工場セキュリティの有識者が集う「GUTP・JNSA OTセキュリティWG」共催セミナーをレポート
「SCS評価制度」取得を目指す中堅・中小製造業のリアル 富士工業が考える「セキュリティは経営に役立つのか」の答え
2026年08月24日 11時00分更新
“システム品質”“オペレーション志向”問題をどう乗り越えるか
ここまで3本柱の戦略が語られたが、浦部氏は「これらだけでは上手くいかない」と予測している。そこにはグループ独自の問題があり、その対応策についても触れた。
1つ目の課題は「システム設計の品質」だ。現場が自ら構築してきたユーザー系システムや設備系システムは、セキュリティ脅威やネットワーク遮断、バックアップなどを考慮していないケースが多い。「これらを野放しにするとリスクが拡大するが、われわれがすべてを管理するのも現実的に困難。多くの製造業が同じように悩まれているのではないか」と浦部氏。
この課題について浦部氏は、「正直なところ、最適解が見えていない」と明かす。当面の暫定解として、「システムの役割分担を定義すること」「上位スキル者の育成+処遇でIT全体の品質を引き上げること」「ガイドライン整備で最低限のレベルを保持すること」を挙げ、これらを組み合わせて実施していく方針だという。
2つ目の課題は「オペレーション志向文化」だ。現場でルールを運用する際に、「なぜ行うか(目的)」よりも「どうやるか(手順)」のほうが重視されるという問題だ。「抽象的なルールは、現場には“お経” のように聞こえてしまう。いくらお経を唱えても、現場は動きません」と浦部氏。
そこで、ルール策定とあわせて、現場向けに「具体的にすべき行動・してはいけない行動」を落とし込んだ“戒律”を用意。一方で、管理者層では手順よりも理由の理解が不可欠であるため、ターゲットとする層を分けた上でルールを定着させることが重要だと説明した。
「経営を強くすること」こそが、最大のセキュリティ対策
最後に語られたのは、セキュリティと経営基盤の関係性だ。2022年頃、浦部氏が経営企画と情報システムを統括することになった際、「パソコン管理の惨状」に衝撃を受けたという。
「当時、パソコンを使う社員が700名程度であるのに対して、社内に存在するとされるパソコンはそれをかなり上回っていました。退職者が返却しない、デスクの引き出しにしまったままにする、申請があれば理由を問わず2台目を貸し出してしまう ―― 。そうした“野放し” の管理状態だったので、改善に着手しました」(浦部氏)
浦部氏は、IT資産・システムの棚卸しをはじめ、責任者・管轄部門の明確化、ルールの整備などを進めていった。「当時、これらの施策はムダを削減する“収益確保”のために行っていましたが、結果としてすべてがセキュリティの土台になっていました」と振り返る。
例えば、パソコン管理における「申請」「承認」「記録」「ルール配布」という一連の仕組みは、そのままセキュリティの手順と合致する。
こうした経験を通じて、浦部氏が経営基盤強化の基本要素と考える「収益確保」「ガバナンス」「コンプライアンス」の3つは、そのすべてがセキュリティ強化に直結すると実感したという。「だからこそ、セキュリティ対応は経営が関与すべきなのです」(浦部氏)
最後に浦部氏は、「経営を強くすれば、セキュリティも自ずと強くなります。セキュリティ対策は単独で存在するためのものではなく、あくまでも経営を強くする“手段”です。もっと言えば、セキュリティは副産物のようなもので、経営を強くすることこそが、最大のセキュリティ対策です」とまとめた。
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