MP3プレーヤーは中国においては若者の必須アイテムだ。沿岸から内陸の都市まで、電脳街では競うようにさまざまなMP3プレーヤーが販売されている。
これは裏を返せば、大きな会社から小さな会社まで多くの企業が、こぞってMP3プレーヤーをリリースしている状態であるということで、いきおいメーカー同士の猛烈な価格競争も起きている。
いまだにファミコン互換機の需要がある中国だから
技術的にこなれたものについて、利潤を極限まで削りあう中国メーカー同士の泥沼の価格競争は、MP3プレーヤーが初めてではない。過去にはDVD・VCDプレーヤー、パソコン本体やパソコンパーツ、携帯電話、最近では液晶テレビやプラズマテレビにまでおよぶ。中国メーカーが向かう先には、価格競争があるといっても過言ではないほどだ。
ちょっと脇道にそれたが、すっかり中国の若者に定着したMP3プレーヤーは、例えば“MP3再生機”などと呼ばずに“MP3”と多くの人が呼ぶほどの人気だ。
なぜ人気かといえばコンテンツ、つまりMP3ファイルが豊富にあるからにほかならない。コンテンツとしてのMP3の人気ぶりは、住宅地にある小さなビジネスセンター(印刷物のコピーやデータの印刷などを請け負う店)ですら“MP3下載”(下載はダウンロードの意味)という看板を掲げることからも察することができる。
コンテンツがハードウェアの普及を牽引するのは日本も中国も、そして世界各国おそらく同じだろう。
日本と異なることは、中国では人気を牽引するコンテンツの条件として“良質のコンテンツ”というよりは“ほぼ無料といえる安さ”“コンテンツの量が豊富であること”が重視される点にあると思う。それは例えば、いまだにVCDプレーヤーやファミコン互換機などが現役で販売されていることからもうかがうことができよう。
ネットからの海賊版ダウンロードがあとをたたない
合法かそうでないかはともかく、中国でMP3ファイルを入手する手段にはいくつかある。海賊版CD屋で販売されている、MP3ファイルをこれでもかと詰め込んだCDを購入するのもひとつの手だが、それよりもポピュラーなのは、ネットからのダウンロードだろう。
日本にも展開している中国の大手検索サイト“百度”も、かつてはMP3ファイルを始めとした、音声/映像ファイルを検索する、MP3検索サービスで、利用者のハートをつかんでいた。それに便乗する形で、MP3検索サービスを提供する検索サイトが多数立ち上がった。
昨年ごろから米国を中心にして中国の海賊版普及の現状に対しての中国への圧力が顕著となった。世界の名だたるレーベル企業が百度を相手取り、“MP3捜索”で発生した損害賠償請求を行ない、そして勝訴した。
レーベル連合は、その後も同様の訴訟を、Yahoo中国に対しても起し、同様に勝訴している。中国におけるMP3検索サービスの存在に、中国の司法がNGを出したことで、MP3検索の存在に黄色信号(むしろ赤信号か?)が点滅した。
とはいえ、MP3検索サービスを提供するサイトが「気付かれるまでは黙ってもうけよう」と思っているかどうかは定かではないが、いまだにMP3検索サービスは減る様子はない。小さな検索サイトはもとより、著名な大手ポータルサイトですらも、みなMP3検索サービスを提供している。