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「隠す権利」から「広める制度」へ 変化が求められる著作権のあり方

2007年12月12日 17時00分更新

文● 編集部

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 インターネット上で、映画や音楽といったコンテンツをどう流通させていくか。これはコンテンツホルダーに突きつけられた大きな課題である。

 パッケージメディアの販売が頭打ちになる中、ネットに活路を見出したい。しかし、その一方で、違法に流通したコンテンツを思うようにコントロールできないいらだちもある。ネット時代に即した新しい方法が必要であると自覚しながらも、ユーザーの利便性と収益を両立できるような解答にいまだ行き着いていない。コンテンツ業界が抱えるジレンマは深い。



「著作権の壁」が産業の発展を阻害している


 先週6日に早稲田大学で開催された「知的財産セミナー」(主催:早稲田大学知的財産本部)で講演した、角川グループの会長・角川歴彦氏は「厳しすぎる日本の著作権法が、萎縮効果を生んでいる」と指摘。YouTubeに代表される革新的なWeb 2.0企業を日本で誕生させ、コンテンツ産業を育んでいくためには、制度的なイノベーションが必要であるとコメントした。

角川歴彦氏

角川歴彦氏。写真は第18回東京国際映画祭に登壇したときのもの

 講演の内容は、同氏が「文部科学時報」(2007年9月号)に寄稿した内容に即したもの。ここでは、(1)米国で成功しているWeb 2.0企業が誰もかなわないような技術力を持っている、(2)インターネットは海賊版が氾濫する不正コピーの巣窟である──という2つの誤認が、日本における革新を阻んでいると指摘されている。

 同氏の見解では、YouTubeやiTunes Storeの成功は画期的な技術に支えられたものではなく、むしろビジネスモデルの新規性と、米国で1998年に制定された「デジタルミレニアム著作権法」(DMCA)に代表される緩やかな著作権の仕組みに支えられたものである、という。厳しすぎる国内の著作権法によって、日本の企業は多少でも著作権侵害の可能性のある新規事業にためらいを見せており、それがコンテンツ産業の発展に悪影響をもたらしているというのである。

 こういった現状を踏まえて角川氏は、旧来の著作権に対する考え方を見直すべき時期が来ていると主張する。ライトなユーザーを取り込める新しい利用方法を規定することで、ユーザーにとってもコンテンツ提供者にとってもメリットのある著作権のあり方を模索するべきであるということだ。

 同氏が提案する「閲覧権」は、ユーザーにはコンテンツを自由に楽しむことを許す一方で、非常に安価な閲覧料を徴収するなどし、著作者にも一定のお金が入るような仕組みを考えていくものだという。信頼性の高いDRM技術の導入によって、ユーザーの利用状況を集中管理し、「広く、薄く、あまねく」対価を徴収できれば、平等で、著作者、事業者、国民(ユーザー)の権利のバランスが取れたシステムが可能になるのではないかというのが主旨である。

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