ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第889回
なぜ巨大チップは歪んで壊れるのか? SK HynixのHBM4「MR-MUF」とTSMCのCoWoS-Lを襲う熱膨張の罠
2026年08月17日 12時00分更新
熱膨張(CTE)ミスマッチの脅威
シリコン基板より有機基板で歪みが39%増大する理由
次はそのHBMを搭載するパッケージの方である。現状はSilicon Interposer(CoWoS-S)やAdvanced Substrate(CoWoS-R)、Silicon Bridge(CoWoS-L/EMIB)がある。
それぞれの接続方法におけるHBMのBaseダイとDRAMダイのストレスが下の画像である。
少し意外だがAdvanced Substrate、つまり有機材料を利用したインターポーザーが一番ストレスが大きくなっており、Silicon Bridgeは逆にストレスがかなり少ない結果になっている。この大きな理由として論文で指摘されているのはCTE(Coefficient of Thermal Expansion:熱膨張係数)のミスマッチである。
ダイは基本的にシリコンで製造されているから、Silicon InterposerやSilicon Bridgeの場合のCTEはほぼ同等であり、なので発熱によって膨張する場合、Interposer/Bridgeも同じように膨張することになり、接続部に歪みが掛かったりはしない。
ところが有機材料だとCTEが異なるため、動作中あるいは信頼性サイクル試験の最中などに、発熱による膨張に起因する機械的相互作用応力を発生させる可能性がある点だ。Silicon Interposerと比較して35~39%も歪みが大きくなるわけで、このままにするとRubin Ultraの二の舞である。
同じシリコン同士だから歪みが発生しない、ということは当然あり得ない。ダイの中は100%Siliconというわけではなく、銅配線やらAl配線やらに加えてトランジスタ周辺とかM0~M3の配線などは当然全部異なるCTEを持つから、かなり複雑なものになる。これはインターポーザー側も同じで、シリコンベースの絶縁体の中に配線層やら貫通層やらが設けられており、全体としてのCTEはかなり複雑なものになるだろう。
ただ、その歪み方というか反りの出方という意味では、インターポーザーの方式とはあまり関係がないという結果になっており、つまり反りの原因はインターポーザーの材料の違いに起因するものだと判断できるとする。
超低誘電率材料が引き起こす新たな接続リスク
最後がELK(Extreme Low-K:超低誘電率)材料の利用の影響のシミュレーションである。HBM4ではBaseダイにELK BEOL層が採用されている。これは従来の銅ないしアルミ配線とは異なる特性を持つわけで、これによる応力(ELK Stress)をシミュレーションしたものである。
結果から言うと、まずELK StressはSilicon Bridgeで1.3倍、Advanced Substrateで2.5倍にも達し、またCTEのミスマッチの方もSilicon Bridgeで2.3倍、Advanced Substrateでは2.7倍に達した。
これだけ違うと当然接続の不具合が起きやすいのは当然であり、論文ではHBM4そのものの製造は問題なく成功しているが、これをパッケージングするにあたっては、このELK Stress軽減やCTEミスマッチ対策のための最適化、あるいは適切な材料の選定が必要である、としている。
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事
-
第888回
PC
NVIDIA Rubin Ultra開発中止の真相! 180層CoWoS-Lの歪曲トラブルと、急造ラックNVL576に透ける苦肉の策 -
第887回
PC
AIなしではもはや限界 TSMCが明かすメモリー開発にAIが不可欠となった現実 -
第886回
PC
CFETの足を引っ張るPMOSを救え! imecが提案する新絶縁層と、あえて精度を緩める「Notch Alignment」の妙手 -
第885回
PC
TSMCも次世代「CFET」の全貌を披露! Forksheetスキップの背景と、世界最小6T SRAM実証で見えた2030年への布石 -
第884回
PC
Samsungが次世代CFETの試作に成功! IBMの10万ドル方式に対抗する、量産重視な「一括形成プロセス」のリアリティ -
第883回
PC
TSMCのA16プロセスの詳細が判明! 性能向上の主因はトランジスタではなく裏面電源供給(SPR)にあり? -
第882回
PC
IBMが0.7nmチップの製造に成功! 変態的CFET構造NanoStackの凄みと、あまりに高すぎる製造コストの壁 -
第881回
PC
同一周波数で消費電力18%削減! 進化した「Intel 18A-P」はどこが変わったのか? -
第880回
PC
次世代NVLinkの布石か? TSMCの光電融合技術「COUPE」がもたらすAIサーバーの光接続 -
第879回
PC
なぜAIには「光」が必要なのか? NVIDIAが解説するスケールアップネットワークの低遅延・省電力化戦略 - この連載の一覧へ















