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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第22回

ボカロで「自由」を手に入れた 佐久間正英が語る音楽の未来

2010年05月08日 12時00分更新

文● 四本淑三

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「僕らは現場でやっていて、すごいジレンマなんだよね」

―― 逆に最近のメジャーシーンをどう見てます?

佐久間 知っての通り、総じてダメでしょ。でも全体では活性化していると思う。すごく自由な、いい時代に向かっている。ただ、いまだに足かせもある。

―― 足かせって何ですか?

佐久間 たとえば著作権問題。メジャーなレコード会社であったりとか。

―― 逆に、いい状況というのは?

佐久間 皆が自由に発表出来ること。ボカロのことなんかもそうだしね。だって今までは届けられなかったんだもん。どんないい曲ができようが発表する場がなくて。

自身のウェブサイトでも曲のアップは告知している

―― 裏返すと「昔は自由じゃなかった」ってことですね?

佐久間 僕らは現場でやっていて、すごいジレンマなんだよね。せっかく「いい歌できたから、今歌って聴かせたいんだぜ!」って言っても、最高に早くても3ヵ月はかかる。ヘタすりゃ半年くらいのタイムラグがある。その挙句に「やっぱりあの曲じゃシングルは無理だね」なんてレコード会社に言われるわけでしょ。売るための意見も大事なんだけど、少なくとも自由ではないよね。ほんの一握りの人達は、その中でも自由にできるけど。

―― でもストリートでライブをやっている人たちには目標があるわけですよ。「このままやって俺たちビッグになるぜ!」とか。どうなんですか、佐久間さんは。今さらビッグに? って気もしますけど。

佐久間 僕みたいな立場の人間は、こういうことは許されなかったんだよね。だけど、こうやって手放しで喜んでいる自分を含めて、この状況は良いものだと思うよ。目標は考えてない。続けられっこないなと思ってたしね、飽きっぽいから。ただ毎日上げることで、なにかが起きるんじゃないかと思ってる。

―― あのシリーズはやりっ放しにしておくんですか?

佐久間 扱いが難しいよね。曲数が多いし、CDにするのもリアリティがないし。いきなりBOXセットになっちゃうから。それで「SoundCloudというのをチェックしていたんだけど、発展的な使い方を思いつかなかった。だから自分で用意するか、どこかと組んでやるかということになるのかな。

SoundCloud : 楽曲データの共有サービス。佐久間氏はここで、2006年制作で公開に至らなかったというアルバム「Namino ManiMani」等を非圧縮の高音質ファイルで公開している

Image from Amazon.co.jp
CRYSTAFIA

―― 実在の歌手に歌ってもらうなんてことは?

佐久間 それを考えながら作ってる曲もあるよ。3曲目「FALL」はCojokというグループがやってくれるって。いまアレンジ中。あれは実際、彼らをイメージして作っていたから。彼らは本当に素晴らしい音楽をやっているよね。

Cojok : Kco、阿瀬さとしの二人組のユニット。北欧調の雄大なサウンドが特徴。2009年4月7日に1stアルバム「CRYSTAFIA」をリリース

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