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「日本化進める」――八剱体制のSAPジャパンがスタート、2008年の方針を説明

2008年02月07日 17時29分更新

文● アスキービジネス編集部

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SAPジャパンは、2月6日、東京本社で会見し、2007年の業績を公表するとともに、2008年の方針について説明した。会見に臨んだのは、1月1日付けで代表取締役兼CEOに就任した八剱洋一郎氏。


好調維持した2007年、新規事業も拡大


「(前CEOの)ロバート・エンスリン氏は有終の美を飾ってくれた。極めて順調な1年だった」。SAPジャパン代表取締役兼CEOの八剱洋一郎氏は昨年の同社の業績を振り返り、こうコメントした。SAPジャパンの2008年の売上は、対前年比14%増となる711.7億円。このうち、ソフトウェア関連(ライセンス販売と保守費用)は539.3億円で前年比21%の伸びを記録した。「グローバルのソフトウェア関連売上の伸び率は17%なので、日本はこれをかなり上回った」(八剱氏)。

「日本化進める」――八剱体制のSAPジャパン がスタート、20...

SAPジャパン代表取締役兼CEO 八剱洋一郎氏

 特に好調だったのが、新規ライセンスの販売。「昨年の取引の半分近くがまったく新しいお客様。これはほかの先進国には見られない現象だ」(八剱氏)。

 新規ビジネス分野も売上拡大に貢献した。グローバルで注力している「エンタープライズSOA(E-SOA)」「BPP(ビジネス・プロセス・プラットフォーム)」戦略の中核を担うNetWeaver関連売上が2.3倍に伸長。富士通やアビームコンサルティングなどのパートナー企業がE-SOA専任部隊を組織したほか、マイクロソフトと共同で「Duet」を投入アドビ システムズとリッチUIの開発で協業するなど、アライアンスを加速させた。

 もう1つの新規事業であるGRC(ガバナンス・リスク・コンプライアンス)も急成長した分野。「従来はERPの付随的要素であり、単独での売上はほとんどなかった」(八剱氏)のに対して、日本版SOX法をはじめとする内部統制強化の流れに乗り、前年の3.8倍を売り上げた。

 このほか、2007年の主な動きとしては、UIを大幅に改善した「SAP CRM 2007」の出荷開始、コストと導入期間を明確化した中堅中小企業向けソリューション「SAP Business All-in-One(A-One)」の刷新、2年ぶりに国内で開催された「SAPPHIRE ’07 Miyazaki」などがある。

「日本化進める」――八剱体制のSAPジャパン がスタート、20...

「SAPらしくない画面デザインに既存顧客からの驚きの声が上がった。SAPの見てくれの悪さを払拭した画期的製品」(八剱氏)と紹介した「SAP CRM 2007」

E-SOAの実装例として紹介されたAdobe AIRを使った経営コックピットシステム。シャープでは同様のシステムを独自に構築し、役員室に設置された大画面の液晶モニタに表示しているという


日本化をさらに推し進める2008年に


 2008年のSAPジャパンの施策に共通するキーワードとして挙げられるのが、八剱氏が度々口にした「日本化」だ。

 たとえば、パートナー戦略については、エコシステムの構築をさらに推進する方針だが、日本法人では独自に国産ソフトベンダーとの協業も模索する。「従来は競合と見られていた企業とも、E-SOAによる統合ソリューションを提案するといった動きを進めている」(八剱氏)。

 また、昨年12月にはカスタマーイノベーションセンターを開設。同センターでは、国内のユーザーの意見を受けた機能拡張などにあたる予定。具体的には「締め請求」「帳合」「賞味期限管理」といった機能がJSUG(Japan SAP User’s Group)を中心とした国内ユーザーの意見をもとに実現したものだという。

 2008年は、昨年、独本社が買収を発表したビジネスオブジェクツとの統合も控えている。八剱氏は、「SAPが弱かった戦略策定の機能を強化することで、ビジネスプロセスがより完璧に回るようになる」と両社の補完関係を強調。日本法人同士の取り組みとしては、「ビジネスオブジェクツの社員と一緒に顧客を訪問するなど、連携体制でソリューション提案する動きが始まったところ」と説明した。

「今年前半は大きな動きない」――SaaS型ERP「ByDesign」の国内投入に


 昨年9月に独SAPが発表した中堅・中小企業向けSaaS型ERP「SAP Business ByDesign」。質疑応答の中で、その国内投入の時期について問われた八剱氏は、「今年前半には大きな動きはない」と回答した。

 その理由は、「日本ではSAPは大企業向けとのイメージが強く、すぐに投入しても大きな反響があるのか疑問がある」(八剱氏)ため。また、「品質に関して日本は厳しく、拙速に投入するのは得策ではない」と判断。一部ユーザーに対してパイロット導入し、「十分な検証をする」との慎重姿勢を示した。

 ただ、「大企業の子会社が親会社と連携する際など、ニーズはかなりある」(八剱氏)と見ており、一定の検証時間を経た上で国内でもサービスを行なう方針だ。

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