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文化遺産をデジタル化、デジタルミュージアムやニュービジネスを紹介

1997年12月12日 00時00分更新

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 美術品や文化財、写真、動画、建造物などの文化遺産をデジタル化する作業が各地で進められている中、(社)日本印刷技術協会(JAGAT)は、『デジタルアーカイブの動向-コンテンツの新たな流通とデジタルミュージアム-』と題するセミナーを開催した。博物館および民間企業が、デジタル化によって文化遺産をどう保存するのか、またそれをどうビジネスに活かしていくかが注目された。

 まず、大阪にある国立民族学博物館(民博)副館長の杉田繁治氏から、同博物館におけるデジタルミュージアム化の説明が行なわれた。
「民博は1974年の設立当初から、民族学研究で扱う資料をすべてコンピューターに保存しようと考え、膨大な標本資料を3次元画像化する作業を続けている。民博の最終的な目標が、デジタルミュージアム。これは静止画像や、テキストだけでなく、映像、音声までを含むメディアをデジタル化し、ネットワークで結んだもの。まだ基礎的な資料をつくっている段階だが、これが完成すると、図書館、美術館、博物館の垣根は取り払われる。また、展示スペースがいらないため、収蔵庫で眠る資料もなくなる。デジタルミュージアムは民族学研究にとっても大きな意味を持ち、遠く離れた資料を比較するなど、実物ではできない比較が可能となるほか、検索システムの発達によって本の読み方も変わるだろう」

 また、(株)日立製作所と凸版印刷(株)が共同で行なうデジタルコンテンツサービス『イメージモールジャパン』の準備状況が、凸版の小森雅夫氏により紹介された。画像/映像データベース化した美術品や文化財の販売、電子出版物の制作が主な事業で、小森氏は「'98年3月末には事業化に踏み切るかどうかを決定し、会社設立を考えている」と話した。すでに凸版が共同通信社、KDD、インフォネットと設立した合弁会社(株)デジタルハウスで、徳川美術館の国宝や重要文化財の画像、姫路城の画像などが試験的に販売されておりhttp://www.dhjapan.com/、他のアーカイブとも提携して5年間で100万件のコンテンツを用意したいという。静止画像処理技術は日立の『DIS(Digital Image System)』を採用し、最大5000×4000ドットまでサポートする。

 デジタル化した文化財は、老朽化しない、どこにいても閲覧できるなどのメリットがあり、時間と空間を超越した資料だと実感させられるセミナーだった。ただ、博物館、印刷業界といえばデジタル化が急がれながら進んでいない分野であり、インフラが整備されるには、まだ時間がかかりそうだ。(報道局 浅野広明)

http://www.jagat.or.jp/

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