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「閉じた世界は死に絶える」

放送業界、マイクロソフト……、古川氏が大いに語る

2007年06月13日 22時30分更新

文● 小西利明 (編集部)

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放送業界の変化をうながす一幕も


 講演のなかでは、IPネットワークによる放送の変化についても、いくつかの事例を挙げて説明され、日本の業界の変化を促す一幕もあった。

 例えば、大手通信事業者である米国のベライゾンが、低価格のIP放送サービスを運営している例では、“放送事業は放送業界の仕事”といった壁はすでに壊れているとした。

 また、英国放送協会(BBC)が、自社のウェブサイトに「自分たちは放送事業者であることを捨てて、お客様に自分たちが提供するコンテンツを、あらゆるデバイス、あらゆるパイプを通じて提供する事業者に生まれ変わります」と書いていることも紹介された。

 これらの例を通じて古川氏が示したかったのは、欧米の放送業界はすでに“IPか放送か”という二者択一ではなく、放送と通信が融合した新たなビジネスモデルの構築を目指しているということだ。日本はそれとは対照的で、優れているのは高速伝送の技術だけで、その上でのビジネス構築や、どういうコンテンツを配信するかについては後塵を拝していると、現状に懸念を示す。



古巣のマイクロソフトにも苦言


 古川氏は、古巣のマイクロソフトにも苦言を呈している。

 デジタル機器間のコンテンツ配信規格のひとつである“DLNA”や、暗号化配信技術の“DTCP over IP”の規格策定に関与しながら、「マイクロソフトがなぜWindows上でサポートを行なわないのか」と疑問を投げかける。また、マイクロソフトのIP TV技術“Microsoft TV”については、「どういうアプリケーションやサービスが実装できるか、という開かれた要素がなければ、死に絶えるしかない」と厳しい見方を示した。

 “閉じた世界は死に絶える”という面では、松下電器産業(株)やソニー(株)が主導するテレビ向けポータルサービス“アクトビラ”についても言及し、テレビだけの閉じた世界になるのはないかとの懸念を示した。

 古川氏は最後に「IPネットワークは単に機器として家庭に入り込んでいるだけでなく、1つの文化を築きつつある、それを感じ取ってもらえれば幸いである」と述べ、講演を締めくくった。これらの提言が日本の放送業界に届き、真にユーザーにとって利益となるサービスの展開につながってほしいものであるが、道はまだ険しいだろう。

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