ガバナンスの徹底で安全を担保し、AI活用の促進で目指すのは“トレジャーBox”という成長エンジン
“120TB消失危機”を救ったBox。ゼネラルが挑むグローバルデータ統合の舞台裏
2026年07月29日 09時00分更新
「そのファイルサーバーは、わたしがIT部門に来たときにはすでにありました。あらゆるファイルが保存されていて、『1台で120テラバイト』という規模にふくれ上がっていたのですが、実は保守契約はなく、ベンダーサポートも切れている状態。障害も頻発しており、対策は『待ったなし』でした」
家庭用エアコン「ノクリア(nocria)」で知られる、空調機を中心とした電気機器メーカーのゼネラル(2026年1月に富士通ゼネラルから社名変更)。創業90周年を迎えた同社は、海外売上が80%以上(2025年3月期実績)を占めるグローバルメーカーである。
長年SIの現場で働き、2022年春にゼネラルのIT部門に配属された齋藤大輔氏が驚いたのは、上述したようにファイルサーバーが“危機的状況”にあったことだ。実際に、2024年には復旧まで1週間を要する大規模な障害が発生し、社内のさまざまな業務がストップする事故も発生。「このままでは重要な業務データの消失もありうる」という判断から、120テラバイトの業務データを、早急にクラウドへ移行(クラウドリフト)することが最優先のミッションとなった。
同社はそのデータを短期間でBoxに移行し、フォルダー構成やアクセス権限なども整備して、国内拠点での利用を開始。現在は海外子会社への展開も進めている。「クラウドリフトだけで終わらせるつもりはない」とBox活用の将来像を語る齋藤氏に、Box採用に至った背景から、今後のAI活用ビジョンまでをうかがった。
「ITガバナンスが効いていない」老舗のグローバルメーカーが直面した課題
1936年(昭和11年)に創業したゼネラルは、空調機事業に加え、情報通信や電子デバイスのテックソリューション事業を展開する電気機器メーカーだ。2025年には、空調と給湯のグローバル企業グループであるパロマ・リームホールディングス傘下に入り、新たな体制でビジネスを展開している。
同社はグローバル展開でも長い歴史を持つ。1970年代初頭からエアコンの輸出をスタートし、2000年代以降は海外の合弁子会社設立も進めた。現在は、欧州/アジア/中東/米州など海外各地で製品を展開しており、海外子会社を含めた従業員数は8300名近くに及ぶ(2025年末現在)。
グローバルなサプライチェーンと販売網を持つゼネラルだが、齋藤氏は「ITに積極的な会社ではありませんでした」と語る。齋藤氏は、ゼネラルのIT部門に配属されるまでの22年間、顧客企業にSIサービスを提供する現場にいた。その視点で見ると、当時のゼネラルは数々のIT課題を抱えていたという。
齋藤氏がまず依頼されたのが「セキュリティ環境の整備」だった。当初はセキュリティ対策が進んでおらず、Microsoft 365の多要素認証すら設定されていないような状態だったが、スピード感を持って対策の強化を進めた。2年目にはSASEを導入し、“現地任せ”になっていた海外拠点のセキュリティ管理を本社に移管することで、セキュリティレベルの統一も図った。
「こうしてグローバルのセキュリティ対策を進めるうち、『そもそもITガバナンスが一切効いていない』という根本課題が浮上しました。そこで、次はITガバナンスを任されることになりました」
配属から4年が経った現在、齋藤氏はデジタル戦略推進担当マネージャーとして、グローバル全体のITガバナンス推進、ITアーキテクチャの統合と最適化、全社デジタル戦略の策定、さらにAIの企画開発といった役割を担っている。
Box移行の検討中にファイルサーバーの大規模障害が発生、「待ったなし」の事態に
ゼネラルが抱えていたIT課題の中でも、特に象徴的だったのが、冒頭で触れた“120テラバイトのファイルサーバー”だ。
「『サーバー1台で120テラバイト』というのは、一般的なIT担当者の感覚で見ればおかしいですよね。社内の各部門が個別に導入していたNASを集約し、さらにディスクの追加で容量拡張を続けた結果、そうなってしまったようです。加えて、導入を手がけたベンダーに確認したところ、サポート保守契約はなし、メーカー保守も標準の1年間だけで終わっていました」
管理がずさんなファイルサーバーだったが、現場では社内のあらゆる部門が利用していた。営業やサービス、プロジェクト関連の資料も、研究開発、設計、品質管理などの技術資料も、すべてがこのサーバーに保存されていたのだ。そのため、このサーバーへのアクセスに障害が発生すれば、幅広い業務に影響が及んでしまう。実際、このサーバーでは障害が頻発しており、そのたびに社内からクレームが寄せられていた。
一方で、そのころゼネラル全社のITガバナンスの推進と、ITアーキテクチャの統合に取り組んでいた齋藤氏は、「全社の統合データ基盤」がないことに課題を感じていた。
「海外拠点はM&Aで統合した子会社も多いため、全社で見るとIT環境が分断、サイロ化されていました。Microsoft 365のテナントも拠点ごとに独立しており、全社で安全にデータを集約/共有できる場所がありませんでした」
そのため、海外拠点や社外取引先とのデータのやり取りが、メールへの添付や“野良ストレージ”(無許可利用のクラウドストレージ)で行われることも多かったという。ガバナンスが効いておらず、機密情報の取り扱いルールはあっても最終的には個々人任せ、情報の不正持ち出し(内部不正)対策もまったくできていなかった。
そこで齋藤氏は、2024年の春ごろに、ファイルサーバーからBoxへのクラウドリフトを社内提案した。以前のSI業務でよく触れていたBoxならば、グローバル対応でもセキュリティやガバナンスでも高い実績がある。「Box以外の選択肢は考えられませんでした」と語る。
だが、Boxへの移行検討を進めていた2024年の夏、前述したファイルサーバーの大規模障害が発生する。復旧まで1週間を要し、財務や経理といった基幹業務もストップしてしまうなど、そのダメージは大きなものだった。
ファイルサーバーがダウンした直接の原因は、OSの管理ファイルの破損だった。ただし、電算室に設置された本体を確認したところ、ディスクの障害を示すオレンジのランプもあちこちで点灯していた。たとえOSを復旧させても、このままではディスク故障が拡大し、120テラバイトが丸ごと消失してしまうおそれすらある。
「ファイルサーバーがいつ完全に壊れるか分かりませんから、とにかくデータが消える前に引き上げよう、対策は『待ったなし』だと、Boxへのクラウドリフトが最優先のミッションになりました。結果的にはこれが後押しとなって、Boxへの移行が前倒しで進みました」
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