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NVIDIA、電源や冷却システムを管理する規格「ESA」を発表

2007年11月05日 23時00分更新

文● 編集部 小西利明

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 米エヌビディア社(NVIDIA)は5日、PCケース(シャーシ)や電源ユニット冷却システムのリアルタイム管理を実現する規格「ESA」(Enthusiast System Architecture)を発表した。対応するシステムでは筐体内温度やシステムの動作状況を監視し、動的に電源出力やファンの動作を制御できる。

ワリード・ザメル氏

NVIDIA プラットフォームプロダクト部門テクニカルマーケティングマネージャーのワリード・ザメル氏

 同日、東京都内にて開かれた記者説明会では、NVIDIA プラットフォームプロダクト部門テクニカルマーケティングマネージャーのワリード・ザメル(Waleed Zamel)氏により、ESAの概念と利点についての説明が行なわれた。

 ESAはシャーシ、電源ユニット、冷却システムといったPCを構成するコンポーネントの状態を各種センサーで収集し、それらが集めた情報をアプリケーション上で監視、管理するための標準化された手段を提供するものである。これらはPCのパフォーマンスに直接関わるものではないが、PCの信頼性に大きく関わるほか、放熱などの面で間接的にパフォーマンスにも影響する。

シャーシや電源、冷却システムの情報を得る標準化された手段はない

シャーシや電源、冷却システムの情報を得たり、これらを操作する業界標準の手段は提供されていない

ESAはこの状況を変える

ESAはこの状況を変え、PCのほかのコンポーネントのように監視・操作のための標準化されたインターフェースを提供する

 既存のPCでも、CPUやグラフィックスチップ(GPU)、シャーシ内の温度、ファンの回転数を監視する手段は用意されている。オーバークロックのためのツールを添付したマザーボードでも珍しいものではない。しかし、これらは基本的に各マザーボードやコンポーネントのメーカー固有のソフトウェアとされていて、メーカーをまたいで標準的に使えるものではない。ESAはこれらを標準化して、異なるメーカーのコンポーネントを組み合わせても管理が行なえる環境の構築を目指している。

 ESAを利用するコンポーネントは、各センサーが集めた情報をマザーボード、最終的にはアプリケーションに伝達するために、インターフェースとしてUSBを用いる。USB HID(Human Input Device、キーボードなど入力装置)を模して動作するが、通信にはESAが規定する仕様を用いる。ESAの仕様については、USBの標準化組織である「USB Implementers Forum」に提案されているという。

電源ユニットにおけるESAの実装例

電源ユニットにおけるESAの実装例。センサーを束ねるコントローラーとPCが、USB経由で通信する

 ESAに対応した環境では、単に各コンポーネントのセンサーからの情報を監視するだけでなく、将来的にはOSやアプリケーションの稼働状況に応じた、より賢い動作制御も可能にする。例えば、2DグラフィックスのみのアプリケーションやDVD再生程度なら負荷が低いと判断し、電源からの出力を下げて消費電力を落としたり、ファンの回転数を下げて静音化を行なう。一方で3Dゲームのようにパワーを必要とする環境なら、動的なオーバークロックに合わせて冷却を強化する。ザメル氏はこれらを実現したPCを「スマートPC」と称し、2009年頃に実現されるという見通しを示した。

ESAのおおまかロードマップ

ESAのおおまかなロードマップ。2007年に導入が開始され、段階的により高度な管理機能を実現していく

 また、シャーシには内部の温度状況を立体的に監視できるように、複数の温度センサーを搭載する。これにより、CPUやチップセットの周囲といった加熱しやすい部分だけでなく、シャーシ全体の温度状況を多角的に把握できる。

NVIDIAが開発中のESA対応管理アプリケーション

NVIDIAが開発中のESA対応管理アプリケーション

 ESAに対応したPCを構築するには、対応するシャーシ、電源ユニット、冷却システムと、対応マザーボードおよびアプリケーションが必要となる。例えば、対応マザーボードとアプリケーションがある環境に対応電源を装着すると、プラグインでESAの機能を使えるようになる。対応コンポーネントにはESAの認定を示すマークが付加され、年内に対応機器が登場する予定である。

 ESAはその名称に“Enthusiast”とあるように、ハイエンドのコンシューマー向けパソコンでの導入を想定した規格である。米国では大手PCメーカーが“ゲーマー向けパソコン”として非常にハイスペックのパソコンを販売しているケースが少なくないが、ゲーマー向けパソコンを手がける米デル社、米ヒューレット・パッカード社の大手2社も、ESAの本格採用を表明している。現在はこの2社やNVIDIAのほか、マザーボード大手や電源ユニット、冷却システムなどのメーカーを合わせて15社がパートナー企業として名を連ねているという。

ESAへの対応を表明している企業

ESAへの対応を表明している企業。デルやHPといった大手PCメーカーから、パーツショップでお馴染みのマザーボードや電源のメーカーも名を連ねている


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