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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第390回

日本のユニコーンは8社どまり 政府目標「100社」への遠い道のり

2026年06月02日 07時00分更新

文● 小島寛明

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 日本のスタートアップ育成政策の見通しは、決して明るいとは言い難いようだ。

 経済産業省は2026年5月21日、「スタートアップエコシステム調査2026」という報告書を公表した。同省がPwCコンサルテイングに委託した調査の報告書だ。政府は2022年11月に「スタートアップ育成5か年計画」を決定し、具体的な期限は示さないものの「ユニコーンを100社」創出し、2027年にスタートアップへの投資額を10兆円規模にするという高いハードルを設定している。この報告書は、5か年計画の途中経過を示すもので、日本のスタートアップ政策の現在地を知ることができる。

 5か年計画の開始から3年半が経過したものの、報告書が引用したCB Insightの2026年1月6日のデータによれば、日本のユニコーンは8社にとどまっており、政府が長期的な目標に掲げている「100社」には遠く及ばない。しかし筆者は、日本から米国のIT大手と張り合えるスタートアップが出現するといいなと真剣に願っている。それだけに、今回はこの報告書の中身を熟読してみたい。

スタートアップと中小企業は何が違う?

 報告書の中身に入る前に、スタートアップやユニコーンといった言葉の定義を確認しておきたい。スタートアップは、創業間もない中小企業や、ベンチャー企業とはどう違うのか。経済産業省の各種報告書を確認すると、まず、中小企業は資本金や従業員の規模が小さい企業を指す。そうすると、スタートアップもベンチャーも最初は、普通の中小企業に分類されるはずだ。

 ベンチャーは、大企業が取り組みにくい独自の技術やアイデアで成長する企業を示す言葉であるようだ。その意味は、スタートアップより広い。スタートアップについては、この報告書は「外部出資を受けている/受ける意向のある未上場企業がスタートアップと呼ばれる傾向あり」としたうえで、株式公開後の企業や、大企業などに買収された企業もスタートアップに含めている。そして、ユニコーンという言葉は、国際的にも、時価総額が10億ドルを超える未上場企業を指すというのが共通の理解だろう。

 設立からおおむね10年以内がスタートアップと言われることが多いが、この調査では、1995年以降に設立され、外部から出資を受けている未上場の企業と、すでに上場している企業、買収された企業計1万364社を「スタートアップ」と定義している。この定義では、楽天グループやサイバーエージェントといった企業もスタートアップに入る。

 冒頭で触れたスタートアップ育成5か年計画では、スタートアップを10万社創出するという目標も掲げている。スタートアップの数は、定義次第でかなり上下に動きそうだが、はっきりした定義を用いると、人口減少社会の日本において、10万社という目標の達成は、かなり困難なものであることがわかる。

 この報告書は、スタートアップ企業が、株式市場への上場(IPO)に至ったり、他の企業に買収されたりした(M&A)場合、「Exit済み」として扱っている。このExitという言葉は、スタートアップ企業がIPOやM&Aで、一定の目標を達成して出口(exit)にたどり着いたことを意味する。こうしたExit済みの企業は、調査対象の1万364社のうち、2374社で、全体の23%にあたる。一方で、こうしたExit済の企業が、スタートアップ企業が生み出すGDP約13.66兆円(2025年)の75%を占めている。やはり、上場したり、他社に買収されたりする企業の稼ぐ力は高いということがわかる調査結果だ。

 報告書はまた、日本、米国、英国、フランス、韓国、シンガポールの6か国を対象に、国際比較を行っている。IPOの件数については、2016年から2025年の累計で320件と、米国の788件、韓国の406件に次いで、3位だった。悪くない数字に見えるが、1件あたりのIPO調達額は28百万ドルで、比較対象の6ヵ国のなかで最低だ。トップの米国の225百万ドルと比べると、IPOによる調達額は8分の1ほどにとどまっている。日本市場では、スタートアップのIPOの件数こそ多いが、規模の小さいIPOが多くを占めるということになるだろう。M&Aによる調達額の平均も最下位だった。

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