体。表示されているのはメニュー選択の画面


 Clarion AutoPCは、車のダッシュボードに格納できる1-DINサイズの車載用コンピューターである。CPUに日立製作所(株)製SH3を搭載し、16MBのRAMと8MBのROMを内蔵し、OSには専用にカスタマイズされたWindows CE 2.0を採用している。256×64ドット、256色表示の液晶ディスプレー、USBインターフェース、IrDAインターフェース、最大2倍速のCD-ROMドライブ、コンパクトフラッシュスロットを備える。

皆川昭一(みながわ・しょういち)技術企画部長 皆川昭一(みながわ・しょういち)技術企画部長



 オプションのGPSシステムやセルラーホンを追加すると、カーナビゲーションや携帯電話機能が統合できる。道路交通情報や電子メールの受信も可能になる。操作には、Clarion AutoPCフロントパネル上のキーも使えるし、また、標準搭載の音声認識/音声合成システムにより、音声(英語)も使える。このため、ハンドルを握ったまま電話を掛けたり音楽CDを聞いたりといったことができる。さらに受信した電子メールを読み上げさせることも可能だ。米国内での販売価格は1299ドル(約14万8000円)となっている。

“IN CAR NET”構想とカスタマイズされたWindows CE2.0

画面はナビゲーションシステムが起動しているところ。矢印と距離でドライバーに指示を出す
画面はナビゲーションシステムが起動しているところ。矢印と距離でドライバーに指示を出す



----まず、開発にいたるまでの経緯をお話しください。

「クラリオンでは、車載型パソコンを中心としたカーマルチメディアの実現に向けて、“IN-CAR NET(イン・カーネット)”構想を掲げています。これはインターネットからの造語です。この構想では、音を中心として快適性、車内空間の情報利用の利便性、操作の安全性の3つを柱としています」

「これまで、車載用のシステムでは、それぞれの機器が個別に搭載され、別々に動作していました。それを車載パソコンを中心としたネットワークで結ぼうというのがIN-CAR NET構想のスタートでした。ここから、Clarion AutoPCの開発が始まったのです」

本体前面のディスプレー部を外したところ。本体上部、青いスロットがCD-ROMドライブスロット
本体前面のディスプレー部を外したところ。本体上部、青いスロットがCD-ROMドライブスロット



----OSには、カスタマイズしたWindows CEを採用していますね。

「このOSは、マイクロソフトがAutoPC専用にカスタマイズしたものです。正式には『AutoPC Powered by Microsoft Windows CE2.0』といいます。Windows CE2.0を車載用にカスタマイズした特定分野向けOSです。ROMベースで起動が速い、HDDが不要、小容量メモリーで動作可能などの特徴があります」

「一番の特徴は、オープンアーキテクチャーであることです。オープンにしたことで、サードパーティーがこのOS上で動作するソフトウェアを開発することが容易になるでしょう」

USBポート、コンパクトフラッシュスロットなど、パソコンを彷彿とさせる装備

写真中央に見えるのがテンキー。その隣にあるのがコンパクトフラッシュスロット。使用しないときは右下のカバーを装着する 写真中央に見えるのがテンキー。その隣にあるのがコンパクトフラッシュスロット。使用しないときは右下のカバーを装着する



----ハードウェアの特徴として注目を集めそうなのがUSBポートとコンパクトフラッシュスロットの採用ですね。

「この2つの点については、製品の構成を発表した当初から、多くの問い合わせをいただきました。とくにUSBに関しては、外部との接続コネクターとしての搭載を予想したユーザーが多かったようです。ただ、AutoPCのUSBコネクターは、パソコンのものとは互換性がありません」

「パソコン用のコネクターをそのまま採用すると、運転中の振動に耐えられず、抜け落ちるといった問題が発生します。そこで、抜け落ち防止や防塵に考慮した独自のコネクターを開発しました。ピン数もパソコンのものとは異なり8ピンです。これは電源のほかに、周辺機器からClarion AutoPCを起動させる“Wake Up機能”を搭載したためです」

「もともと、Clarion AutoPCに搭載したUSBポートは、CDオートチェンジャーなど、車内の他の機器と接続するためのインターフェースとして採用しました。外部コンピューターとの接続のため、という意図が薄いのです。そのため、ポートも本体前面ではなく、背面にあります」

「また、外部コンピューターとの連携は、IrDAポートとコンパクトフラッシュとで実現します。USBのみをインターフェースとしているわけではないのです」

「とはいえ、USBはすでに次世代インターフェースとしてかなり普及しています。また、ユーザーにも、自分のハンドヘルドパソコンなどとClarion AutoPCをUSBで接続して使用したいというニーズがあるでしょう。この要望に対応するため、パソコンのUSBコネクターに対応したポートを複数装備したハブの製品化を検討しています」

本体背面。ファンの右下に見えるのがUSBポート
本体背面。ファンの右下に見えるのがUSBポート



テストに時間を掛けたため、米国内での発売が延期に

----当初、'98年6月に米国で発売するとアナウンスされました。どうして12月まで延びたのですか。

「フィールドテストを重視して、何度も検証を繰り返した結果、予想以上の日数が掛かってしまいました。発表時から注目を集めていただけに、発売延期になったことで、ずいぶん問い合わせをいただきました。ただ、テストを慎重に行なったこともあり、製品には自信を持っています」

----電源システムはどのようになっているのですか。

「自動車に搭載されているバッテリーは電圧が不安定なので、車載コンピューターの電源としてはとても使用できません。本体には専用のバッテリーを接続して使用します。さらに、メインバッテリーの交換時にデータをバックアップするために、ボタン型電池を装備しています。万一メインバッテリーが故障しても、いきなりデータが消失することはありません」

指向性マイクはネイティブの発音にしか反応しない!?

楕円形をしたものがマイク。その下はマイクのON/OFFを切り替えるスイッチ 楕円形をしたものがマイク。その下はマイクのON/OFFを切り替えるスイッチ



----Clarion AutoPCの特徴の1つは音声認識と音声読み上げ機能ですね。

「音声認識と音声読み上げ機能は、OS(Auto PC Powered by Microsoft Windows CE2.0)の標準機能として、マイクロソフトが開発しました。音声の入力には、ダッシュボードなどに貼りつける指向性のマイクを用います」

「ちなみに、音声認識はネイティブイングリッシュに忠実な発音しか認識しません。日本人にはちょっと難しいかもしれませんね」

----マイクがカーラジオなどの音声を拾ってしまい、Clarion AutoPCが誤作動するといったことはないのですか

「100パーセントないとは言えません。確かに、走行中にラジオからアプリケーションやClarion AutoPCそのものを起動させるキーワードが流れ、それに音声認識システムが反応してしまう可能性は、低い確率ですが否定はできません」

「ただし、マイクには指向性を持たせてあり、車内すべての音声には反応しないように設定してあります。また、AutoPCは、いきなり音声が飛び込んできても、キーワードである“オートピーシー”という呼び掛けをしないと起動しません」

日本語版はOS、ハードウェアともまったく異なるものに

----日本語版の発売はいつごろになりそうですか

「現在は、まだ時期の確定ができるところまで開発が進んでいないというのが正直なところです。日本語版のOSに関しても、マイクロソフトで開発しているので、クラリオンとしてはなんともコメントできません。ただ、2000年中には製品化できると考えています」

「ハードウェアが英語版のものとは大幅に異なるものになることは間違いありません。現在のナビゲーションシステム同様、大型のディスプレーを装備したものになるでしょう。本体とディスプレーとは分割されるのが自然ではないかと考えています」

「価格としては、英語版の価格(1299ドル:約14万9000円)を上回ると予想しています。20万円前後かそれ以上になるのではないでしょうか。」

Clarion AutoPCは単なる車載パソコンではない

 インタビューの後、実際にデモ機を使って、各機能のデモンストレーションを実施した。音声認識による起動、ラジオ、CDプレーヤー、ナビゲーションシステムなどの機能が次々と音声によって起動していく。

 画面に表示されたアイコンの入れ替えや、十字ボタンによるメニュー選択などの操作を見ると、Windows CEがOSとして搭載されていることを実感する。

 クラリオンでは、Clarion AutoPCを単なる車載コンピューターで終わらせるつもりはないという。

 今回はたまたま車の中という、閉鎖的な特殊空間にコンピューターが入った。しかし、家庭内にコンピューターが導入され、ネットワークでつながる“ホームパソコン”構想が、ずいぶん前から語られてきた。『Clarion AutoPC』は、このトータルネットワーク構想に一歩近づいたものとなるのだろうか。


(1月21日、クラリオン戸田事業所にて)

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