エンタープライズ利用の仕組みを整え、「6人・半年間」の開発を「1人・1週間」に
バイブコーディング+FDE伴走で“パーソナライズSaaS” SMFLが「Replit」で個別開発を高速化
2026年11月09日 07時30分更新
三井住友ファイナンス&リース(SMFL)は、2026年11月4日、バイブコーディングの手法を用いて企業の要件に合わせたSaaSを高速開発する「企業向けパーソナライズ型SaaS」の提供を開始した。同社の資産管理クラウド「assetforce」のカスタマイズや同クラウドを基盤としたシステム開発を、クラウド開発環境「Replit(レプリット)」を用いて手掛けるサービスだ。
その特徴は、AIを活用した企業システム開発における「トークン」や「品質」の課題をクリアする環境を整備し、同社の「FDE(Forward Deployed Engineer)」が現場に入り込んで伴走型で個別開発する点にある。
同サービスの発表会にて、三井住友ファイナンス&リース代表取締役社長の今枝哲郎氏は、「Replitのパーソナライズの力をassetforceの機能や可能性と掛け合わせ、個別カスタマイズの手間と時間という高い壁を越えたい」と語った。
リース会社がシステム作りを変える理由
リース会社であるSMFLが、なぜ企業システムを提供し、さらには新しいシステム作りに挑戦するに至ったのか。
同社は、工業設備やパソコン、航空機まで多様な「モノ」を提供しており、営業資産は約9兆円にも上る。一方で、これらのモノが、どこでどんな状態で存在し、いつ更新・処分されるかは、長年にわたり紙の台帳や表計算ソフトで分散管理してきた。
転機となったのは2016年、内製開発部隊を擁する日本GEのリース事業部門を買収したことだ。ここから同社では、「自社で使って磨いた上で顧客に届ける」というカスタマーゼロの文化が育まれていく。
クラウド型の資産管理システムを内製開発し、資産の一元管理とアナログな現場業務の一掃を実現。さらに自社利用で改善を重ね、2021年から「assetforce」として外販を開始した。同サービスは、有償契約が200社を超え、登録資産データは400万点に達する。
一方で、新たな課題も浮かび上がってきた。assetforceは、ユーザー自身で項目設定や承認フローを構築できる柔軟性を備えるものの、企業固有の要件に応えるカスタマイズのニーズは根強く、その対応には相応の手間と時間がかかっていた。
こうした個別開発のハードルを下げるブレイクスルーとして、SMFLが採用したのが、AIとの対話によって高速に開発を進める「バイブコーディング」の手法とそのための開発基盤「Replit」である。
AI開発の「効率」「確かさ」の課題をどう克服したか
Replitは、創業者CEOのアムジャド・マサド(Amjad Masad)氏らが開発したブラウザベースの開発環境だ。「いつでもどこでも、コードの知識がなくてもアプリを作れるようにする」という想いから生まれ、教育分野や個人開発者への普及を経て、今ではエンタープライズ領域にも進出している。
今枝氏は同基盤について、「『こんな画面にしたい』『こんな業務を楽にしたい』と指示を出せば、AIがコードを書き、動くアプリへと仕上げてくれる。自由な発想をそのまま形にし、実際に使えるアプリとしてリリースできる基盤」だと評する。
一方で、来日したマサド氏はSMFLについて「日本で最初のエンタープライズ顧客であり、世界でも最も緊密なパートナーのひとつ」と語った。なお、Replitはこのタイミングで、同社初のアジア拠点となる日本オフィスも開設している。
このReplitでの開発に、課題を最も熟知する顧客自身の発想を加え、さらにassetforceに蓄積されたモノの管理のデータをつなぐ――。これこそが、今回提供される企業向けパーソナライズ型SaaSのコアコンセプトだ。しかし、これを企業向け業務アプリケーションとして耐えうるものにするには、さまざまな仕組みが必要だった。
まずは、Replitで開発したアプリケーションとassetforceを結びつけるために、「ADP(assetforce data platform)」を開発。同基盤で両者を安全に接続し、許可されたデータと操作だけを安全に通す環境を整えた。
さらに「効率」と「確かさ」も求められた。効率面で課題となったのは、生成AIを大規模開発に適用するとAIとのやりとりが重複し、トークン消費量が急増してしまう点だ。そこで同社は、作業単位ごとにAIへ渡すコンテキストを分割し、最後に作業を統合するという「コンテキスト分割」の手法を確立して、開発効率を向上させた。
エンタープライズ利用で求められる確かさの担保に対しては、独立した品質管理エージェントが決定論的なテストを自律実行する仕組みを構築。その上で、最終的には同社のエンジニアが検証を行う「ヒューマン・イン・ザ・ループ」の工程も組み込んでいる。
同社が「エンタープライズバイブコーディング」と呼ぶこれらの仕組みや手法は、既に成果を上げている。
同社が外販する固定資産の償却計算システムの刷新プロジェクトに、Replitとエンタープライズバイブコーディングを適用。その結果、要件定義後の開発・テスト期間が3分の1まで圧縮できる見込みだという。
さらに、assetforceの個別カスタマイズでも試行している。顧客固有の画面・機能をReplitで開発して、ADPを通じてassetforceへ接続。目論見通り、従来の個別開発で「6人で約半年間」を要していた工数は「1人で1週間」にまで短縮された。
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