なぜクラウドストレージに切り替える企業が増えているのか

ファイルサーバー/NASとクラウドストレージの違いとは?《基本編》

文●大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

提供: Dropbox

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ファイルサーバーとクラウドストレージの違い 基本編

 パソコン内のファイルを社員どうしで共有して利用するために、社内に設置したファイルサーバーやNASを利用しているオフィスはまだまだ多いと思います。しかし最近では、このファイルサーバー/NASを「クラウドストレージ」のサービスに切り替える企業も増えています。なぜなのでしょうか?

 今回の記事では、ファイルサーバー/NAS(以下「ファイルサーバー」とまとめます)とクラウドストレージの基本的な違い、そして、なぜクラウドストレージを選ぶ企業が増えているのかについてご説明します。

「設置場所」の違い:クラウドにあれば利便性が大きく広がる

 ファイルサーバーとクラウドストレージの大きな違いは、まず「設置場所」です。

 ファイルサーバーは通常、オフィス内(社内のサーバールームなども含む)に設置され、パソコンから社内ネットワーク(LAN)経由でアクセスして利用します※注。一方で、クラウドストレージの場合は、サービスを提供する事業者(プロバイダー)のデータセンターに設置されており、インターネット経由でアクセスして利用するかたちとなります。

※注:そのため、社外から社内のファイルサーバーにアクセスするには、通常は別途「VPN」を使ってパソコンを社内ネットワークに接続し、それからアクセスする必要があります。

 現在ではインターネット回線が高速ですから、クラウドストレージにファイルをアップロード/ダウンロードするのも昔ほどは時間がかかりません。また、パソコン上のファイルとクラウドストレージ上のファイルを自動で「同期」させる仕組みで、アップロード/ダウンロードにかかる時間を意識させないクラウドストレージもあります(Dropboxがその代表例です)。

 “ファイルの保管庫”であるクラウドストレージを、インターネット経由でアクセスできる場所(社外にあるプロバイダーのデータセンター)に置くことで、さまざまな場面で利便性が高まります。たとえば「社員が出張先や外出先、テレワーク環境からでもアクセスできる」「取引先など社外の人とも(アクセスを許可すれば)簡単にファイル共有ができる」といったことです。

 一方、「インターネット経由でアクセスできる社外のクラウドにファイルを置く」という点で、クラウドストレージのセキュリティに不安をおぼえる方もいると思います。しかし、現在のクラウドストレージは多要素認証、ファイル/フォルダごとの細かなアクセス権限設定、ランサムウェア攻撃の自動検知といった、高度なセキュリティ機能を備えるものがほとんどです。利用する側できちんと設定さえすれば、むしろファイルサーバーよりも高いセキュリティが実現できます。

「製品かサービスか」の違い:常に最新機能が使えるクラウドストレージ

 IT管理者の立場で考えると、「製品かサービスか」という点も、ファイルサーバーとクラウドストレージの大きな違いです(「所有か利用か」と表現されることもあります)。

 ファイルサーバーの場合は、サーバー本体やOS/ソフトウェアといった製品を購入(所有)してオフィスに設置し、自社で運用しながら何年間か使い続けます。一方で、クラウドストレージの場合は、サーバーやソフトウェアを所有して運用するのはプロバイダー側の役割であり、ユーザー企業はその環境(サービス)を利用するかたちとなります。

 こうした違いは「コスト」のかかり方の違いに影響します。ファイルサーバーの場合は、導入するタイミングでサーバーやOSの購入代金がまとめてかかりますが、購入後はコストはかかりません(電気代やメンテナンスコストはかかります)。一方で、クラウドストレージの場合は導入時のコストがかかりませんが、利用している間は継続的にサービス利用料がかかります(通常は「月額でいくら」というサブスク型の課金方式です)。

 購入/利用にかかるコストだけでなく、長年にわたってかかる「運用のコスト」も違います。ファイルサーバーでは、OSアップデートなどの定期的なメンテナンス作業や、故障/トラブル発生時の対応作業などを自社(IT管理者)で行うことになります。しかし、クラウドストレージの場合はプロバイダーがそうした運用作業を担当し、IT管理者は利用ユーザーの管理など限られた作業だけを行えば済みます。その結果、運用コストが大幅に下がります。

 「容量の拡張性」にも違いがあります。ファイルサーバーの場合は、この先数年間(次に買い換えるタイミングまで)を見越して、必要になりそうなドライブ容量をあらかじめ用意しておく必要があります。容量が足りなくなった場合は、あらためて予算を確保し、ドライブを増設しなければなりません。一方、クラウドストレージの場合は、現在必要な容量のプランを契約しておき、必要になった時点でより大きな容量のプランに変更することができます。使用量が急に増えても問題ありません。

 また、製品かサービスかで「最新機能へのアップデート」にも違いが生まれます。ファイルサーバーの場合、製品を購入した後に新機能が追加されることはなく、数年後に買い換えるまでは同じ機能のままです。一方で、クラウドストレージではソフトウェアのアップデートが継続的に行われ、サービスに新機能が追加されていきます。常に最新版が使えるのが、クラウドストレージのメリットです。

* * *

 冒頭で触れた「なぜ多くの企業がクラウドストレージに切り替えているのか?」という質問への答えは、「クラウドストレージには(今回ご説明したような)数々のメリットがあるから」ということになります。

 加えて、クラウドストレージの機能進化は非常に速く、たとえば最近では、蓄積したファイル内の情報を生成AIが活用するような“クラウドストレージでしか実現できない(ファイルサーバーではできない)”機能も登場しています。ファイルサーバーからクラウドストレージに移行する動きは、今後も止まることはないでしょう。

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