佐久間正英さん率いるロックグループ・unsuspected monogram(アンサスペクテッド・モノグラム)の新作、「the mass」がリリースされた。インターネット側にシフトした、佐久間さんの一連の仕事における集大成とも言えるアルバムだ(関連記事)。
もちろんリリースは佐久間さん自身のレーベル、サーキュラートーンレコーズから。CDとしてはレーベル初のリリースだ。すでに公式サイトからApple LosslessとMP3で配信が始まっているほか、nauやOTOTOYを始めとした各種音楽配信サイトでも配信されている。当然、いずれもDRMはかけられていない。
このアルバムの発売を記念し、11日(本日!)の22時から、インターネットでのライブ中継が行なわれる。詳細はサーキュラートーンレコーズの公式サイトで!
さて、このアルバムでユニークなのは、何と言ってもレコーディングの手法だ。いわゆる「一発録り」で、アルバム全体をわずか5時間ほどで録り終えている。レコーディングは8月26日の夜、山梨県の河口湖スタジオで行なわれた。
レコーディングの模様もUstreamで生中継され、延べ1万4500人ほどが視聴したという。今回のCDはその際に演奏した曲順で収録されているというこだわりようだ。
そのレコーディングは単に奇抜なだけでなく、やはり現状の音楽制作のシステムを佐久間さんなりに見直した結果でもあったようだ。今回のエンジニアリングを担当した佐久間さんと、24歳の若き女性エンジニア・中崎文恵さんに話を伺った。
「全部自分でやる」のは後ろめたい
―― まず佐久間さんと中崎さんの関係を教えてください。
佐久間 基本的なセッティングは僕がやるけど、録りの時は彼女がチーフエンジニア。僕は演奏中にエンジニアはやれないからね。
―― 中崎さんは、ここ(Dog House Studio)にいつ頃入ったんですか? まだ女性エンジニアってそう多くはないと思うんですが。
中崎 2007年です。その前は映像をやっていました。ヒビノでライブのビデオエンジニアです。LEDの画面を組んだりということもやっていましたけど、ヘルメットをかぶって。
―― ヘルメット?
中崎 大型スクリーンですね。ほとんど工事現場のようなものでしたけど。
―― じゃあレコーディングエンジニアはここが初めて?
中崎 はい。「ProToolsってなに?」って感じでしたけど。実際働いたのは1年くらい。その後、スタジオを離れて、2年くらいプー太郎してました。
佐久間 そこで再び出会ったのが運の尽きで。またエンジニアに引き戻されて、こき使われてるんです。
中崎 最初はトラ※でしたよね? サーキュラートーンで「hachi」というバンドがあるんですけど、その録りで。
※ トラ : 「エキストラ」から来た業界用語。予定をキャンセルした人の代わりに仕事をすること。あるいは代役で仕事をする人のこと
佐久間 彼女の師匠に当たる人が、ダブルブッキングで来られなくなっちゃったんだよね。それで、たまたまいたもんだから、お前がやれと。
中崎 2年ぶりに卓の前に座らされて。
―― それはひどい。佐久間さんが中崎さんを誘ったのは、手がけるバンドが多すぎて、手が足りないからとか?
佐久間 いや、じゃなくてね。僕は外国のようなスタイルの、エンジニア・プロデューサーがやりたかったんだけど。
―― 音の質感も含めてトータルでプロデュースするということですよね?
佐久間 でも日本では分業になってるでしょ、エンジニアとプロデューサーが。アシスタントだって分業じゃない? 海外じゃアシスタントなんていない。エンジニアとプロデューサーも分業じゃない。でも、業界システム的にエンジニアはエンジニアとして雇わなければならないようなところもあって。全部自分でやると後ろめたい感じがしちゃうんだよね。
―― サーキュラートーンではそれがやれると。
佐久間 ところが年齢が年齢なもので。高域難聴なわけですよ、すでに。ノイズがあってもチェックできないとかね。そこはヘルプしろと。
―― それには若いヤツが必要だぞと。
佐久間 なおかつ自分と感覚が近いヤツ、やりたいことが分かってくれるヤツがいい。そしてズケズケ文句……じゃないや、指導してくださるヤツ……それも違うな。ええと、なんていうの?
中崎 「あのー、それ間違ってます(棒読み)」って言う人ですよねー。
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