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国際競争力強化の方向性に言及

KDDI、3月度社長会見を開催

2007年03月14日 19時35分更新

文● 編集部 飯塚岳史

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KDDI(株)は14日、都内にて報道関係者を集め、3月度社長会見を開催した。海上には代表取締役会長兼社長の小野寺正氏らが出席し、国内携帯電話市場の状況やインセンティブモデルによる端末販売の現状、全世界での携帯電話市場における、日本企業の国際競争力などについて話した。

携帯コンテンツ市場が急速な伸びを見せている

小野寺氏

代表取締役会長兼社長の小野寺正氏

小野寺氏はまず国内の携帯電話市場について、「新規加入者数の伸び率は減っているが、端末の出荷台数は減っておらず、機種変更での需要が高い」と説明した。また、端末に迫る勢いで伸びているのが携帯コンテンツ市場で、伸び率は前年比で39%増、一方で携帯電話キャリアー3社の営業収益は、同時期に見るとほぼ横ばいの1.3%増に留まっている。

加入者数

加入者数の伸びは鈍化しているものの、出荷数は落ちていない

携帯コンテンツ市場

携帯コンテンツ市場は前年比約4割増と好調

また、現在の携帯電話市場は、約11兆6000億円の規模になっているが、携帯電話そのものよりも、そこから派生する産業への経済波及効果の方が2倍以上となる26兆8000億円の規模となっており、端末が高度化、高機能化することで、さらに大きく関連産業を成長させられるとしている。

経済効果

携帯電話市場に関連する産業を合わせると経済効果は約27兆円

販売店に、端末に対する販売奨励金を支払うインセンティブモデルに関して小野寺氏は「今までのあり方について疑問がある」という見解については「そのとおりだと思う」と述べながらも、「インセンティブモデルによって、市場が急速に拡大してきた」という従来の主張をそのままに、「ユーザーへの負担については、利用期間に応じたポイントでの還元や機種変更時の利用期間に応じた販売奨励金の設定など、当社では現状での一定の公平性を保っている」と説明した。

インセンティブ

携帯電話市場はインセンティブモデルを前提に加速している(小野寺氏)

また、1月に総務省により開催されたモバイルビジネスモデル研究会の中で、“回線契約について、通信料金や契約期間を定められる”という見解が示されたことを受けて、「過去の例では、携帯電話も公衆回線という扱いで、いつでもどこでも使えるべきであり、利用期間を定めるのはおかしいという見解だったが、今回このような見解が示されたことにより、今後は通信料金や端末の利用期間のパッケージ化なども検討していく」と述べた。

何をもって国際競争力としていくのか、共通のイメージが必要

国際競争力

同社が提唱する5つのジャンルでの国際競争力

日本企業の国産競争力について小野寺氏は「何を持って国際競争力とするのか、それぞれが持つイメージがバラバラなままで議論しても破綻するだけである」とし、“モジュール・部材分野での競争力の維持”“端末メーカーのシェア拡大”“ブランドによる端末展開”“サービス・ビジネスモデルの世界展開”“日本発の技術を世界標準に”といった5つのジャンルを挙げて、それぞれの目指すジャンルによって、政策が正反対になる可能性もあると述べた。

政策

どのジャンルの国際競争力を伸ばしていくかで政策は変わってしまう

小野寺氏は「“モジュール・部材分野での競争力”については、比較的日本製のシェアは高く、現在のインセンティブを前提としたビジネスモデルを堅持し、市場を加速させることで素早く先端的な製品展開ができる。それが国際競争力の源になる」と説明した。一方、「現状で1割程度に留まっている“端末メーカーのシェア拡大”を目指す場合は、モバイルビジネス研究会ではインセンティブモデルと“SIMロック”がメーカーの競争力を削ぐ原因として挙げられているが、逆に現在のような先端的な商品展開はできなくなり、部材・モジュール分野での競争力は低下する可能性がある」と説明した。

次世代技術の標準化については、キャリアー各社の一致が必要

標準化

標準化には、各メーカー、キャリアーの意見一致が必要

携帯電話技術の標準化については、「ユーザー(利用者やキャリアー)と端末メーカーとでは目的が異なる」と述べた上で、「それぞれ求めるものがバラバラになっているために標準化の流れにはなっていない」と説明した。一方でヨーロッパで利用されているGSM方式などを例に挙げて、「向こうでは自社の技術を使うように要求することはなく、“こういうことができる仕組みを作ってほしい”ということをキャリアーが一致して要求するようになっている。しかし日本では、キャリアーがこうして意見を取りまとめることはなく、我々は我々で勝手なことを言っているし、ドコモさんはドコモさんで勝手なことを言っている。まとまっている状況ではない。」と説明した。

またメーカーサイドにも「残念ながら、ドコモの言うことに乗っかっていればビジネスが成り立っていたために、標準化に積極的ではない」と業界全体におけるキャリアー、メーカーの問題点を指摘した。

小野寺氏は併せて、「携帯電話と関連産業を含めた産業全体では、通話料を下げればいいといった短期的なものではなく、日本の国際競争力を高めながら、中長期的かつ持続的・継続的な発展が必要である。それにはさまざまな問題に対するキャリアー、メーカーなどで一致した合意を作っていくことが必要」とまとめた。

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