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特許から見るデジタルセラピューティクス(DTx)

連載
知財で読み解くITビジネス by IPTech

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DTxにおける今後の特許戦略の将来

 DTxがどれほどの市場規模に発展するか、現状において定かではありません。そのような状況下では、先行企業が薬事承認を取得し、特許を取得してしまえば、2番手の企業は、競争をためらうようになります。しかしながら、大きな市場があることがわかり、DTxにより収益を上げられることが明らかとなると、競合企業が生じ、先行企業が開発したアプリの改良を予測して特許を取得する可能性もゼロではありません。

 現状においては、治療用アプリの実装に沿った発明について特許を取得するようになっていますが、将来的には、治療用アプリを改良する方向についても特許を複数取得するようになるかもしれません。

 また、糖尿病や高血圧等の患者数が多い疾患を治療するための治療用アプリについては、市場が大きくなると期待でき、薬価を抑えられるため医療費削減といった社会要請にも対応しています。患者数が多い疾患の治療を支援するアプリについて、薬事承認の取得が可能であることが明らかとなったら、製薬大手も開発を進めると考えられ、さらに特許の取得が大切になってくると考えられます。

 医薬品業界では、1薬品1特許が一般的であり、特許の価値が非常に高いものとなっています。これに対し、スマートフォン等のITデバイスでは一つのプロダクトに複数の特許が関係することが多く、特許の価値、強さは、医薬品業界に比べ、相対的に弱くなっています。DTxでは、一つのDTxが一つの特許で保護されることもあるとは思いますが、必ずしも一対一で保護される必要はありません。先述したCureApp SCニコチン依存症治療アプリ及びCOチェッカーのように、複数の特許で一つのDTxが保護されることもあり得ます。DTxにおける特許の価値は、医薬品業界よりも低く、ITデバイスよりも高いものになりそうです。

著者紹介:IPTech特許業務法人

2018年設立。IT系/スタートアップに特化した新しい特許事務所。(執筆:中島千尋)

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