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【INTERVIEW】「パソコンの新しい使い方を提案していきたい」と日本IBM・堀田一芙氏

1998年04月01日 00時00分更新

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 '97年のパソコン市場は、出荷台数が794万台で対前年成長率が4.3パーセント。'96年の対前年成長率が32.3パーセントだったのに比べ、景気低迷のあおりを受け低成長である。またノート型の出荷台数は対前年比36.8パーセント増だが、デスクトップ型がマイナス10.4パーセントと振るわなかった(数値は日本データクエスト(株)発表による)。

 今年のパソコンの販売戦略について、日本アイ・ビー・エム(株)のパーソナル・システム事業部長の堀田一芙取締役に話を伺った。同氏の略歴は、'69年に入社、'91年にPC営業本部長、'97年に取締役コンシューマー事業部長、'98年に取締役パーソナル・システム事業部長に就任、現在に至る。



ノートの今後の需要は頑丈なハイスペックマシン

----まずノート型PCの『ThinkPad』シリーズについてはいかがですか。

 「定期的にIBMの名前を伏せて、各メーカーのパソコンに対するユーザーの満足度調査をやっていて、去年の後半の調査でThinkPadは、価格に対する評価はあがっていないのですが、性能や機能、そして特に堅牢性(壊れにくさ、頑丈さ)が高く評価され、Windowsマシンの中では1位でした。『ThinkPad 560』は、2年前に発表した製品ですが、購入したユーザーから、1、2年後に560系のリピートオーダー(買い換え注文)がきます。これまで堅牢性というのは調査項目になかったのですが、実際にモバイル環境で使っているお客様に評価されているようです。ノートの市場は思いがけないところで伸びていますね」

----モバイルで使っているユーザーの用途はどんなものでしょうか。

 「図面やグラフィックスなどを(外出先で)瞬時にプレゼンテーションしたいというハイエンドなモバイル環境を望んでいるユーザーは多いと思います。メールなどをちょっと読むために小さく運びやすい携帯端末のニーズやノート系をできるだけ軽量化するという傾向もあります。しかし、しっかりしたアプリケーションでモバイルができるというニーズでは、560Xなど非常にそれに近いところがあると思います」

 『ThinkPad 560X』は2月に発表されたノートPCで、MMX Pentium-200/233MHz、32MBのメモリーを標準で搭載。12.1インチカラーTFT液晶で、幅297×奥行き222×高さ31mm。重さは1.9kg。

----ハイエンドなモバイル環境といえば、RS/6000のノート型(『RS/6000 Notebook860』)を'96年秋に発表されましたが、売れ行きはどうだったのでしょうか。

 「あれは重さが3.8kgあって、期待された製品ではあったけれども、うまくいかなかったみたいですね。PentiumIIとWindowsNTの組み合わせのノートPCに新たに期待しているところです」

----堀田さんのおっしゃる携帯向けとは何kgぐらいのものを指すのでしょうか。

 「ディスプレーは12.1インチ以上ないと(プレゼンを行なうなどの)ニーズに対応できません。またインテルが4月に発表する(新しいPentiumIIプロセッサーの)デシュート(Deshutes)に対応するには、560程度の厚さは必要です。それを考えると、ハイエンドのモデルは重さを2kg以下にはできないですね」

----デシュート搭載ノートの発売の予定は?

 「順調に、そして慎重に開発は進めていますが、発表がいつになるかはまだわかりません。4月2日のデシュートの発表日に参考出品はします」

Aptivaは、音声認識プログラムで思わぬところに新たな需要

----デスクトップのほうはいかがですか。

 「Aptivaについては、業界全体でも個人向けPCが3割売上が減っているので、同じぐらい減っているようです。ただ今月発表した音声認識プログラム『ViaVoice』(ビアボイス)を搭載したApitivaのキャンペーンはおかげさまで好評です。Excelやロータスだけでは他社と変わり映えがしないのでIBMにしかないソフトを載せようということで始めましたが、テレビの通販で先日、1日に1000台の注文が来ました。使いやすいパソコンにするために、これまで開発していたものを素直に市場に出したら受け入れられたということですね。また購買層は、ViaVoice単体ではビジネスマンが7割で、こちらもそれを見込んで出荷しています。しかし、昼の番組をみて(キャンペーン商品のAptivaを)買ったユーザーがどんな人たちなのかは調査中です」

 ViaVoiceは声でワープロやインターネットなどの音声入力、出力が可能。自然な話し方(連続発声)で文章の入力やプログラムの操作などができ、同社広報によると、正確な発音で付属のマイクに向かって原稿を読み上げた場合、認識精度は90パーセント以上という。動作環境はWindows95上で64MB以上のメモリーが必要。このためWindows95上で大容量のメモリーを必要とするアプリケーションとして新たな市場の展開を期待しているという。Windows98への対応も進められ、映画の字幕への応用など、今年の後半には具体的な事例が実現しそうだという。

 同社ではPCの使い勝手の向上と、どういう使い方をユーザーに提案していくかというのが、今後の課題。堀田氏が率いるパーソナル・システム事業部では、ThinkPadやAptivaなどのブランドと、適用分野をクロスさせて市場を見る組織を4月1日に新設する。昨年開設したPCクライアント/サーバー・システムの企画から導入までの支援を行なう“PC NTソリューション・モール”の最前線で活動した藤本司郎氏が新組織の責任者として就任し、競争力を強化していく。

 Windows95が発売されて以来、95、マルチメディア、インターネットなどのキーワードである種の“夢”をユーザーに売ってきたパソコンメーカー各社だが、今年は、Windows98の発売では95のときほどの熱狂は見込めないという見方が業界では強い。では今年はどんな夢を売るのか……IBMの回答は、ハイエンドのノートブックや音声認識などのアプリケーションソフトでの新しいパソコンの使い方の提案ということのようだ。(報道局 若名麻里)

http://www.ibm.co.jp/

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