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Mr.ウォーカー玉置泰紀が厳選! おすすめスポット/アイテムベスト5 第23回

【決定版・フェルメール『真珠の耳飾りの少女』展で見逃せない5つの謎】大阪中之島美術館のみでの14年ぶりの奇跡の来日。少女に隠された科学の物語に惹き込まれる

2026年08月21日 19時00分更新

文● 玉置泰紀(元エリアLOVEウォーカー総編集長、一般社団法人メタ観光推進機構理事)

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見逃せないオランダ絵画の名品ベスト5

第5位:フェルメールより人気だった、牛を描く天才の早すぎる遺産

パウルス・ポッテル『水に映る牛』(1648年、油彩/板/43.4×61.3cm )。右端中央に署名と年記: Paulus Potter. f. 1648.。来歴: (?) デ・ヴォルフ・コレクション、アムステルダム;ゴーヴェルト・ファン・スリンゲラント、ハーグ、1752–1767年頃 ハーグ、ホーフェルト・ファン・スリンゲラント:1767–1768年 その未亡人アガタ・ハイデコペル:1768年5月18日 ハーグ、ファン・スリンゲラントの競売:コレクション全体をオランダ公ウィレム5世に売却:1768–1795年 ハーグ、ウィレム5世;1795–1815年 パリ、フランス軍に接収され、中央美術館/ナポレオン美術館(ルーヴル美術館)に移管;1816年 ハーグ、ウィレム5世ギャラリー内王立絵画館;1822年 マウリッツハイス美術館に移管

パウルス・ポッテル『水に映る牛』

 わずか28歳で世を去った天才画家パウルス・ポッテルによる風景画。牧畜業が基幹産業だったオランダで、水浴びをする牛たちの姿と水面に映る反影が精緻に描かれている。フェルメールが長年忘れられていた19世紀、ポッテルこそが最も有名で人気の高い画家であり、フランスのバルビゾン派にも大きな影響を与えた。また、18世紀英国の画家レノルズは、オランダ訪問時にこの絵を観て絶賛したという。自然に対する鋭い観察眼と卓越した技法によって、牛や羊の毛並みが巧みに描き分けられている。

第4位:「子は親の鏡」――ヤン・ステーンが描いた、猥雑で愛おしい家庭

ヤン・ステーン『老いが歌えば若きが笛吹く』

ヤン・ステーン『老いが歌えば若きが笛吹く』(1663〜1665年頃、油彩/カンヴァス/83.8×91.9cm)。右下、すり鉢の上に署名: STEEN。来歴: 1775年 以前–1795年 ハーグ、オラニエ公ウィレム5世;1795–1815年 パリ、フランス軍に接収され、中央美術館/ナポレオン美術館(ルーヴル美術館)に移管;1816年 ハーグ、ウィレム5世ギャラリー内王立絵画館;1822年 マウリッツハイス美術館に移管;2010年より ハーグのウィレム5世ギャラリーにて展示

 フェルメールと並び称される、オランダ風俗画最大の巨匠ヤン・ステーンの代表作。「大人のやることを子供は何でも真似る」という教訓的テーマを、賑やかな室内の情景として描いた。画面中央でパイプをふかす男はステーン自身の自画像。静謐なフェルメールとは対照的な、猥雑で活気あふれるオランダの日常が広がっている。賑やかで無秩序な家庭を描いた風俗画である。

 本作は、数世代にわたる家族をひとつの画面に描く。描かれた11人のうち、自画像とされる黒い帽子の男はパイプをくゆらせ、少年は縦笛を吹く。その後ろにバグパイプ(放蕩や怠惰と結びついていた)の奏者が立ち、部屋の奥ではベッドの前に親密そうな男女がいる。混沌とした光景のなかにも生き生きとした活気があり、人生の楽しみを肯定する意図もうかがえる。

第3位:小さな板に宿る、若きレンブラントの実験精神

レンブラント・ファン・レイン『笑う男』(1629〜1630年頃、油彩/金箔で覆った銅/15.3×12.2cm)。来歴: 1783年10月7-8日 ハーグ、コルネリア・ステイン=シェリンヘル他による競売、作品番号72(2.16ギルダー);1860年以前 ユトレヒトのヘラルト・ムニックス・ファン・クレーフ;1860–1864年 アムステルダムの同氏の相続人;1864年4月4-5日 パリ、同氏の競売、作品番号79(2000フラン);1883年2月19日 パリ、シャルル・ド・ボワシエール競売、作品番号40(370フラン);1893–1894年 パリ、F. クラインベルガー画廊(1750フランでホフステーデ・デ・フロートへ);1894–1895年 ハーグ、コルネリス・ホフステーデ・デ・フロート(890ギルダーでマウリッツハイス美術館へ売却);1895年 購入

レンブラント・ファン・レイン『笑う男』

 わずか15.3×12.2cmという掌サイズの中に、若き日のレンブラントの野心が凝縮された一枚。特定の人物ではなく「トローニー」(頭部習作)として、兜や胸当てをつけた男の”笑顔”をどう表現するか、荒々しい筆触(ブラッシュストローク)で表情をどう捉えるかという実験的な試みが詰められている。金箔を貼った銅板という珍しい支持体も特徴だ。

 鉄製の首当てをつけた男は歯を見せて、破顔している。しわの寄った目尻、持ち上がった眉など、笑いによる顔の動きが大胆に表現され、粗い筆致でスケッチ風に自由に生き生きと彩られる。カンヴァスや板ではなく、銅板の上に描かれているのは、若き日のレンブラントが絵具の扱い方を模索していたことを示す。

第2位:レンブラントの師が刻んだ、復活の奇跡

ピーテル・ラストマン『ラザロの復活』

ピーテル・ラストマン『ラザロの復活』(1622年、油彩/板/64×97.5cm)。左下の墓石に署名と年記: PLastman fecit 1622 (PLの組み合わせ文字) / FECIT A 1622。来歴: 1875年 ユトレヒト、クリスティーン・クラム;1875年 購入

 レンブラントの師匠として知られるラストマンによる歴史画の傑作。新約聖書で、死後4日を経たラザロがキリストによって蘇らされる場面を描く。プロテスタントの国オランダでは教会からの祭壇画注文は少なかったものの、市民の間では聖書テーマの絵画が人気を博した。後年のレンブラントの版画代表作の構図の源流になったともいわれている。

 アムステルダムを拠点に活動したラストマンは、オランダ17世紀初頭を代表する歴史画家である。若き日のレンブラントはラストマンに弟子入りして構図や物語性を学び、影響を受けた。

 カトリック教徒であるラストマンは、聖書の場面を数多く描いた。本作は『ヨハネによる福音書』に記された物語をテーマとする。亡くなった友人ラザロにキリストが声をかけると、奇跡が起こり、ラザロは墓から姿を現した。ここに描かれるのは、周囲の人々がキリストの指示で、生き返ったラザロの身体から布を取り除く場面である。光輪をつけたキリストは、高い位置から堂々とした姿を見せており、奇跡を目にした周囲の人物たちに驚きや感嘆が広がる様子が劇的な構図で表現されている。

第1位:フェルメール初期の意欲作

ヨハネス・フェルメール『ディアナとニンフたち』

ヨハネス・フェルメール『ディアナとニンフたち』(1653〜1654年頃、油彩/カンヴァス)。左下の岩の上、犬とアザミの間に署名: JVMeer (VMの組み合わせ文字)。来歴: 1866年以前 ハーグ、ディルク・ディルクセン画廊(ゴールドスミッドに1752ギルダーで売却);1866-1875年 ハーグ、ネヴィル・デイヴィソン・ゴールドスミッド;パリとハーグ、未亡人エリザ・ギャラリー;1876年5月4-5日 パリ、ゴールドスミッド競売、作品番号86(ニコラス・マース作として、10,000フランでヴィクトル・デ・ストゥエルスに売却、オランダ政府所有);1876年 購入

 本展にはマウリッツハイスが誇るフェルメールの至宝が2点来ており、そのうちの大きな目玉となるのが、21歳頃に描かれた現存37点中唯一の神話画である本作だ。森の中で女性たちが集う静謐な情景を描いており、のちの室内風俗画に通じる繊細な光の表現や色彩の巧みさがすでに芽生えている。19世紀末の修復で画面右上の青空と雲が後世の加筆と判明し、除去されたことで、当初の静かな夕暮れのトーンがよみがえった。『真珠の耳飾りの少女』とはまったく異なる、フェルメール若き日の挑戦を目撃できる貴重な一枚だ。

フェルメールが21歳ごろに描いた『ディアナとニンフたち』は、現存作で唯一の神話画。狩りを終えた女神ディアナとニンフたちの静かな休息を描き、後年の作品につながる色彩や静謐な雰囲気が見られる。かつては別の画家の作品とされていたが、修復でフェルメールの署名が発見され、さらに後世の加筆も除去されて本来の姿に戻されたという

【番外編:ベスト5には入らなかったが見逃せない2点】

エマヌエル・デ・ウィッテ『想像のカトリック聖堂の内部』
(1668年/油彩・カンヴァス/110×85cm)

 実在しない壮麗なゴシック聖堂を想像で描き上げた、オランダ独自の「教会内景画」の傑作。教会内部に差し込む光の描写が圧巻だ。

フランス・ハルス『男の肖像』
(1634年頃/油彩・板/24.7×19.7cm)

 レンブラント、フェルメールと並ぶオランダ3大巨匠のひとり。小気味よい筆致と微笑んだ表情が魅力的な小品だ。

魅力的なグッズたち

 大阪中之島美術館で開催される「フェルメール『真珠の耳飾りの少女』展」を盛り上げる、多彩で魅力的なコラボレーション・オリジナルグッズのラインナップの一部を紹介しよう。

・注目コラボレーション:『葬送のフリーレン』

コラボの背景と内容:原作・山田鐘人、作画・アベツカサによる大人気漫画『葬送のフリーレン』と、名画『真珠の耳飾りの少女』が奇跡のコラボレーションを果たした。本作のために描き下ろされた特別なイラストを使用したコラボアイテムが、大阪中之島美術館のフェルメール・ショップで販売される。

通販・事前申込:サンデープレミアムショップにて、8月21日から複製原画を含むアイテムの予約販売(詳細は展覧会公式サイト等を確認)が予定されており、世界をまたに掛ける名作とファンタジーが出会うまたとない機会となっている。

その他の主なオリジナルグッズ・コラボ

・MIKIMOTO(ミキモト)コラボジュエリー

 本展の特別協賛であるミキモトが、名画に宿る真珠へのこだわりを込めた特別なパールピアスを制作。2012年に来日した際のご縁から生まれた、名画への敬意と美しさを追求し続けるジュエラーならではの珠玉のアイテム(価格は7,700,000円〜12,100,000円、銀座4丁目店や大阪梅田店等で展開・美術館ショップでの販売はない)。

・ライトアップショッピングクラブ オマージュウォッチ

 『デルフトの眺望』と『真珠の耳飾りの少女』に着想を得たセイコー共同開発の腕時計(54,780円)。文字盤や外周・ベルトの配色、裏側の「Meer」の刻印など細部までこだわりが詰まっている。

・ROOTOTE TABLO(ルートート タブロ)コラボトート

 広げればまるでアートのような存在感を放ち、日常を軽やかに彩るおしゃれなトートバッグ(3,520円)。

有名ブランド・老舗との美味なるコラボ

アンリ・シャルパンティエ:フェルメールブルーとゴールドを基調としたオリジナルアソートや「マドレーヌ」などの焼き菓子セット(1,620円など)。

ちひろ菓子店:発酵バターを贅沢に使用した芳醇なフィナンシェ(2個入り1,200円)。

リーガロイヤルホテル:美しい絵画の世界観をサブレやサンドシャで表現した多彩なスイーツ(サブレ4枚入り1,296円など)。

美術館ならではのデザイン雑貨・コスメ

ミッフィー:ディック・ブルーナカラーやミッフィーのピュアブルーをベースにしたポストカード、ぬいぐるみ、マスコットなどのかわいいアイテム(ぬいぐるみ5,500円など)。

サクマドロップス:長年愛される缶に「フェルメール・ブルー」のドロップが入った限定品(540円)。

明色美顔水:140余年愛されるニキビ対策化粧水とのコラボデザイン(1,650円)。

TAGS WKGPTYコラボ:研究分析プロセスから着想を得たTシャツ(18,700円)やリバーシブル半纏ジャケット(88,000円)などストリート感あふれるアパレル・雑貨。

編集後記

 2026年、大阪の街に、海を渡って14年ぶりに一人の少女が帰ってくる。しかし私たちが本当に目撃すべきは、完成された1枚の名画だけではない。1881年の再発見、モノグラムの発見による作者証明、そして2018〜2020年の最新科学調査――少女はその都度、新たな姿を見せながら、私たちの前に立ち続けてきた。「時間のレイヤー」を重ねながら少女を見つめ直すとき、そこには単なる美術鑑賞を超えた、400年にわたる保存と再発見の物語が浮かび上がる。

 映画『真珠の耳飾りの少女』の中でスカーレット・ヨハンソンが息を吹き込んだように、人々の想像力やスクリーン、そして科学のレンズを通して、この少女は時代ごとに生まれ変わり続けている。ゴッセリンク館長が語った「娘を日本に託す」という言葉の背後には、1636年の建物竣工とほぼ同時期に始まった日蘭関係の重みがある。

 会場を出るとき、映画のヒロインのように、あの少女があなたを見つめ返してくれたかどうか、ぜひ確かめてみてほしい。

■開催概要

会場入り口で筆者

美術館の入り口ではヤノベケンジの『シップス・キャット(ミューズ)』が出迎えてくれる

タイトル:フェルメール『真珠の耳飾りの少女』展 17世紀オランダ絵画の名品、奇跡の再来日

会期:2026年8月21日(金)〜9月27日(日)※会期中無休

開場時間:9:30〜17:00(入場は16:30まで)※金曜日、および9月6日、9月8日、9月12日〜9月16日、9月19日〜9月27日は20:00まで(入場は19:30まで)

会場:大阪中之島美術館 5階展示室(〒530-0005 大阪府大阪市北区中之島4-3-1)

主催:大阪中之島美術館、朝日新聞社、朝日放送テレビ

後援:オランダ王国大使館

公式サイトhttps://vermeer2026.exhibit.jp/

※日時指定制。詳細は公式サイトを要確認。

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