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“感性”と“工学”をどう融合するのか!? 国際シンポジウム開催

1998年02月24日 00時00分更新

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 技術教育国際フォーラム協議会(事務局:日本工業大学工業教育研究所内)主催のシンポジウム“感性と工学”が、本日、千代田区の東京国際フォーラムにて開催された。21世紀に向け、ますます重要な役割を果たすべきエンジニアに求められる“感性”の問題や、エンジニア教育のあり方などが討議された。

基調講演

 まず、有馬朗人・理化学研究所理事長、吉川弘之・日本学術会議会長、Wolfgang M.Boerner(ウォルフガング・M・ボーナー)・イリノイ州立大学教授の3氏が、研究者としての立場から講演を行なった。

 講演で吉川氏は、「専門化、分業化は現代社会の象徴。私も自分の研究分野が、世界にそれこそ何万とある研究分野のひとつであることを思い悩み、それを超えようとしたものだ。結局、それぞれの専門分野を完成させ、それらを統合することでさらに大きな体系を作ることが重要との結論に達した」などと述べた。

 学問においても、新たな問題に対処するために、気象学と地質学の統合、機械工学と電機工学の統合など、異分野の統合が推進されており、学問の専門化以上に注目すべき流れだといえる。そして吉川氏は、専門分野の統合に感性が駆使されることの必要性を認めた上で、エンジニアには「感性に頼るといいものができるという考え方は、甘いというほかなく、感性を磨いた上で論理的思考を徹底的に尽くすべき」と訴えた。

 有馬氏は、科学技術の発展には感性が常に重要な役割を果たしてきたことを強調、Boerner氏も日本をはじめとした東洋の感性志向を評価し、国際的な活動の場で活かすべきと述べた。

パネルディスカッション

 パネルディスカッションには、講演を行なった3氏に、河合隼雄・国際日本文化研究センター所長、黒田玲子・東京大学大学院総合文化研究家教授が加わった。



 河合氏は、クルマの運転がオゾン層の破壊につながることを例に挙げ、「思いがけないところに、思いがけない関係があるものだ。感性を総動員して、すべての関係性を活かせるような行動をするべきだ」と、幅広い分野で応用できる示唆に富んだ発言をした。黒田氏も、「21世紀は人間の幸福だけを考えていてはダメで、他の生物を含めたトータルなものの考え方をする必要がある」と付け加えた。

 一方、エンジニア教育については、現状に対する批判が次々と提示された。感性を育てる方法としては、「いい芸術、いい科学技術に触れさせる」(有馬氏)、「学生が間違った答えをしても、否定せず活かしてやる」(河合氏)、「ディベートや飛び級制度など、欧米のいいところも取り入れる」(Boerner氏)、「個人の学習ペースを尊重する」(吉川氏)、「遊ばせる」(黒田氏)などの意見が出た。感性の正体というものがつかみにくいだけでなく、優れた感性の定義づけも困難なため、教育問題は一筋縄で解決しそうにはなかった。

 専門分野に従事している人が、専門分野だけを考えていればいい時代ではなくなりつつあるのだと思う。工学だけでなく、医療、マルチメディアなどにおいても、専門家だけでなく、広い視野を持ち各分野を橋渡しするゼネラリストの育成が、今後望まれているといえる。パネラーは黒田氏を除いて、60代、70代の大御所たち。もう少し若い世代の意見も聞きたいという気はした。(報道局 浅野広明)

http://www.nit.ac.jp/

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