情シス視点の「フィジカルAI元年」 インフラ構築からソリューション選定まで 第3回
“リアルワールドAI基盤”を掲げるSORACOMと日本で攻勢をかけるOTセキュリティ専業ベンダー
フィジカルAIを支える「攻めのIoT基盤」と「守りのOTセキュリティ」
2026年08月31日 11時30分更新
人手不足解消の切り札として期待が高まる「フィジカルAI」を情報システム部門(情シス)視点で整理する本連載。前回(第2回)は、「現場のデータ」を活かすソリューションとして「状況認識AI」と「デジタルツイン」を紹介した。
第3回となる今回は、情シスが構築すべきインフラとして、フィジカルAIを推進する「攻めのIoT基盤」とリスクを抑える「守りのOTセキュリティ」について、代表的なソリューションを交えて解説する。
通信が鍵になる中、「IoT」はフィジカルAIのインフラへ
フィジカルAIにおける、現実世界と仮想空間をつなぐ架け橋となるのがネットワークであり、その要件に応えるのがIoT基盤だ。
ただし、フィジカルAIでは、「センサーが現実を認識→AIが判断→ロボットや機器が行動→その結果を再び認識」というループを回し続けることになる。このループのどこかで通信が途切れると物理的な事故に直結するため、ネットワークには「絶対に途切れない確実性」が求められる。IoT基盤が提供する、マルチキャリアや複数の手段を組み合わせた通信冗長化の仕組みは、まさにこの要件に応えるものだ。
さらにIoT基盤では、フィジカルAIの現場に点在する多種多様なデバイスを管理・認証・監視する仕組みも備えている。そして、現場データをクラウド上のAI・MLやデジタルツインに引き渡す、データの収集から前処理、安全な伝送、正規化に至るまでの「データパイプライン」としての役割も担う。
また、構築においては、第1回で触れたように「AIの判断をどこで実行するか」が重要なポイントになる。エッジ(デバイス)側で推論を処理すれば、リアルタイム性を確保でき、クラウドへのデータ転送量も抑えられるが、全処理をエッジに委ねるのは能力的に困難だ。
そのため、ロボットの衝突回避や異常検知のようなリアルタイム性が求められる判断だけをエッジAIに任せ、大規模な学習や高度な判断はクラウドに担わせるハイブリッド設計が基本になる。また、エッジAIであっても、運用や更新のためにIoT通信が不可欠な点も忘れてはならない。
“リアルワールドAIプラットフォーム”の実現を目指すSORACOM
こうしたフィジカルAIとの親和性を前面に打ち出しているのが、ソラコムが手掛ける国内発のIoTプラットフォーム「SORACOM」である。同社は、フィジカルAIに必要な通信要件として「運用と更新を支える接続環境」「大容量データへの対応」「セキュアなデータ連携」を挙げ、同社の10年にわたるIoT基盤運用のノウハウが、そのまま同領域でも強みになると位置づけている。
通信面では、複数の通信プロファイルを切り替えられる「SORACOM Connectivity Hypervisor」やWi-FiやEthernet、衛星通信などをセルラー同等にセキュアにつなぐ「SORACOM Arc」などを提供し、あらゆる環境下での途切れない通信を実現。高頻度・高解像度データの送受信が前提となるフィジカルAI向けに、1TB(テラバイト)以上の大容量通信に対応した法人向けSIMプランも展開中だ。
AI連携では、アプリケーションビルダーである「SORACOM Flux」を提供。現場で収集したデータに処理ルールを定義して、複数のAIを組み合わせた分析・判断をノーコードで設計でき、例えば「カメラ映像から異常を検知してアラートを出す」といった仕組みを非技術者でも構築することが可能だ。
運用面では、回線管理にAIを組み込んだ「SORACOM Query」で、大量デバイスの死活管理や運用管理を効率化することもできる。さらに、こうしたIoTの仕組みづくりや運用を支援するマネージメントAIエージェントとして「SORACOM Agent」をテクノロジープレビュー中だ。
ソラコムは2025年、現実世界のデータをAIで価値に転換するビジョンとして「リアルワールドAIプラットフォーム」を打ち出しており、今後も同戦略の下、AI時代のインフラを支えるIoT基盤としてさらなる機能拡張を図っていく方針だ。
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