情シス視点の「フィジカルAI元年」 インフラ構築からソリューション選定まで 第3回
“リアルワールドAI基盤”を掲げるSORACOMと日本で攻勢をかけるOTセキュリティ専業ベンダー
フィジカルAIを支える「攻めのIoT基盤」と「守りのOTセキュリティ」
2026年08月31日 11時30分更新
守りの土台に不可欠な“OTセキュリティ”構築のポイント
フィジカルAIにおいて、IoT基盤が新たな価値を生み出すための「攻めの土台」だとすれば、その安全性を支える「守りの土台」といえるのがOTセキュリティだ。フィジカルAIによって新たに生じる攻撃対象領域を保護し、インシデントによる現場の停止やビジネス損失を最小化するための不可欠な投資といえる。
このOTセキュリティを構築する際のポイントを3つ挙げる。
①資産の可視化とゾーニング
「守るべき機械やデータを特定し、重要度に応じてネットワークを区切る(ゾーン分割)」ことが、OTセキュリティの第一歩だ。フィジカルAIの導入に伴い、センサー・ロボットエッジ端末が新たな接続ポイントとして急増するため、まず「何がネットワークに接続されている」かを正確に把握する資産の可視化が大前提となる。
②IT・OT境界を越えたリスクの一元管理
サプライチェーンやOT経由の侵入により、工場の稼働が停止する被害が実際に発生し、さらには、IT側からOT側へと脅威が横展開するケースも考えられる。IT・OT・AIにまたがる攻撃対象領域全体で脆弱性や脅威を可視化し、対応の優先順位付けができる統合基盤を構築することが理想である。
③稼働を止めずに守る「実運用に耐える」設計
現場には「稼働を止められない」「古い機械が混在する」という制約があるため、パッチ適用が困難な資産にはネットワーク側での防御(セグメンテーション、異常検知など)で補う、「実用に耐える設計」が現実的となる。
なお、これらはあくまでOT領域を中心としたセキュリティ構築のポイントである。フィジカルAIでは、第1回目でも述べたように、「誤った判断をさせない」ためのAIガバナンスや、物理的な機器のセーフティまで考慮する必要がある。デジタル・物理空間・AIの3つが密接に融合するフィジカルAIの環境では、かつてないほど高密度な「多層防御」の考えが不可欠だ。
ガートナーが“リーダー”に位置付けるOTセキュリティ専業ベンダー
こうしたOTセキュリティを提供するベンダーとして、過去のOTセキュリティの特集では、フォーティネット・パロアルトネットワークス・TXOne Networks・OPSWAT・Nozomi Networksの5社を紹介した。ここでは、ガートナー社の2026年版「CPS Protection Platforms(サイバーフィジカルシステム保護プラットフォーム)」でリーダーに位置付けられる「Claroty」と「Dragos」を取り上げる。
■Dragos
まずは、OT/ICS特化のセキュリティベンダーであるDragos(ドラゴス)だ。
その強みは、CISA(米国サイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁)に参照されるほど高度な「OT特有の脅威に対する分析力」にある。独自の調査機関が提供する脅威インテリジェンスをベースとしたOTセキュリティを展開。多種多様な産業用プロトコルの解析にも対応し、複雑なOT環境を可視化できる。
中核となるOTセキュリティ基盤「Dragos Platform」は、資産・トラフィック・脆弱性の可視化から、侵害・不正行為の検知・優先度付け、フォレンジックまでの機能を包括的に提供。脆弱性管理では、IT向けの評価指標(CVSS)だけではなく、独自の優先度モデルで運用への影響を最小化している。最新版「Dragos Platform 3.0」ではAIモデルをバックエンド処理に活用し、脆弱性分析の精度向上とワークフローの高速化を図っている。
Dragosの包括的なOTセキュリティソリューション(マクニカサイトより)
日本市場においては、2023年にマクニカと代理店契約を締結。2026年4月には国内初のカントリー・マネージャーとして仁枝かおり氏を任命し、本格的な事業拡大を進めている。
■Claroty
続いて紹介するのは、2015年にイスラエルで創業し(現本社は米国)、グローバル1万拠点以上の工場・プラント・病院への導入実績を持つClaroty(クラロティ)だ。
Dragosと同様に専門性の高さが強みであるが、Clarotyは製造業にとどまらず、リテールやヘルスケアなど、現実世界と仮想空間を融合するシステム(CPS)全体をカバーする点が特徴だ。さらに、イスラエル国防軍のサイバー精鋭部隊出身者を中心に構成されたリサーチ組織「Team82」の知見が同社の強みを裏付け、脅威インテリジェンスとして共有される。
中核をなすソリューション「xDome」は、資産の可視化からリスク・脆弱性管理、ネットワーク保護、脅威検知、セキュアリモートアクセスまでを統合したクラウド型のセキュリティ統合基盤だ。既存のIT向けセキュリティとの統合に優れ、ITとOTを跨いだ統合監視をスムーズに構築できる。Team82の専門知識と同社が蓄積してきたCPSデータを学習した、対応・運用を支援するセキュリティエージェント「Claire」も実装済みだ。
xDome上で利用できるセキュリティエージェント「Claire」Clarotyサイトより
日本市場では、パートナー経由の間接販売モデルを採用しており、その強みが活きるOTセキュリティや特定産業領域に高い専門性を持つパートナーを拡充中だ。
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