地球環境に力強く貢献するには、ボランティアや純粋な社会貢献ベースではなく、ビジネスとして成立してこそ、拡大しながら人や産業を巻き込んでいくことができる。成功するエコビジネス、エコ活動とは、どのようなものなのだろうか。様々な業種の事例を集めてみた。
トラックから鉄道へ モーダルシフトの波
●JR貨物/鉄道コンテナ輸送
平成20年度経常利益見込み 25億円
ガソリンの高騰で、トラック事業者が苦境に立たされる一方、同じエネルギーでより多くの荷物が運べる鉄道貨物輸送に注目が集まっている。また、1トンの貨物を1km運搬する場合、鉄道のCO2排出量は22gであるのに対し、トラックは173gとされ、CO2排出を削減したい企業にとっても鉄道輸送は魅力的だ。
貨物輸送専門のJR貨物は、2001年以降黒字決算を続けており、'07年度は経常利益 13億円、'08年度はほぼ倍増の25億円を見込んでいる。
少ないエネルギーで海水から真水を
●日東電工/逆浸透膜
2012年度売上高 500億円
砂漠の産油国などでは海水を熱して水蒸気を回収する「蒸留法」で真水を得てきたが、これには莫大なエネルギーが必要だ。そこで注目されているのが、小さな水分子は通すが塩は通さない「逆浸透膜」を用いて海水から塩を濾過する方法。世界中に続々プラントが建設されている。
逆浸透膜の世界大手の日東電工は、市場拡大をにらんで積極的に新工場への投資を行っている。2012年には周辺の水処理事業を含め、現在の2.5倍の500億円、2017年には1000億円を目指す。
空気を浄化し、涼しくしてくれる植物
●サカタのタネ/サンパチェンス
2008年度売上高 1億7600万円
種苗メーカー・サカタのタネが2006年から販売している「サンパチェンス」という花が、実験の結果、大気中の二酸化窒素やCO2、シックハウスの原因であるホルムアルデヒドの吸収能力が非常に高いことがわかり注目されている。東京大学博士の浦野豊氏との共同研究の結果判明したもので、従来の園芸植物に比べNO2で5~8倍、CO2が4~6倍、ホルムアルデヒドで3~4倍の吸収能力を持つという。
有害物質吸収のしくみはよくわかっていないが、葉の気孔が他の園芸植物より多く、サイズも大きいことが関与している可能性があると考えられている。
サンパチェンスは、鉢植えで60cm、路地では1mに達する大きな植物で、夏から秋にかけて長期間花を咲かせる。サンパチェンス=Sun Patienceという名前のとおり、夏の強い日差しや高温にも強く、風で倒れてもすぐ回復するなど、栽培もしやすい。また、1平方メートルに5株植えれば花でびっしりと埋まるため、花壇にも最適ということだ。
また、気温降下能力が高いことがわかっている。一般に真夏時の植物の表面温度は気温と同程度だが、サンパチェンスは3~4.5度低いという計測結果が得られている。地面の温度に比べると10度以上も低い(「打ち水」効果)。
夏の間元気に咲き続け、空気を浄化し土の熱気も和らげてくれるこの花は引き合いが多く、2008年度は925万鉢、1億7600万円の売り上げを見込んでいる。同社はサンパチェンスを「環境浄化植物」と位置づけ、屋上緑化用などにも力を入れていく。